ニュース/ブログ
兵庫県の卸先からの掛軸修理依頼
弊社と長年取引がある兵庫県の卸先様から2本の掛軸修理のご依頼を頂戴いたしました。
ひとつは山の中で3人の老人が書を読みながら語らっている情景を描いた掛軸。
もうひとつは力強い筆致の達磨の掛軸です。
長年の使用と経年劣化によりどちらの掛軸も傷みが見られましたが、特に3人の老人の掛軸は折れジワが全体的にひどく、このままでは鑑賞に大きな影響を及ぼす状態でした。
掛軸 修理工程
修理にあたってはお客様と詳細を確認しながら裂地の選定を行いました。長年掛けられていた表装の風合いを尊重しつつ、より美しく仕上げるための裂地を慎重に選びました。
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
① 作品の解体
まずは古い裂地や軸棒を丁寧に取り外していきます。ここでは無理に剥がすことなく、掛軸を傷めないよう細心の注意を払いました。
② 旧裏打ち紙の除去(めくり)
次に裏打ちされた古い紙を剥がす作業を行いました。業界では「めくる」と呼ばれるこの作業は、非常に繊細な技術を要します。紙の層を一枚ずつ慎重に剥がし、作品本体を傷つけないように進めました。
③ 肌裏打ち・折れ伏せ
肌裏打ちを施し、特に折れジワが深く刻まれた箇所には「折れ伏せ」という補強作業を行いました。3人の老人の掛軸は折れが強く、作品の強度を確保するために細かく補修を加えました。
④ 再表具
最後に、新しい裂地を用いて再表具を行いました。掛軸としての美しさを引き出しながら、耐久性のある仕上がりになるよう、丁寧に仕立てました。
修理完了後の姿
修理が完了した掛軸は、ひどく目立っていた折れジワもなくなり、見違えるように美しい姿を取り戻しました。
山中で語らう老人たちの掛軸は、細部まで鮮明になり、奥行きのある景色がよみがえりました。
達磨の掛軸も墨の力強さが際立ち、より迫力のある表現が楽しめる仕上がりになりました。
大切な作品が再び美しく飾られることとなり私たちとしても嬉しい限りです。
掛軸の修理は、単なる修復ではなく、作品の歴史や想いを未来へつなぐ大切な作業です。
これからも一つひとつの作品に向き合い、最良の仕立てを提供してまいります。