アメリカのお客様より古くから家にある2巾の掛軸修理依頼

掛軸のご相談で非常に多いのが修理のご相談。長年、家族や家で大切にされてきた掛軸が長い年月の間に傷みや汚れが発生してしまって飾れないというお悩みです。

今回ご相談いただいたのはアメリカに住むお客様からの掛軸修理に関するエピソードです。

2巾の掛軸の修理依頼

今回ご相談いただいた掛軸は、お客様のご家族が1970年代に横浜で暮らされていた頃からご自宅にある2巾の掛軸で、長年の環境が影響して傷みや汚れが発生したので修理を検討したいというご相談でした。

お客様からは相談と一緒に掛軸のお写真をお送りいただきました。

まずはこちらの雪景山水の掛軸。

全体的にかなり汚れがひどい状況なのが伝わってきます。おそらく一度の洗浄・シミ抜きでは改善が難しいので複数回行う事を前提とした方が良いのですが、作品の耐久性の状態によっては作品保護を優先し、出来る範囲で洗浄・シミ抜き作業を終える可能性がある事もお伝えいたしました。

続いてご相談いただきました掛軸がこちらの「月に梅」の掛軸です。

こちらは写真で見る限りでは汚れは目立たない状態ですが、作品に裂けが見える為、補彩と補強をご提案させていただきました。

両掛軸とも暫定的な概算のお見積りを出させていただき、お客様もご納得の上でプロジェクトを進める事となり、掛軸を弊社に送っていただきました。

作品到着。予想以上にひどい状態の掛軸たち

実際に掛軸をお送り現物を確認したのですが、両方とも当初写真で拝見していた状態よりもかなり状態が悪いことが判明いたしました。

まず、雪景山水の掛軸ですがこちらはシミ汚れだけではなく、日焼けによる変色のような症状が見受けられ、こちらは完全にきれいに除去するのはかなり難しい可能性がある事をお客様にご説明させていただきました。

続いて「月に梅」の掛軸ですが、こちらでは写真では目立たなかった汚れが存在していたことと、作品の裂けが想像以上に広範囲に渡っている非常にひどい状態でした。

汚れに関しては軽度であるのと、作品の状態が想像以上に悪い為、今回は作品の保護を最優先し行わない方針としました。そして当初の予定よりも補彩が広範囲に渡る為、費用がプラスアルファになる事もお客様にご説明させていただきご了解いただきました。

お客様からは、現物確認の所見を受け止めたうえで、修復が可能かどうかの見立てと詳細見積を待ちたい、という前向きな趣旨のご返信をいただきました。

詳細な打合せ

作品到着後の所見をお伝えいたしましたので、2点の掛軸の仕立替の仕様の打合せに移ろうとしていたのですが、その前にお客様はこれらの掛軸について「状態がかなり傷んでいるので、修復しても改善が見込めないほど手遅れではないか?似た状態の掛軸のBefore/Afterは見られますでしょうか?」とご心配されていました。

これに対して弊社は「新品同様のような状態に戻すことは残念ながら無理ですが、現状よりかなり改善し、鑑賞の妨げにならないよう最低限きちんと楽しめる状態には回復させる予定です。ただし無理な処置は行いません事をご了承ください。」とプロの判断を明確にお伝えし、参考として似た修復事例の写真を共有させていただきました。

実際にお客様からも、過去の修復例が参考になった旨のご返信をいただき、その後は裂地や仕様の具体的な打合せへ進みました。

「月に梅」の掛軸に関しては、茶系の控えめな裂地をお客様はご所望されておられましたのでご提案させていただきました。

「雪景山水」の掛軸に関しては、雪景の冷たさや静けさを引き立てるような色柄の裂地をお客様は選ばれました。

その他、細かな仕様も決定し、いよいよ仕立替開始です。

やはり苦労した修復作業: 補彩とシミ抜き

当初の予想通り、やはり「月に梅」 の掛軸は補彩作業、「雪景山水」の掛軸はシミ抜きが大変苦労しました。

「月に梅」の掛軸は絹本に描かれた作品なのですが、この絹の繊維自体が裂けてしまっている状態を自然に補彩するのは紙本のそれとはレベルが違う程に難易度が上がります。細い筆で水分を出来るだけ落として色の薄い絵具を何回も何回も少しずつ重ねていって該当箇所を色で埋めていくという気が遠くなる作業の繰り返しだからです。紙本の補彩よりも絹本の補彩の方が色をなじませるのが非常に難しいのです。

「雪景山水」は汚れがひどく、一度のシミ抜きでは綺麗になりませんでした。ここで薬品の濃度を一気に上げてシミを抜けばよいというわけではないのです。薬品の濃度を上げ過ぎるとそれはそれで作品自体に不具合が発生する可能性もあるので、低濃度~中濃度の薬品のシミ抜きを根気強く何度か行う事の方が良い場合もあります。ここの判断はケースバイケースなので経験ですね。

修理完了。見違えるようによみがえった二巾の掛軸

長かった修理期間を終え、二巾の掛軸の修復が完了いたしました。

「月に梅」の掛軸では裂けの部分が見事に補彩され、鑑賞を妨げることなく楽しむ事が出来るようになりました。

「雪景山水」の掛軸もシミ汚れや日焼けが綺麗に回復し、雪景の様子が見事によみがえりました。

早速、掛軸を発送させていただき、荷物が到着後、お客様からは次のような感謝のお言葉を頂戴いたしました。

掛軸を受け取り、とても満足しています。大切な家族の品を丁寧に修復してくださりありがとうございます。

We have received the scrolls and are so pleased! Thank you for your careful restoration of these beloved family pieces.

まとめ: 掛軸の修復やシミ抜き・洗浄でお困りの際は

弊社では今回のように傷んだ掛軸や汚れた掛軸をよみがえらせるお仕事をしております。ご家族で大切にされてきた掛軸やご先祖様から受け継いだ掛軸がそのような状態にあり、困られている方はお気軽にご相談ください。出来る限りの技術で掛軸をよみがえらせるよう努めてまいります。

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    CEO Message

    あなたと掛軸との懸け橋になりたい


    掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

    その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

    日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



    代表取締役社長
    野村 辰二

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    会社概要

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    商号
    株式会社野村美術
    代表取締役
    野村辰二
    本社
    〒655-0021
    兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
    TEL
    078-709-6688
    FAX
    078-705-0172
    創業
    1973年
    設立
    1992年
    資本金
    1,000万円

    事業内容

    • 掛軸製造全国卸販売
    • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
    • 掛軸表装・額装の全国対応
    • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
    • 宣伝広告業務
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