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富岡鉄斎の 額のシミ 抜き | 兵庫県三田市
飾りっぱなしの 古い欄間額 は危ない!
日本の和室には欄間という部分があり、そこに飾られる横長の額を俗に『欄間額』と言います。
昔はよく書画の描かれた欄間額が飾られていたのですが最近は和室の減少で新たに求められる方も少なくなりましたが昔から飾られている欄間額を修理してほしいというご相談が最近は増えています。
昔の欄間額は今の額装と違い、額の表面にアクリルガラスなどの表面保護材が取り付けられていないので作品が外気に剥き出しの状態になっています。この外気とダイレクトに作品が接している状態というのは外気の様々な影響をモロに受けてしまう為、作品にシミ、焼け、劣化が発生する原因となってしまいます。また不注意により何らかの原因で額装作品を汚してしまったり傷つけてしまう可能性が高いという欠点があります。
作品に発生したシミや汚れは一概に何が原因かというのを特定する事ができない為、シミ抜の作業というのは表具師にとって非常に難易度が高い作業になります。作品の劣化状態等が関係してくるためシミを完全にきれいにできるかどうかというのは作品の状態を見てみないと判断できないものです。場合によっては作品の損傷が激しい場合はシミ抜を行わないという判断もしなければなりません。非常にデリケートな判断を表具師は経験の中から行います。
弊社も多くのシミ抜のご相談をお受けいたしますが、ベストは尽くしますが上記のような事情があるというのもお客様にご説明し、ご理解していただいた上で作業を進めるようにしています。もちろん作品を綺麗にしたいという気持ちは表具師もお客様も一緒だと思いますが作品の保全というものが一番優先されるべき事項だと考えているからです。
富岡鉄斎の 額のシミ の修理
今回ご相談いただきましたのは兵庫県の三田市にお住まいのお客様から富岡鉄斎の 額のシミ のご相談です。富岡鉄斎は明治から大正にかけて活躍した「日本最後の文人画家」と呼ばれている世界でも人気の高い作家です。絵画作品を非常に多く残している事で有名ですが書に関しても非常に優れており、その作品も多く残しています。
今回の作品は「凌雲」と書かれており「雲をしのぐほどに高い」という縁起の良い言葉です。せっかくの作品ですが全体にシミ汚れが発生してしまっています。
こちらのシミ抜なのですが通常のシミ抜作業ではなかなか落ちず本当に苦労しました。シミ抜には薬品を使用するのですが、通常の濃度ではシミが抜けきらなかったので、薬品の濃度を高めるかどうかという判断を迫られました。薬品の濃度を上げればシミが抜ける可能性は高まりますが作品の他の部分に影響が出る可能性が高まります。(他の部分が消えてしまったり、色が流れてしまったり、作品が脆くボロボロになってしまったりなど様々な悪影響が出る可能性が高まります。)
他の部分への悪影響を避ける為に、一気に濃度を上げるのではなく手間はかかりますが少しずつ少しずつ濃度を上げていき、最低限度の濃度でシミ抜をするようにしなければなりません。
何段階にも分けて濃度を調整し、シミ抜きをした結果綺麗にシミが抜けました。シミ抜きをして仕立替をした作品がこちらです。
修理のビフォーアフターで見比べてみましょう。
シミ抜の前後の違いが良く分かると思います。結果だけ見れば簡単そうに見えますがシミ抜の表具師の判断というのは非常にデリケートで難しいものです。弊社では長年の経験により作品の保全を第一にしながらできる限り綺麗に仕立てるように心がけております。額のシミ抜でお困りのお客様は弊社に是非一度ご相談ください。
掛軸のシミ抜き作業についてより詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
額装の仕立てに関してより詳しく以下の動画で解説しておりますので宜しかったらご覧ください。
和額の種類についてはこちらの動画で解説しておりますのでよろしかったらご覧ください。