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アメリカで掛軸修理に困ったら相談して欲しい日本の修理業者

弊社では掛軸の修理を国内はもちろん、海外からのご依頼にも対応しています。様々な問い合わせを世界各国から頂戴するようになり、これほど多くの方が掛軸をお持ちになられているのだという事に驚かされます。
弊社が頂戴するご相談で最も多いのは掛軸の修理に関するご相談です。
ご自身で購入した掛軸、ご友人からいただいた掛軸、ご先祖が大切にされていて譲り受けた掛軸など様々な理由で掛軸をお持ちになられているのですが、残念ながら傷みが発生してしまって困られているというお客様が非常に多いです。
ご近所で、もしくはせめて住まわれている国内で掛軸の修理を行ってくれる業者が見つかれば良いのですが、見つけるのは非常に難しいのが現実です。掛軸の修理というのは非常に専門的な技術と経験が必要であり、他の職種の事業者が代替できるような仕事ではありません(替えが効かない仕事です)。ここ日本においてさえ、和室の減少による掛軸の需要が減っているため、事業継続が困難であったり、後継者不足などの様々な理由で年々その事業者の数が少なくなっているのが実情です。海外ならなおさら修理業者を見つけるのは困難でしょう。
そのような方々の力になれるのが弊社です。弊社はグローバル対応をしておりますので、掛軸の修理に関するご相談もお写真をお送りいただければ、ざっくりとした状況説明と修理にかかる概算費用をお伝えすることが可能です。
今回ご紹介するお話もまさにアメリカで困られていたお客様に関するエピソードです。
アメリカのお客様からのお問い合わせ
今回のお客様はアメリカにお住いのお客様で個人販売業者から1917年に描かれた虎の掛軸を購入されたそうなのですが、随分と傷んでいる状態で手元に届いたらしく大変扱いに困られたそうです。
掛軸全体に激しい折れジワが発生しており、汚れも発生しており飾って鑑賞できる状態ではなく、このまま放置しておくと更なる掛軸の傷みの原因になると思い修理を検討・・・しかし、アメリカでこのような傷んだ掛軸を修理出来る事業者を探すのは困難を極めたようです。
そんな中、弊社の存在をネットのHPで発見されお問い合わせをくださいました。
概算見積もり
こちらがお客様から送られてきた虎の掛軸の画像です。

確かに全体的にキツイ折れジワが発生しており汚れもある程度確認出来ます。
掛軸の寸法もお問い合わせで伺っていたので弊社の過去の経験から概算の修理のお見積もり費用をお伝えさせていただきました。もちろん現物を確認してから実際の作品の傷み具合とお客様が選ばれる裂地や仕様のオプションによってはその費用は変動いたしますが、最低限修理を行う上でのざっくりとした予算感をお伝えさせていただきました。
作品到着
修理の概算費用がお客様のご予算の範囲だったようで早速お客様は掛軸を弊社にお送りくださいました。
しっかりとした梱包で無事に弊社に到着し中身を確認させていただきました。

到着した掛軸の状態は当初弊社が想定していた範囲内の傷み具合でしたのでとりあえずは弊社も一安心いたしました。修理作業の難易度はスタートしてみないと本当の所はわからないというのが表具師の本音の部分ではあるのですが、それでも初見での印象は大切です。この初見で引っかかるレベルは相当掛軸が傷んでいるというレベルですのでそこはひとまずクリアでした。

お客様と様々な打ち合わせを行い、仕様を決定していきましたが1点よくあるご質問を頂戴いたしましたのでご紹介させていただきます。
紐や軸棒などはコストを削減するために元のものを再利用しても問題ありません。ただし、難易度や費用が高くなる場合は、新しいものにしても構いません。
掛軸のパーツの再利用に関するご質問はよく頂戴いたします。紐、軸先、軸棒、裂地など。材料代が安くなるのであれば再利用して欲しいというリクエストなのですが基本的には手間暇を考えると費用は変わりません。特に裂地の再利用はそもそも物理的に不可能な場合も多くあり、たとえそれが出来たとしても手間暇が大変掛かる為、逆にコストアップになります。その上で劣化した裂地の再利用なので鑑賞上、満足いく仕上がりになるかどうかという点でも微妙な所です。
今回は「軸先は現状の物を使用してもコストは変わりませんが新しい物に変更した方が綺麗になりますのでその方向で進めようと考えています」とご回答し、お客様もご納得いただけました。
掛軸修理スタート

仕立替の仕様が確定し、お客様にペイパルよりお支払いも頂戴いただきましたのでいよいよ修理開始です。修理は、以下のような工程で進めました。
作品解体: まずは、古くなった裂地や軸棒を慎重に取り外します。
旧裏打紙を除去: 掛軸の裏打紙を剥がす作業です。修理作業の最初にして難関作業のひとつです。作品の劣化が激しかったり前回使用されている糊が強力な接着力だった場合、旧裏打紙を除去する作業は困難を究めます。
作品洗浄: 長年の汚れを落とし、本来の風合いを取り戻します。
シミ抜き: 洗浄では落ちないシミを、専門的な技法を用いて丁寧に除去しました。
再表具: お客様とお打ち合わせした裂地とオプションで再表具。
掛軸修理完了
約4ヶ月の修理作業が完了し、見違えるように掛軸が復活いたしました。

全体に発生していたキツイ折れジワも綺麗に伸び、作品の鑑賞を妨げる事が無くなりました。

描かれている虎も生き生きとした表情となり、作品本来の魅力を取り戻しました。

当初は標準のサイズの桐箱で収まるかと考えていたのですが、いざ掛軸が完成して桐箱に収納しようとすると思いの外、掛軸が大きく仕上がっていた為、念の為、もう一段階大きいサイズの桐箱に収納した方が良いと判断し、桐箱を製作し直して収納いたしました。
感謝の声
仕上がった掛軸を手にしたお客様は大変喜んでくださり、以下のようなメッセージを頂戴いたしました。
掛け軸を受け取りました。素晴らしい仕上がりです!
本当にありがとうございます。見た目が素晴らしく、大変満足しています!
貴社の職人技、丁寧な対応、プロフェッショナルな姿勢、そしてカスタマーサービスには感銘を受けました。
アメリカの顧客として、どこで5つ星のレビューを残すのが最適か、ぜひ教えてください🙏
I received the scroll back, what a phenomenal job!
Thank you so much, it looks amazing and I am very pleased with the results!
You’re craftsmanship, care, professionalism, and customer service are admirable and impressive!
Please let me know how or where the best place for an American to leave you all a 5-star review is🙏
大変喜んでいただけたのが伝わり、弊社としても苦労して修復作業に取り組んだ甲斐があります。お客様は申し出通り、トリップアドバイザーとGoogle レビューに熱いコメントを残してくださいました。
私は個人売主から1917年の掛け軸を非常に悪い状態で購入しました。売主は角度と照明を工夫した販売写真で、実際よりも良く見せていました。
受け取った時、作品を囲む3層の紙が剥がれて分離しており、破れや虫食いのような穴、シミがあり、メインの作品には激しいシワがありました。
作品を伝統的に表装し直してくれる会社を至る所で探しました。掛け軸全体の完全性が損なわれ、作品がさらに損傷する恐れがあったからです。
これは思っていたよりも困難な作業で、アメリカでこれを行う店はほぼ存在しませんでした(シカゴ美術館の修復部門にまで連絡しましたが、彼らは標準的な作業はできないが、フィリピンに専門家がいると言われました…しかし、その人は私の問い合わせに返答してくれませんでした)。
オンラインでこの店を見つけましたが、海外だったので詐欺や輸送中の紛失を心配して懐疑的でした。
掛け軸を送るのはリスクでしたが、素晴らしい決断でした。作品のシワが取れ、3種類の異なる裂地の選択肢から裂地を選び、表装し直され、作品の完全性を保ちながら見事な仕上がりになり、すべて伝統的な表装と外観を維持し、オリジナルの作品に敬意を払っていました。
全体で表装替えに4ヶ月かかり、期間中は常に明確なコミュニケーションを取ってくれ、結果に非常に満足しています!10点満点中10点です。
I purchased a 1917 Scroll in very poor condition from a private seller, who had played with angles and lighting in his seller photos to make it look better than what it was.
I received it with the 3-ply paper surrounding the artwork was peeling and seperating; there were tares and what looked like bug holes; stains; and the main artwork was badly creased.I searched everywhere for a company who could traditionally remount the artwork, as the integrity of the scroll as a whole threatened to damage the artwork further.
This was a more difficult task than I thought, as American shops that did this were virtually non-existent (I even contacted The Chicago Art Institute’s Restoration Department, who said they couldnt do it to standard but had a specialist in the Philippines who could,…he never responded to my queries)I found this place online and was skeptical as it was overseas and I was worried about scammers or my scroll getting lost in transit.
Sending my scroll in was a risk, but turned out to be a fantastic decision. The artwork was uncreased, and remounted to my choise of 3 different silk backgrounds, maintaining the integrity of the artwork and making it look phenomenal, all while maintaining traditional mounting and appearence, honoring the original artwork.
All in all it took 4 months to remount, they had constant and clear communication with me throughout, and I am very pleased with the results! 10/10
これほどまでに情熱的に弊社へのレビューを書いてくださった事に本当にこちらこそ感動をありがとうと感謝をお伝えさせていただきました。弊社への問い合わせをするまでの紆余曲折についてもこのレビューで初めて知り、全身全霊でお客様に向き合いご対応した事が本当に良かったと感じております。
まとめ
海外にお住まいで、掛軸の修理先が見つからずお困りの方。
思い出の詰まった大切な掛軸を、飾ることもできず、ただしまい込んでいませんか?
どんなに遠く離れていても、作品への想いがある限り、私たちは全力でお応えします。
あなたの大切な掛軸を、未来へつなぐお手伝いをいたします。
もし「どこに頼めばいいのか分からない」と迷われているなら、ぜひ一度、(株)野村美術にご相談ください。