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兵庫県の卸先からの依頼:日本画家・杉原元人の掛軸シミ抜き修復事例
弊社には掛軸のシミ抜きに関する相談が数多く寄せられます。シミの状態や作品の素材によって完全にシミを取り除くことができるかどうかは異なり、掛軸のシミ抜きは表具の仕事の中でも非常に難しい作業になります。
今回、兵庫県の弊社の卸先様から日本画家・杉原元人の掛軸のシミ抜き依頼がありました。
杉原元人(1912-2009)は、戦後の日本画壇を牽引した日本画家であり、文部大臣賞を受賞、皇室にも作品を献上したことで知られています。
特に、群青色の墨を用いた風景画が彼の代表作として知られていますが、今回依頼されたのは、そんな群青色で描いた富士山の掛軸です。
問題のシミは作品の上部に発生しており、湿気などによるものではなく、何らかの物質が外部から付着したことによって生じたものと感じます。
掛軸の修理工程は、まず古い裂地や軸棒を取り外し、作品を解体することから始まります。
次に、旧裏打紙を丁寧に取り除き、作品の洗浄を行います。
その後、特殊な薬剤を使用してシミ抜きを行います。このシミ抜き作業は、非常に繊細で高度な技術を要するため、作品の状態を慎重に判断しながら進める必要があります。
場合によっては薬剤が作品にダメージを与える可能性があるため、適切なタイミングで作業を中止する判断も重要です。
今回は長年の経験と技術を駆使して丁寧にシミ抜き作業を行った結果、見事にシミを除去することに成功しました。
その後、新しい材料で掛軸を仕立て直し、再び鑑賞できる美しい状態へと修復しました。
株式会社野村美術は掛軸の全国卸業を行っており、こういった表装に関するご相談を事業者さまからも承っております。
事業者様で掛軸のシミ抜きにお困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。