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福岡県の仏壇屋様からの掛軸修理依頼: シミ抜きと折れジワ修理
弊社は全国の事業者様との取引を主としており、掛軸の卸販売や表装サービスの依頼を承っております。
今回は福岡県の仏壇屋の卸先様から2本の掛軸の修理依頼をいただきました。
2本の掛軸の状態
1点目は書の掛軸で無数のシミが発生しており、鑑賞が難しい状態でした。
もう1点は達磨が描かれた大巾の掛軸でこちらも経年による汚れやシミに加え、全体の折れジワが目立ち、同様に鑑賞に堪えれない状態でした。
掛軸の悩み相談の中で特に多いのが今回の様な「シミ汚れ」に関する相談です。
修理について
書の掛軸のシミ抜き
書の方のシミはかなり濃く、大量に発生していたので、少しずつシミ抜きの薬剤の濃度を高めながら何度もシミ抜きを行い、少しずつシミを抜いていきました。
一気に高濃度のシミ抜き剤で行えばよさそうに思うかもしれませんが、作品を損傷する恐れがあるので危険です。手間暇はかかりますが少しずつ行うのが吉です。
掛軸のシミ抜きに関してはこちらの動画をご参照ください。
達磨の掛軸の折れジワと汚れ
達磨の掛軸はサイズも大きく旧裏打紙を除去するのが大変でした。
肌裏打が完了した後、全体的にキツイ折れが発生していたので、肌裏打の後ろから折れ伏せを行い補強をしました。折れジワが大量にあったので折れ伏せを施すのにも時間と労力を要しました。表具の仕事で最も求められるのは実は忍耐力だったりします。
折れ伏せについてはこちらの動画をご参照ください。
一般的な掛軸の修理工程
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
作品解体 (古い裂地や軸棒などを取り外していきます。)
↓
旧裏打紙を除去 (業界用語で「めくる」という作業)
↓
作品洗浄 (汚れ落とし)
↓
シミ抜き (洗浄では落ちないシミの除去)
↓
折れ伏せ(必要であれば)
↓
再表具
修理完了
2点とも修理が完了し、シミや汚れが除去され、見違えるような状態になりました。
特に書の掛軸は酷かったシミが綺麗に抜け、その違いは一目瞭然です。
達磨の掛軸も汚れと折れジワがなくなり、再び鑑賞を楽しめるようになりました。
まとめ
掛軸のシミ抜きや仕立替は非常に繊細な作業ですが、お客様の大切な思い出を守り、美しく蘇らせることができます。
掛軸に関して何かお困りの事がございましたらお気軽にご相談ください。