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ひどい折れジワが発生してしまった掛軸の修理依頼 | オーストラリア
掛軸は飾る時に広げ、保管する際に巻いて収納します。
これを繰り返し行う為、長年使用していると折れやシワが発生してしまう宿命を持っています。
その為、50-100年周期で掛軸は表装仕立替を行う必要があり、これをする事で折れやシワが回復し再び飾れる状態に戻す事が可能となります。
そう、初めから仕立替を前提とした設計なんです。
今回はそんな掛軸の仕立替のご依頼をオーストラリアにお住いのお客様より承りました。
ご相談いただいた掛軸がこちらです。
おそらく雉が描かれているのだと思うのですが随分と激しい折れが発生してしまっています。
斜めから見ると折れの深さがよくわかりますね。このまま仕立替をせずにいるとこの折れの部分から作品が裂けていき、最終的には破れてしまいます。
この折れが激しい部分は仕立替をする際に、肌裏打をした後に「折れ伏せ」と呼ばれる細い和紙を裏から当てて補強する必要があります。
この作品で使われている赤い絵の具は膠が弱っていたので、水分を与えると滲んでしまう可能性が非常に高い状態でした。
表装をする際には水を使いますので「色止め」と呼ばれる作業を行う必要があります。
詳細打ち合わせ
お客様と仕立替の詳細について打ち合わせをさせていただき、以下の通りで実行する事になりました。
洗浄: 作品の損傷が激しいので出来る限りの範囲で行う。
折れ伏せ: 行う。
表装形式: 行の行スタイル
仕上げ寸法: お任せ。
裂地: 以下の写真の通り。
修理工程
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
色止め (薬剤で絵具を定着。)
↓
作品解体 (古い裂地や軸棒などの取り外し。)
↓
旧裏打紙を除去 (作品の裏側から旧裏打紙をめくって除去。)
↓
洗浄 (薬剤を用い、出来る限り綺麗にします。)
↓
肌裏打 (作品裏に行う裏打)
↓
折れ伏せ (肌裏打紙の裏から細い和紙を当てて行う補強)
↓
再表具 (お客様のご要望の裂地で掛軸に仕立てていきます。)
修理完了
長い修理の行程を終え、ついに掛軸の仕立替が完了いたしました。
激しい折れが発生しておりましたが見事に修復されているのがわかります。
鑑賞の妨げになっていた多くの折れも解消され、雉がくっきりと浮き上がるようになり心行くまで鑑賞を楽しむ事が出来ます。
お客様の声
早速オーストラリアにお送りさせていただき、掛軸をご覧になられたお客様からこんな感謝の声を頂戴することが出来ました。
Dear Mr. Nomura,
I couldn’t be happier with the results of the conservation treatment and remounting, it has improved immensely the enjoyment of owning such a marvelous work of Japanese art. Again many thanks for the your guidance and thank you to all the Art Nomura team.
要約すると以下の通りです。
野村さんへ
修復作業と再表具の結果にこの上なく満足しております。修復によりこのような素晴らしい日本の美術品を持つ喜びをとても味わう事が出来るようになりました。野村さんのガイダンスとチーム野村の皆さんに改めまして感謝申し上げます。
結果に大変ご満足いただけ喜んでいただけたようで何よりです。
こちらがお客様が飾られている様子の写真です。
いつの時も自分達が手掛けた作品がお客様のご自宅で実際に飾られているのを拝見するととても嬉しく思います。
この度は弊社にご依頼ありがとうございました。
弊社は今回のように傷んだ掛軸の修理修復も承っておりますのでお困りの方は遠慮なしにお気軽にご相談ください。