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「自分で修理」はリスクをしっかりとわかった上で自己責任で行ってください
掛軸作品やまくりの状態で傷みや汚れが発生してしまう場合がありますが、これをご自身で修理しようとされる方がたまにいらっしゃいますがなるべく止められた方が良いと我々は思います(きっぱり)。
表具とは基本的に紙や絹、裂地、糊、水などを使って作品を作り上げていく作業なのですがそれぞれの微妙なバランスやタイミングなどを図りながら行う非常に繊細な物です。簡単そうに見えてその奥は非常に深いものです。プロである我々でも日々勉強です。技術の向上を目指し毎日研究を重ねています。それでもわからない事や予期しない症状が発生するものです。経験でそれらに対処しながらなんとか修理作業を行う非常に難易度の高い作業を素人が詳しい知識無しで行おうとするのは傷口を広げる可能性の高い非常に危険な行為だというのを認識した上で自己責任で行ってください。
記事の初っ端から厳しい事を書きましたが生兵法は大怪我のもとで下手したら修理不能になったり超高額な修理費用が必要になったりする場合もありますので本当に注意してほしいからです。
今回ご紹介するのはまだ作品にしていないまくりの状態の掛軸表装依頼なんですが、恐らくまくりが破れてしまったのを補強する目的で裏から水糊か何かで和紙を貼り付けて補強してしまったようです。
この部分ですが水糊の痕が作品まで出てきてしまっていますね。シミになってしまっています。
裏側には和紙を貼って補強しているのですが、まずこの和紙を剥さなければ掛軸に出来ないのですが表具用の糊で接着している訳ではないので綺麗にこの和紙が剥せるかが問題となってきます。そして元々破れている所を繋ごうと接着した訳ですのでこの和紙を剥そうとすると粘着力が強いと傷口を広げる可能性が非常に高いという状態です。
はっきり言いますが何もしない状態で修理のご相談に持ってきていただいていた方が「より綺麗に」「より安く」「より安全に」「より省エネ」で表具が出来ました。この状態を破れの箇所を自然に見せる補彩作業まで行おうとすると相当な金額となる為、今回は補彩は無しで出来る限り綺麗にする方向で修理、表装する事に致しました。
何とか裏張りの和紙を剥し、掛軸に仕立てた写真がこちらです。
糊のシミと破れの痕は若干残っていますが、全体として飾れる状態にまで持っていきました。
表装作業や修理に関して「何となく簡単に出来そう。高い金額を払いたくないから自分で出来る所までやってみよう。」と手を出されるのは表具屋からすると止めておかれた方が賢明です。それでもされる場合はくれぐれもその後の結果に関しては自己責任でお願いいたします。