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アメリカからの相談: ボロボロに破れた達磨の絵を修復し、掛軸に!!

弊社は長年にわたり日本の伝統的な掛軸の制作と修復に携わってまいりました。
その中で海外のお客様との交流は常に新鮮で、心温まる経験となっています。
今回は、アメリカ合衆国にお住まいのお客様との最近のエピソードをご紹介したいと思います。
仕事のご相談
今回、お仕事のご相談を頂戴したのはアメリカ・サンタフェ在住の男性のお客様。地元のセールで以下の作品を発見され一目惚れされたそうです。

作品の右側が随分と損傷しており、今にも裂けてしまいそうな非常に危険な状態です。
お客様は修復可能な事を信じて、弊社にご相談くださいました。
弊社は「破れた部分を完全に継ぎ合わせることは難しいですが、目立たないように修復し、掛軸に仕立てることは可能だと思います。」と見解を述べると共に、大まかな表装価格をご提示させていただきました。
お客様は修復の限界にも理解を示してくださり、また予算に対してもご納得下さり、さっそく作品を弊社にお送りくださいました。
打ち合わせ
作品が無事に弊社に到着し、実際の状態を確認させていただきました。
作品の右側の損傷は想定通り酷かったのですが、上手く破れた箇所を繋いで裏打を行えば目立たなくする事が可能だと判断いたしました。
少なくとも掛軸に仕立てて飾って楽しむ事が出来る状態にまでは仕立てられると判断し、お客様にお伝えさせていただきました。
その後、表装の仕立ての打ち合わせに移っていきました。
達磨の荘厳さを引き立てる為に複数の裂地をご予算に応じてご提案させていただきました。

実際の作品を裂地の横に置いてみないと仕上がった際の雰囲気などもお客様は想像しにくいと思い、弊社ではなるべく色々な角度から作品と裂地が一緒になった写真を撮影しお客様にお送りするようにしております。
こちら側の提案からお客様は気に入った仕様を決定する事が出来ました。
打ち合わせの中でお客様は
「私は長い間、日本を訪れていませんが、私はあなたの国が大好きです。約20年前に長野の戸隠神社で撮った写真を添付します。これは私のいとこが日本人の女性と結婚した日のもので、神社で結婚式を挙げました。私の人生で最も思い出深い日々の一つでした。」
と日本での思い出や日本に対する想いをお話しくださり、日本を好きでいて下さるお客様の為にも全力で修復、表装を取り組もうとスタッフ一同、士気を高めて作業に臨みました。
表装作業
表装作業でなにより苦労したのはやはりこの複数個所に渡る破れのつなぎ合わせでした。
作品に水分を与え、作品が描かれている和紙を伸ばしながら裂け目を目立たないように接合する作業は息を呑む緊張感の中で行われました。
和紙に水分を含ませると柔らかくなり、コントロールしやすくはなるのですが、和紙の素材自体は脆弱になるので余分な力を加えると余計に破れてしまうので必要最小限の力で少しずつ接合していく繊細な作業です。

掛軸完成
ついに修復作業も終え、掛軸に作品を表装し終わりました。

破れた酷かった箇所も上手く接合出来、ほとんど見てもわからないレベルまでにまでもっていくことが出来ました。

無事に掛軸の修復を完了する事が出来、お客様に完成品をお届けする事が出来、弊社としても達成感でいっぱいです。
最後に
弊社では、国内外のお客様からの掛軸修理・表装依頼に対し、誠心誠意対応しており、これからも掛軸の魅力を世界に広めていくことを目指しています。一つ一つの作品に込められた想いと歴史を大切にしながら、技術の研鑽に励み、お客様の期待に応えられるよう努力してまいります。
もし、あなたも大切な掛軸の修理や表装をご検討中であれば、ぜひ弊社にご相談ください。