ニュース/ブログ
アメリカから傷んだ掛軸の修理依頼
弊社は世界中から掛軸に関する様々なお問い合わせを頂戴します。
掛軸の購入から製作依頼、修理依頼、掛軸の材料購入に至るまでその内容は多岐に渡ります。
今回ご紹介するエピソードはアメリカにお住いの男性のお客様より、傷んだ掛軸の修理のご相談を頂戴したエピソードです。
お気に入りの掛軸の修復依頼
今回ご相談いただいたお客様は2006年から2007年にかけて1年間日本に住んでおられたようで、その時に出会って購入したお気に入りの掛軸の傷みが気になっていたようです。
こちらが今回ご相談いただいた掛軸です。
そこまでひどく傷んでいるわけではないですが、折れが発生し始めているのと全体的に少し汚れが発生していますね。
よくボロボロになってから修理をしようと考えられる方がいらっしゃいますが傷みがひどくなると修理が手遅れになってしまう場合がありますので、今回のお客様のようになるべく早めに修理を検討された方が良いですね。
仕立打ち合わせ
お客様は弊社のHPをかなりしっかりと読み込んでからお問い合わせくださったようで、ご自身が仕立てて欲しい表装パターンをあらかじめ指定されてきました。
こちらがお客様がご指定された「真の草」という表装形式です。
日本では仏教に関する作品を仕立てる際によく用いられる表装形式ですが、別に仏教関連以外の作品でも格式が高い作品を表装する際に用いられる場合もあります。今回のように作品の持ち主がこの作品を大切にしたいという想いから選ばれる場合もあります。
お客様にお選びいただいた仕立のイメージはこちらです。
落ち着いた上品な印象を受ける裂地の組み合わせですね。
総丈を少しだけ現状よりか短く仕立てて欲しいというご要望を頂戴いたしましたので、その意向を汲みながらいよいよ修理開始です。
修理工程
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
色止め (薬剤で絵具を定着。)
↓
作品解体 (古い裂地や軸棒などの取り外し。)
↓
旧裏打紙を除去 (作品の裏側から旧裏打紙をめくって除去。)
↓
洗浄 (薬剤を用い、出来る限り綺麗にします。)
↓
肌裏打 (作品裏に行う裏打)
↓
折れ伏せ (肌裏打紙の裏から細い和紙を当てて行う補強)
↓
再表具 (お客様のご要望の裂地で掛軸に仕立てていきます。)
修理完了
長かった掛軸の修復がついに完了いたしました。こちらが仕立替を行った掛軸です。
気になっていたシワもなくなり、汚れも落ちて見違えるようになりました。
作品が水墨画でおとなしい雰囲気の作品ですのでこちらの表装の裂地が絶妙なバランスで作品の魅力を引き立てていますね。
お客様からの声
早速アメリカのお客様の元にお送りさせていただきました。
お客様からはこんな嬉しいメッセージを頂戴いたしました。
Nomura-San,
My scroll arrived in the mail yesterday. Everything was in perfect condition.
Arigato Gozaimasu, Nomura-San. The remounting and cleaning you did was beautiful. I unrolled the scroll and was shocked by the improvements.
I have seen many kakejiku in my time and travels throughout Japan, and thanks to the work of you and your talented employees, I think my scroll is one of the most beautiful I’ve ever seen and captures a wonderful emotion and experience of Japanese culture.
The paintings colors are so much brighter and the materials used coordinate masterfully.
The painting is currently at the house of my parents. It matches the aesthetics of their dining room and house much better than my own.野村さん、昨日、私の掛軸が届きました。すべて完璧な状態でした。
ありがとうございます。あなたがしてくれた再表装とクリーニングは美しかったです。掛軸を広げてみてその変化に衝撃を受けました。
今まで日本中を旅してたくさんの掛軸を見てきましたが、野村さんと才能ある従業員の方々の仕事のおかげで、私の掛軸は今まで見た中で最も美しく、日本文化の素晴らしい感動と経験を捉えたものだと思います。
絵の色はとても明るく、使われている素材も見事に調和しています。
この絵は現在、私の両親の家に飾ってあります。彼らのダイニングルームや家の雰囲気に、私の家よりもずっとマッチしているように思います。
大変気にいってくださっているようで嬉しく思います。
遠いアメリカの地で弊社のお仕事がお役に立てている事を本当に誇りに思います。
弊社では今回のように掛軸の修理に関するご相談を全世界対応で承っております。何かお困り事がございましたら遠慮なしにお問い合わせください。