掛軸のシミ抜き は表具師に任せた方が良い4つの理由

 

今回は「掛軸のシミ抜きは表具師に任せた方が良い4つの理由」についてお話しさせていただきます。

掛軸の修理のご相談で多いのが掛軸にシミや汚れが発生してしまったという内容。

そんな中たまに聞かれるのが「 掛軸のシミ抜き を自分で何とか出来る方法ないですか」というご相談です。

もちろん気持ちはわかります。

「表具の修理は値段がそれなりにかかるので自分で何とか出来るならしたい。」っていうのは。

しかし表具師の立場から言わせていただくと自分で何かするのは止めておいた方が良いです。(キッパリ)

何故かというと非常に難易度が高いらです。

プロの表具師でもシミ抜きというのはデリケートで神経の大変使う作業なので素人の慣れていない方が行うのは絶対にやめておいた方が良いです。

何故今回この話をさせていただこうかと思ったかというと、たまに自分で色々やってしまった後に相談に来られる方がいるのですがはっきり言って何もしてない状態で持ってきていただいた方が何倍もやり易いからです。

余計な手間がかかる分だけ費用も高くなる場合もありますし、それでも綺麗に戻らない可能性もあるからです。(これ、本当に。)

こういった過ちを犯さない為にも、今回は何故掛軸のシミ抜きは表具師に任せた方が良いかという理由について詳しくご紹介させていただきます。

 

①掛軸を全て分解しないと出来ない

掛軸の修復

掛軸のシミ抜きを自分で何とかしようとしている人は「掛軸の状態のままシミ抜きが出来る」と思ってらっしゃる方が多いですがこれは不可能です。

何故かというとシミ抜きには当然シミを抜く為の薬剤を使用します。衣服とかでもそうですよね。漂白剤って使いますよね?あれと同じです。

掛軸の状態のままシミ抜き剤をシミの箇所に使用するとそこだけ白くなるか色ムラになって余計に状態が酷くなります。

また掛軸は作品に和紙を裏から3~4枚糊で接着させています。これを裏打というのですが、水分を与えるとその部分の糊の粘着力が弱まり裏打の紙が剥離して浮いてくる不具合が発生します。

掛軸 剥落 浮き 修理

 

なので必ず掛軸のシミ抜きをするには裂地の部分や旧裏打紙をすべて除去して作品だけの状態に戻してから行う必要があります。ただこの旧裏打紙を除去するのは素人には難易度が高い。慣れていないと作品を破いてしまったり傷つけてしまう恐れがあります。中には接着力の強い糊で裏打されている作品もあるのでそういった場合の裏打紙の除去は非常にハードルが高いです。指先の微妙な感覚を頼りに少しずつ慎重にめくっていかなければいけないので作業になります。

最近行ったイギリスの方からの梅の掛軸の修理ではこの旧裏打紙の除去に非常に苦労いたしましたので参考にこちらの動画をご覧ください。

 

また旧裏打紙を除去するのには水で糊をふやかして剥がしていきますが、絵具や墨によっては水を与えると滲んでしまったりする場合があるので色止め作業を行わなければなりません。この色止めも本当にきちんと絵具や墨が定着しているかどうかの見極めが結構難しいので経験が必要となってきます。

 

②薬剤の使用方法が複雑

屏風修理

作品の洗浄。

シミ抜きはその症状によって薬剤の種類や使い方を様々使い分ける必要があります。

薬の濃度や使用時間などを変えながら徐々にシミが抜けていくのでその状況判断を行わなければならないのです。薬品を使えばすぐに抜けるわけではないので時間が結構かかる場合が多く、長かったら1時間以上観察しながらやるなんて事もざらにありますし、なかなか抜けなければ日を改めて別の方法を試す場合もあります。

表具師は過去膨大な数のシミ抜きを行ってきています。その経験から導き出せるベストな方法というを作品の状態を見ながら瞬時に判断し、作品を保護しながら出来る限りのシミ抜きを行っています。シミ抜きはやりすぎると逆に作品を傷めてしまう事もあるのでこの経験というものが絶対的に不可欠なものとなってきます。

プロの表具師は怖さを知っているのでシミ抜きは本当に慎重に行いますし、場合によってはシミ抜きを途中で中止する判断をする場合もあります。下手したら絵が全部消えて真っ白になってしまうなんて事も起こり得る非常にデリケートな作業ですので素人の方がされるのはやめておいた方が良いです。

 

③もう一度掛軸にしなければならない

①と②の理由でも十分シミ抜きは素人には難しい作業になるのですが、100歩譲って仮にそれがクリア出来てシミが綺麗に抜けたとします。

でもそこからもう一度掛軸に戻さなければならないですよね。普通に表具の技術がないと掛軸の状態に作品を戻せないので素人の方には難しいかと思います。

家電のネジを外して蓋を外した後に元に戻すのとはレベルが違う専門技術と知識が必要になってくる作業ですのでここも相当ハードルが高いです。

 

④必要な道具の調達が困難

表装道具

①~③の作業に必要な薬剤や道具の調達も通常では販売していない専門の物が多く、代用品で行おうとすると不具合が発生する原因になるのでやめておいた方が良いです。

 

まとめ

いかかでしたでしょうか?

以上が「掛軸のシミ抜きは表具師に任せた方が良い4つの理由」になります。もう一度繰り返しますと

  • ①掛軸をばらすのが難しい。
  • ②薬剤の使用方法が複雑。
  • ③もう一度掛軸にしなければならない。
  • ④必要な道具の調達が困難

 

になります。

シミ抜きは確かにある程度の費用がかかりますが、それだけ専門的な技術や経験、知識などが求められる難易度の高い仕事になるので作品の事を考えるのであれば専門の表具師に相談する事をお勧めいたします。

もし相談できる表具師さんが近所にいらっしゃらなかったら弊社にご相談いただいても結構ですので是非宜しくお願いいたします。

掛軸のシミ抜きに関してより詳しく以下の動画で解説しておりますので宜しかったらご覧ください。

 

 

 

 

CEO Message

あなたと掛軸との懸け橋になりたい


掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



代表取締役社長
野村 辰二

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商号
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TEL
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FAX
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創業
1973年
設立
1992年
資本金
1,000万円

事業内容

  • 掛軸製造全国卸販売
  • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
  • 掛軸表装・額装の全国対応
  • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
  • 宣伝広告業務
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