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掛軸の修理に大苦戦!! アメリカからのご依頼

弊社は掛軸をはじめ、巻物や和額、屏風や衝立など日本美術に関する表装のお仕事を日本だけではなく世界対応でさせていただいております。
表装の修理のお仕事の中でよくあるのが「前回の表装に使われた糊が超強力過ぎて旧裏打紙がめくれない」というトラブル。これは本当に苦労するんです。
今回はまさにそういった掛軸の修理をアメリカのお客様から頂戴したエピソードをご紹介させていただきます。
アメリカのリピータのお客様から龍の掛軸と書の掛軸の修理依頼
今回修理のご相談を頂戴したのは以前も弊社で掛軸の修理をご依頼してくださったリピーターのお客様。近年、弊社を再利用してくださるお客様が世界各国から増えてきており大変嬉しい限りです。
今回ご相談を頂戴した掛軸が以下の二本の掛軸。
まず手に取った龍の掛軸は、経年による少しの汚れこそありましたが、深刻な傷みはなく比較的状態は良好でした。「これなら問題なく仕立替ができるな」──そう胸を撫でおろしました。

ところがもう一方の「書」の掛軸は一見すると問題なさそうに見えるのですが、手に取った瞬間に違和感を覚えました。

掛軸の弾力が明らかに強すぎて不自然なのです。しなやかさがなくゴワゴワするのです。

こういう場合はたいていが以前の表具で“強力な糊”が使われていることが原因です。こういった強力な糊が使われた作品の仕立替は非常に厄介で旧裏打紙を剥がす際になかなか剥がれず、作品を傷めてしまう危険があるのです。最悪の場合、修理不能に陥ることすらあります。
お客様には状況をご説明し、リスクと追加費用をご納得いただきました。
修理作業開始
修理作業を開始し、龍の掛軸に関しては特に問題もなくスケジュール通り進んでいきましたが、やはり大変だったのは書の掛軸の旧裏打紙除去・・・なんせめくり難い。
無理に剥がせば本紙を傷めてしまうため、指先とピンセットを使い、少しずつ、ほんの数ミリずつ丁寧にめくっていく。根気と集中力を長期間保持し続けなければいけない作業は困難を極めました。
二人がかりで何日もかけ、ようやく旧裏打紙を取り除くことができた時は二人ともぐったりでした。汗と神経をすり減らすような作業でしたが、作品を仕立替する為には欠かせない作業なので大きな前進でした。
丸表装から「行スタイル」へ
当初の二本の掛軸はいずれも「丸表装」という形式で仕立てられていましたが、今回はお客様とのご相談の結果、日本で最もオーソドックスな「行スタイル (大和表装スタイル)」で仕立て直すことになりました。
修理完了
苦労した仕立替の作業が完了し掛軸がよみがえりました。
書の掛軸は本当に苦労を重ねましたが再び異国の地でお客様に大切に飾られる事を考えると苦労も吹き飛びます。
弊社では、国内はもちろん海外からのご依頼にも対応しております。
「大切な掛軸をもう一度飾りたい」──そんな思いに寄り添いながら、これからも世界中のお客様のお役に立てるよう努めてまいります。ご相談がございましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。