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四国八十八ヶ所の納経軸、ドイツ人からの表装依頼
この度、弊社にとって非常に特別な依頼がありました。
ドイツからのお客様が四国八十八ヶ所の納経軸の表装を求めて来店されたのです。
このお客様はドイツで放映された日本のドキュメンタリー番組を通じて、お遍路について知り興味を持たれたそうです。
番組では約5分間お遍路に関する内容が紹介されており、それがきっかけで来日することになったそうです。
お遍路に対するお客様の情熱は、事前に3冊の関連書籍を読み、空海について研究するほど熱心でした。また、日本の文化に対する理解も深く、菅笠を持ち真剣に取り組まれていた姿勢が印象的でした。
お客様は四国八十八ヶ所を歩き遍路として巡り、その旅を終えた後、納経軸の表装依頼をする為に来店されました。
このような国際的な交流は日本の伝統文化に対する世界的な関心の高まりを示しており、非常に意義深いものです。
表装に関してお客様は定番のスタイルにとらわれず、完全にオリジナルのものを望まれました。
特にインテリアに調和するように、外廻しの裂地は明るく薄い色味を選び、中廻しには植物を愛するお客様の嗜好を反映させた、紋がはっきりした緑色の裂地の組み合わせを選択されました。最終的に鳳凰が向かい合っている紋の緑の裂地を中廻しに使う事で決定しました。
この裂地はその豊かな色合いと織り成す紋様がお客様の目を引き、初めて見た瞬間から気に入られていたものです。
事前の情報でお客様がボディビルをされていると知っていたので強面の方を想像していましたが、実際にお会いした際にはその温かな人柄と優しい物腰に心から驚かされました。柔らかな笑顔とキュートな振る舞いが印象的でした。
こちらが完成した掛軸です。日本人の感覚とは異なったリクエストの表装でしたので工程の最初から最後まで新鮮な気持ちでしたが、仕上がってみると何となくこの表装の良さも理解できるような気がするのがおもしろい所ですね。
今回の表装依頼は単なるビジネスを超え、文化的な交流の一環として大変貴重な体験となりました。
コロナウイルスの収束に伴い、インバウンドが再び盛んになりつつある今、このような霊場巡りを終えた後に掛軸表装のご依頼をされる外国人のお客様が増えることを弊社としても大変楽しみにしております。
日本の伝統文化や美術への関心が、世界中の人々によって共有され、さらに深まる機会を提供できることは弊社にとっても大きな喜びです。
今後も多様な国籍のお客様に日本の美をお届けし文化の架け橋としての役割を果たしていきたいと思っております。