若き茶道家、茶掛の掛軸修理依頼―茶席を彩る禅語の掛軸

茶道と掛軸の結びつきは千利休も重視していたように古くから深いものです。

今回は京都在住の40代男性のお客様からそんな茶道に欠かせない掛軸、いわゆる「茶掛」の修理依頼を弊社のHPよりいただいたエピソードをご紹介します。

お客様は長年茶道に親しんでこられ、大学時代から20年を超える茶道歴をお持ちの方でした。(茶道の世界ではまだまだ歴が浅いうちに入るそうです…スゴイ)

お持ちの茶軸が傷んでおり、半年後に控えた茶会で使用するため、修理を検討されておられました。

お客様のご希望で土曜日にご来店されたいとのことでしたので、弊社は第1、3、5の土曜日は営業している旨をお伝えし、日程の調整を行い、お客様にご来店いただきました。

 

京都の表具店ではなく、なぜ弊社に?

お客様は京都にお住まいなのでなぜ弊社にご相談頂いたのか不思議でした。

というのも、京都でも表具屋さんは数多く存在するからです。

色々とお話をお客様にお伺いするとその理由が見えてきました。

当初はお客様も京都の表具屋さんを検討されて色々と調べられていたそうなのですが、どこも職人気質なお店が多く敷居を高く感じてしまったそうです。

お客様は色々と裂地の色や柄、仕立てについて打ち合わせをしたかったので柔軟に対応してくれるお店を探されていたので、他に自分に合うお店はないかと探されていた際に弊社のHPを見つけられたそうです。

弊社のHPには表具に関する情報が詳細に記載されており、お客様のエピソードの記事からも柔軟に要望を聞いて対応してくれそうだと感じてご相談くださったそうです。

今まで丁寧にHPを更新し続けてきた甲斐があり嬉しい限りです(泣)

 

茶室を引き立てる「茶軸表装」と緑の裂地

当日は非常に熱心に打ち合わせを重ねられ、茶道具としての掛軸の表装について関心を持ってお客様は色々と質問をされました。

掛軸の修復過程や、裂地の選び方、茶道の美意識を反映した表装のスタイルについてもご説明させていただきましたが、お客様はその度に感心され、さらに学びたいという意欲を示してくださり、こちらも、接客をしていてとても楽しく感じました。

ご依頼の掛軸は「翠竹掃仙壇(すいちく せんだんをはく)」という禅語が書かれている茶軸でした。

「翠竹掃仙壇」とは、青々と茂る竹林が仙人の住む清浄な壇を清掃する様子を表し、清らかで雑念のない心持ちを象徴しています。

お客様と色々と打ち合わせを行い、竹や自然を象徴する緑の裂地を用いた茶掛表装にて仕立替を行う事に決定しました。

茶掛表装とは、柱と呼ばれる掛軸の縁を極端に狭める表具形式で「輪褙表装」とも呼ばれます。

表装の格式を表す『真・行・草』でいう草の表装に当たり、フォーマル、セミフォーマル、インフォーマルのうちのインフォーマルになります。

茶道では形式にとらわれず自然体であることが重視され、これが掛軸の表装にも反映されての略式の表装になります。

これは禅の中で『悟りとはシンプルなものだ』という考えを茶道の中で表現しての掛軸のスタイルだと私は考えております。

狭い柱幅の草の表装形式は、簡素で自然な美しさを表現し、茶室の雰囲気に調和します。

 

掛軸の修復と再発防止のための折れジワ補強

お預かりした掛軸は長年の使用によって折れジワや経年による汚れが目立ち、表具の傷みも進んでいました。

特に「折れジワ」は掛軸の劣化を早める原因となるため、これに対しては再発防止のための補強を行いました。

また、経年の汚れに対しても、掛軸本来の風合いを損なわないよう慎重にクリーニングを施しました。

 

裂地にはご希望の緑色の裂地を用い、茶室の雰囲気を引き立てる清々しい仕上がりを目指しました。

修復作業が進むにつれ、本紙の風合いが蘇り、新しい命が吹き込まれていくようでした。

 

茶会での成功とご報告

修理後の掛軸は折れも回復し、全体的な汚れも除去出来、緑色の裂地が清々しく感じられる仕上がりになり、お客様も大変喜んでくださいました。

 

修理が完了した掛軸は、半年後のお茶会で無事にお披露目となりました。

 

その後、お客様からお写真と共に丁寧なご報告メールをいただきました。

先日お茶会があり、修理して頂いたお軸を披露できました。
涼しげで丁寧な表具をお客様からお褒め頂きました。
美しく仕上げてくださりありがとうございました。
上手には撮影できませんでしたが、当日の床の写真を添付いたします。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

お人柄が伝わってくるようなご丁寧な内容とこのように大切な茶会でお役に立てたことに対し、弊社一同大変喜ばしく感じております。

 

 まとめ

茶道と掛軸、表具の世界は長い歴史の中で密接な関わりを持っています。

今回のお客様のようにこだわりを持って表装を検討される方にお応えするのも私たちの大切な役目だと感じています。

これからも伝統の技を大切にし、掛軸に新しい命を吹き込むお手伝いをさせていただきます。

お悩みのある方はぜひお気軽にご相談ください。

 

CEO Message

あなたと掛軸との懸け橋になりたい


掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



代表取締役社長
野村 辰二

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会社概要

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商号
株式会社野村美術
代表取締役
野村辰二
本社
〒655-0021
兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
TEL
078-709-6688
FAX
078-705-0172
創業
1973年
設立
1992年
資本金
1,000万円

事業内容

  • 掛軸製造全国卸販売
  • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
  • 掛軸表装・額装の全国対応
  • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
  • 宣伝広告業務
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