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寺院より古く傷んだ 屏風修理 の依頼 | 加古川市
六曲一双の古い屏風の修理依頼
屏風は表具形式のひとつで、下張りをした組子に本紙を貼り、偶数枚繋げて折りたためるようにしたものです。本来は室内の間仕切り装飾、風除けに使用される調度品でしたが、次第に美術品として鑑賞の目的を持つようになりました。古くは各扇を紐や裂でつくった蝶番で繋いでいましたが、室町時代以降は紙製の蝶番が一般的に用いられるようになりました。
現在では結婚式などの金屏風などの形で目にする事が多いですね。
最近では和室の減少や一般家屋の敷地の縮小などからあまり都会では見かける事が少なくなりましたが、田舎や神社仏閣などではまだ使用されていたりします。
今回はそんな屏風の修復作業のご依頼です。兵庫県加古川市にある寺院様から古い屏風の修復・仕立替のご相談をお受けしましたので早速お伺いさせていただきました。
お話をお伺いすると古くからこの寺院で飾られていたようで、奥様が嫁いで来られた頃から存在していたそうなのですがその頃から随分と傷んでいたそうです。破れていたり、傷がついていたり、汚れ、シミ、絵の具の剥落、落書きまであったりと修理をするならかなりの大掛かりな作業になる為、躊躇されていましたがこの度思い切って修理の依頼を決断されたそうです。(弊社をご指名くださりありがとうございます。)
ご依頼いただいた屏風は六曲一双の花鳥図の屏風です。
屏風は扇の枚数を数える単位を曲(きょく)と呼び、二枚扇が繋がれた物を二曲、四枚繋がれた物を四曲というように表現します。屏風を数える単位は隻(せき)と呼びます。二つセットになった物を一双と表現し、左側の屏風を左隻、右側の屏風を右隻と呼びます。
屏風は使わない時は畳んでしまっておけるので収納スペースをとらないで済むのがメリット。
今回の修復作業は六曲一双・・・つまり、6枚 × 2セット=合計12枚にも及ぶ大掛かりな作業になる為、納期もかなり頂戴いたしました。
どの作品も程度の差はあれ、かなりの損傷具合です。シミや汚れが発生していたり、裂けてしまっている物もあるのでこれは本当に大掛かりな修復作業になります。
屏風修理 表装オペレーション
今回の大まかな屏風修理のオペレーションの流れは以下です。
作品解体 (屏風から作品取り外し)
↓
作品表面保護 (色止めや剥落防止処理)
↓
旧裏打紙を除去 (業界用語で「めくる」という作業)
↓
作品洗浄 (汚れ落とし)
↓
補彩 (欠損部分の加筆)
↓
新しい屏風に貼り込み
屏風修理完成
長きに渡って修理を行ってまいりました屏風がついに完成いたしました。(恐らく弊社が請けた仕事の中で最長の修理期間だったと思います。)
様々な角度から修理前後を見比べてみましょう。
洗浄により汚れを落とし、補彩ににより退色してしまった絵具の色をよみがえらせ、破れなどで欠損してしまった部分を加筆により復元いたしました。(もちろん加筆は必要最小限の範囲で元々のオリジナルの作品の雰囲気を損なわないのが大前提です。)
今回の修復は旧裏打紙を剥がすのも大変でしたが、それよりも補彩をこのレベルで12枚行う事の方がはるかに大変でした。弊社の修復チームもかつてない長期間の修復作業は良い経験になりました。
納品
長い間お客様にはお待ちいただいておりましたが、やっと納品に伺えます。今回の屏風はかなり大きな物であったので念の為、二人体制で納品に伺いました。キャラバンにいっぱいいっぱいです。
お寺に到着し、二人でバランスを保ちながら慎重にお堂に運び入れ、念願のご開帳!!
六曲一双を並べて飾ったのは弊社のスペースの都合上、今回が初めてだったのですが圧巻の迫力でした。(さすがにお寺のお堂は広いですね。)
お客様も屏風の修復に大変喜んでいただき、
「気になっていた案件が無事に完了して何よりです。昔からあって随分と傷んでいたので気になっていたので本当に良かったです。」
とコメントいただけ、弊社も長い期間をかけて修理した甲斐がありました。
これから寺院で行われる行事にも飾って来訪者に見てもらうなど今後の使い方も楽しそうに検討されておられ何よりです。
この度は弊社にご依頼ありがとうございました。
納品を終えて、お昼には加古川名物の「かつめし」の人気店に。お昼時間を外したので空いていたのでなにより。とっても美味しく頂戴いたしました。
古い屏風修理のご相談は是非弊社までご相談下さい。
MOVIE
掛軸の歴史について知りたい方はこちらの動画をどうぞ