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日蓮曼荼羅の掛軸修理 – 神戸市
弊社は日本だけではなく世界中から掛軸に関するお仕事をしております。
遠方の方とは主にメールや電話でのやり取りになりますが、弊社にはギャラリーもございますので近隣の方は直接お店にご来店くださいます。
先日は兵庫県神戸市より男性のお客様が来店されました。
ご依頼の内容は日蓮曼荼羅の掛軸の修理仕立て直しです。
この掛軸は長年にわたって大切にされてきたもので、現状の表装には鶴丸紋の裂地が使用されていました。
しかし弊社では同じ鶴丸紋の裂地をご用意できないため、その点を丁寧にご説明したところ、お客様にもご納得いただけました。
代わりにお客様の好みに合った裂地を選定し、新たに仕立て直すこととなりました。
さらにお客様からは「現状の掛軸よりも大きく仕立て直したい」というご希望をいただきました。そのため、裂地のバランスや作品の見え方を考慮しながら、最適なサイズで再表具を進めることになりました。
掛軸の状態と修理の必要性
ぱっと見では傷みが目立ちにくい掛軸でしたが、よく観察すると全体に無数の深刻な折れが発生していることがわかりました。
さらに掛軸の裏側から確認すると、その折れの深さは想像以上で、すでに作品の剥落が始まる寸前の状態。時間の問題で、これ以上放置すると修復がより困難になる危険がありました。
お客様にも現状を詳しく説明し、慎重に修理方針を決定しました。
修理工程
今回の修理では、以下の流れで作業を進めました。
1. 作品解体
まずは、現在の掛軸から古い裂地や軸棒を取り外す作業を行いました。作品自体に負担をかけないよう、慎重に解体していきます。2. 旧裏打紙の除去(めくり作業)
掛軸の裏側にある古い裏打ち紙を取り除く「めくり」の作業を実施。3. 作品洗浄
作品の汚れを落とすための洗浄を行いました。しかし状態が非常に脆くなっていたため、できる範囲で最小限の洗浄にとどめ、作品の保存を優先しました。4. 肌裏打ち・折れ伏せ
肌裏打ちを施し、折れによるダメージを補修するため、折れ伏せを行い補強しました。5. 再表具
最後に、お客様が選定された金襴の裂地を使用し、新しい掛軸として仕立て直しました。お客様の希望通り、以前よりも大きめの仕上がりとなり、全体のバランスも美しく整いました。
修理後の仕上がりとお客様の反応
修理を終えた掛軸は荘厳な雰囲気をまとい、見事な仕上がりとなりました。
金襴の裂地を使用したことで日蓮曼荼羅の持つ神聖な印象が一層際立ち、まさに「ばえた」掛軸となりました。
お客様にも仕上がりをご確認いただいたところ「とても満足しています」と喜んでいただけました。
特にサイズを大きくしたことで、堂々とした佇まいになった点を気に入っていただけたようです。
大切な日蓮曼荼羅の掛軸をこれからも長くお祀りいただけることを願いながら心を込めて修理をさせていただきました。
まとめ
今回の修理では見た目には大きなダメージがないように見えた日蓮曼荼羅の掛軸が、実は深刻な折れや劣化が進行していることが判明しました。掛軸は外見だけでは状態を判断しにくく、専門的なチェックが重要であることを改めて実感しました。
弊社ではこうした大切な作品の修理・仕立て直しを通じて、掛軸を次の世代へと受け継ぐお手伝いをしております。ご自宅に伝わる掛軸の傷みが気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。大切な作品をより良い状態で残せるよう、最適な修復方法をご提案させていただきます。