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人形屋の卸先より鷹の掛軸の再表具修復依頼
卸先より掛軸の仕立替のご依頼
弊社は様々な業種の事業者様より表具のご依頼を頂戴することがございます。
今回は弊社の卸先の人形屋から鷹が描かれた大巾の掛軸の仕立替えのご依頼をいただきました。
鷹は日本の伝統的な画題の一つであり特に武士の間で人気がありました。
しかし今回の掛軸は長年の経年劣化により酷い折れジワが発生し、鑑賞に耐えない危険な状態になっていました。
そこで作品の美しさを蘇らせるために再表具を行うことになりました。
武士と鷹狩りの関係
かつて日本の武士にとって鷹狩りは単なる娯楽ではなく、重要な鍛錬の一環でした。
鷹を操る技術は戦場における冷静な判断力や俊敏な動きを養うのに役立つと考えられていたのです。
また、鷹狩りは将軍や大名が家臣をもてなす際の格式高い行事としても知られ、鷹の姿は武士の権威や威厳を象徴する存在でした。
そのため、鷹は掛軸の画題としても広く好まれ、多くの作品が制作されました。
掛軸の状態と修理の必要性
今回ご依頼いただいた掛軸は折れジワが深刻なレベルにまで達しており、表面に大きなダメージが見られました。
このままでは作品自体の保存が難しく修復が必要不可欠な状態でした。
そこで以下の再表具工程を経て、掛軸を修復することにいたしました。
再表具の工程
再表具の作業は、以下のステップで慎重に進めました。
作品解体: まず、掛軸を分解し、古くなった裂地や軸棒を丁寧に取り外します。
旧裏打紙の除去: 裏打された古い紙を剥がしていく作業です。これにより作品本体の状態を適切に整えることができます。
肌裏打: 作品の裏に新しい和紙を貼り補強を施します。これにより作品の強度を保ちつつ、柔軟性を確保します。
折れ伏せ: 作品の裏側から細い和紙をあて、折れジワを補強していきます。この作業によりシワの再発を防ぎます。
再表具: 新しい裂地を使用し美しく掛軸に仕立て直します。
掛軸の仕立替作業に興味がございましたらこちらのVもどうぞ。
修理後の仕上がり
修理が完了した掛軸は、見違えるほど美しい姿を取り戻しました。
鑑賞の妨げになっていた折れジワが完全に消え、鷹の力強い姿がより際立ちました。
かつて武士たちに愛された鷹の威厳が、再びこの掛軸から感じ取れるようになりました。
まとめ
武士の歴史とともに描かれてきた鷹の掛軸。
今回の修復作業を通じてその魅力を後世へと受け継ぐお手伝いができました。
これからも大切な作品を守り伝統の技を活かした表具を提供してまいります。