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掛軸のシミ抜き : 紙本
掛軸の修理のご相談で非常に多いのがシミ抜き。日本は湿度が非常に高い国なので保管方法を誤ると掛軸にはシミが発生してしまう事が多々あります。
この 掛軸のシミ抜き ですが綺麗に抜ければ問題ないのですが表具師にとっては難易度の高い修理作業のひとつです。表具師の修復作業で難易度高いランキング一、二位を争うのが僕の中では旧肌裏打紙除去かこのシミ抜きです。それほど 掛軸のシミ抜き は難しいし奥が深い。
なぜそれほど難しいかというとまず原因が必ずしも一つではないという事。シミと言っても症状は様々です。見た目も全然違っています。以下様々なシミの症状の写真です。
原因が様々なので当然対処法も色々と異なってきます。これらを推測しながら正解を見つけていかなければならないのが難しいのです。
そして次に問題になってくるのが作品の状態です。ダメージがあって弱ってしまっている作品をシミ抜きしようとすると作品が耐えきれなくボロボロになってしまう問題が発生してしまうので加減が必要になってきます。この力加減が難しい。そして上記で述べたように対処法の正解を推測しながら見つけていかなければならないのですが、何回も外すと作品が耐えきれなくなるというタイムリミット付というのもこれまた難易度の高い部分です。(判断難しいんです。)
そして作品の素材によってもシミの抜け方や対処法が変わってくるのも特徴です。大概掛軸の本紙に使われるのは紙本か絹本なのですがこのどちらかによってシミの抜け方や気をつけるべき点が異なってくるのでこれも注意が必要です。
以上のような様々な事を考慮して 掛軸のシミ抜き 作業を行っていくので非常に神経を使います。今回はそんな 掛軸のシミ抜き のご相談。ご依頼いただいた作品はこちらです。
紙本に発生している細かい茶色のシミです。まだ掛軸に仕立ててそれほど年月が経っていないのですが保管方法が悪かったらしくシミが発生してしまっています。 掛軸のシミ抜き は必ず旧裏打紙を除去してからでないと行えませんのでご注意ください。よく勘違いされている方が多く、シミ抜きだけを希望される方がいらっしゃいますが不可能です。
紙本のこういったシミは比較的抜けやすいのですが紙本は絹本と比べて素材自体の耐久度が劣るのでやり過ぎは禁物です。飽くまで弊社では鑑賞の妨げにならないレベルにまで近づける事を目標としておりますので100%真っ白に綺麗にする事を追い求めるような事は致しません。
掛軸のシミ抜き 完了
掛軸のシミ抜き が完了し、再表装が終了いたしました。以前の表装裂地と同じような風合いの裂地が弊社にありましたのでそちらで表装を行いました。シミもほとんどわからないレベルにまで今回は抜く事が出来て何よりです。
掛軸のシミ抜き でお困りの方がいらっしゃいましたら弊社にご相談ください。
掛軸のシミ抜きに関してより詳しく以下の動画で解説しておりますので宜しかったらご覧ください。
その他のシミ抜きについてまとめた記事はこちらをどうぞ。