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海外からの緊急掛軸修理依頼

海外のお客様と取引をさせていただいている中で、個人のお客様のご依頼ではなく美術専門ギャラリーを経営されている事業者様の販売商品を修復するお仕事も承る事がございます。
今回は過去に何度も弊社をご利用くださっているドイツのギャラリーから依頼された緊急での掛軸修理のお仕事をご紹介いたします。
アメリカのクライアントから布袋の掛軸修理依頼
今回はそのギャラリーのアメリカにいらっしゃる顧客が購入された掛軸の修復依頼を頂戴しました。
ギャラリーからのリクエストは以下の通りです。
今回はお客様の表装替えのご相談でご連絡いたしました。お客様は美しい掛軸を手に入れ大変気に入っておられます。特に、現在の表装の柔らかい色合いや穏やかなグラデーションが作品の雰囲気に非常に良く合っていると感じておられます。しかしながら、現在の表装は古くなり、裂地も劣化している為、今後の保存を考えて表装を新しくするのが良いだろうという結論に至りました。お客様は現在の表装の美的要素をできる限り維持したいと考えており、特に色調や全体の雰囲気を大切にしたいとのことです。そこで、できるだけ元の表装に近い雰囲気を持つ裂地の候補をご提案いただけますでしょうか?
こちらがご相談いただいていた掛軸です。可愛らしい布袋さんが水墨で描かれている作品です。

作品自体に目立った汚れなどはないですが確かに少し表装が劣化しているのが確認出来ました。

また、ギャラリーから納期に関して以下のご相談がございました。
また、お客様から1点質問がありました。表装替えの納期を4月末までに完成させることは可能でしょうか? お客様は5月に長期の旅行を予定しており、その前に作品を受け取り、ご自宅に飾られたいと考えているようです。
もちろん、現在多くのプロジェクトでお忙しいこと、また日本画の表装が非常に繊細な作業であることを十分に理解しておりますので、このご依頼が難しいかもしれないことは承知しております。ただ、もし可能性があるようでしたら、お客様にお伝えしたいと考えています。
弊社では掛軸の仕立替に関しては数ヶ月いただくのを常としているのですが、今回のご相談を頂戴したのが2月の中旬ごろ。作品を実際に弊社に送っていただくまでにも様々な打ち合わせを行っており、全ての掛軸の仕様を決定してお支払いをいただいた上で作業を開始できるのは4月の初めになります。4月末までにアメリカのお客様の元に届ける為には4月20日頃までには作業を完了させ出荷をしなければなりません。通常であれば絶対にお断りをするのですが、弊社を何度も信頼してご利用くださっているギャラリー様が大切にされているクライアントからのご依頼であったのと作品自体の損傷がそれほどまでに酷い状態ではなかったことから、弊社はなんとか現在承っている数多くのプロジェクトの工期を調整して対応する事を決意いたしました。
表装仕様打ち合わせ
ギャラリー様を介してのクライアント様の好みをタイトなスケジュールの中、納得いくまで何度も打ち合わせを行い、今回はこちらのモックアップの仕様で仕立替を行う事が決定いたしました。

修復内容と工程の詳細
今回の修理では、以下の流れで作業を進めました。今回は特に予想外な作品の劣化が修理の最中に判明し、その対応の為により過酷なスケジュールの中、スタッフ一丸で納期に間に合わせました。
1. 作品解体
現在の掛軸から古い裂地や軸棒を慎重に取り外します。作品に負担がかからないよう細心の注意を払って作業を行います。2. 旧裏打紙の除去(めくり作業)
作品の裏側に接着された古い裏打紙を丁寧に取り除きます。3. 肌裏打ち
作品の裏側から和紙を接着して補強する最初の裏打を行いました。4. 補彩
絹本作品ではたまにあるのですが、作品の初見では判別つかないのですが、旧裏打紙を除去してみると意外に作品の劣化が進んでいる場合があり、今回も脆く崩れる部分がありました。今回は肌裏打後に補彩を行い、自然に鑑賞できるように修復いたしました。5. 再表具
最後に、お客様にお選びいただいた裂地を用いて、新たな掛軸として仕立て直しました。
修復作業完了
タイトなスケジュールの中、予想外な作品の傷みがあり、作業工程が追加になりましたがなんとか約束の納期に間に合わせる形で表装の仕立替が完了いたしました。

ギャラリー様からも大変喜んでくださっているフィードバックを頂戴いたしました。
ご連絡と素晴らしいお知らせをありがとうございます。掛軸は写真で見る限り完璧な仕上がりです!
表装の過程を通して、常に細やかな配慮をもって作業してくださったこと、そして今回の素晴らしいお仕事に心から感謝いたします。
特に、劣化していた部分に対して行ってくださった補彩のご対応、本当にありがとうございます。細部へのこだわりや、作品への思いやりに深く感動しています。また、非常にタイトなスケジュールの中でプロジェクトを完了していただいたことにも心から感謝しております。
新たな表装によって、作品全体のバランスがより調和の取れたものになったと感じています。繊細な筆致、柔らかな色彩、そして情緒的な空気感が滑らかに融合する印象を受けました。
一方で、中廻しに採用された金襴裂地は、作品の持つ静かな温かみと気品をやさしく引き立てながら、決して主張しすぎることなく深みを与えていると感じます。
ギャラリー様からこれほど熱意のある感想を頂戴出来、弊社としても努力を重ねてご要望に応えた甲斐がありました。今回に限らず、本当にこちらのギャラリー様は弊社の表装の仕事に対して敬意をもってご依頼してくださっているので弊社としましても大変嬉しく思います。
クライアントのご自宅にて
出荷に関しまして、弊社では通常は海外発送はDHLを利用するのですが、クライアント様からのご依頼で今回はFedExを使って欲しいとの事でしたので、急遽変更してお送りさせていただきました。
クライアント様の元に無事に希望の納期通り到着したようで大変喜んでいただけた旨をギャラリー様から頂戴いたしました。
あなたの仕事とサービスに対して、私たちがどれほど満足しているかをぜひお伝えしたくご連絡いたしました。クライアントからのフィードバックも先ほど届き、掛軸を自宅に飾られたとのことです。作品をとても気に入っており、表装の仕上がりにも大変満足しているとのことでした。
また一つ、素晴らしいプロジェクトを共に成功させることができました。このようにタイトなスケジュールの中でプロジェクトを実現するために尽力してくださり、あなたのご協力と柔軟なご対応に心から感謝しております。本当にありがとうございました。
あなたとお仕事をご一緒できるのはいつも大きな喜びです。次のプロジェクトをご一緒できることを今からとても楽しみにしています。
ギャラリー様からこのような高評価を頂戴出来、弊社としても光栄です。ひとつひとつのプロジェクトを丁寧に全力で取り組んできた結果が今の信頼につながっていると考え、これからも全力で取り組んでいきたいと改めて感じました。
弊社では国内はもちろん、海外からの掛軸修復・表装のご依頼にも数多く対応してまいりました。
大切な美術品を「もう一度飾れる状態にしたい」「次の世代へ残したい」とお考えの方は、ぜひ一度、弊社までご相談ください。