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四国八十八ヶ所の納経軸を掛軸に表装|ポーランドから来日された歩き遍路のお客様

四国八十八ヶ所を巡って完成した納経軸は、一ヶ寺ずつお参りを重ね、御朱印と墨書をいただきながら完成させていく為、その方が歩んできた時間と祈りが込められているアート作品とも言うことが出来ます。
今回はポーランドから来日され、四国八十八ヶ所を歩き遍路で巡られたお客様より満願になった納経軸を掛軸に表装したいというご依頼をいただきました。
四国遍路を終えた大切な納経軸の表装をご検討中の方にとって参考になれば幸いです。
目次
ポーランドからのご相談|四国遍路を終えた納経軸を掛軸へ
今回ご相談くださったのは、ポーランドから来日されたお客様です。

事前にメールでご連絡をいただき、四国遍路を終えた納経軸を掛軸に仕立てたいとのことで弊社へご来店くださいました。
日本語をとてもよく勉強されている方でしたが、表装の仕様や海外発送に関する大切な部分については誤解がないように英語も交えながら確認させていただきました。
56日間の歩き遍路|納経軸に込められた旅の記録
お客様は弘法大師・空海の考えに興味を持たれたことをきっかけに、四国遍路に挑戦されたそうです。
しかも公共交通機関を使わず、約56日間かけて四国八十八ヶ所を歩いて巡られたとのことでした。
ご来店時には菅笠や遍路用品も身に着けておられ、四国を歩き通してこられた空気がそのまま伝わってくるようでした。

また、お客様は「同行二人」の意味もよく理解されていらっしゃいました。

同行二人とは、四国遍路において「一人で歩いているように見えても、その方は弘法大師・空海と共に歩いている」という考え方です。
これは四国遍路を象徴する大切な言葉の一つであり、単なる観光ではなく、巡礼として四国の道を歩く心構えにもつながっています。
そのような背景を知ったうえで歩かれたからこそ、この納経軸はお客様にとって、単なる旅の記念ではなく、四国を歩いた日々そのものを映した大切な作品だったのだと思います。
表装裂地のご提案|四国の自然を思わせる緑系の裂地
表装の打ち合わせでは、お客様から緑系の裂地をご希望いただきました。
四国遍路の納経軸の表装では緑色の裂地を好まれる方が少なくありません。
四国には山や木々の豊かな景色が多く、実際に歩き遍路をされた方にとって、緑は四国の自然を思い出す色なのだと思います。

今回もお客様のご要望により、通常の定番コースとは別に緑系の裂地を中心とした組み合わせをご提案させていただきました。
弊社には表装裂地のストックがありますので、定番の組み合わせだけではなく、お客様のご希望や作品の雰囲気に合わせて、臨機応変にご提案できることも強みの一つです。

今回は落ち着いた緑色の裂地を中心に、華美になりすぎず、納経軸全体が自然にまとまるような組み合わせを意識しました。

“I’ll miss it.”|お預かりする前から伝わってきたお客様の想い
表装の打ち合わせの際、確認のため、弊社の店内でご自身の納経軸を壁に掛けてご覧いただきました。

お客様は掛けられた状態の納経軸を見るのは初めてだったようでとても嬉しそうに何枚も写真を撮られていました。
そして帰り際に、小さく “I’ll miss it.” とつぶやかれました。
「この納経軸としばらく離れるのが寂しい。」
その一言からこの納経軸がどれほど大切なものなのかが伝わってきました。
お客様にとってこの納経軸は、絹地に朱印と墨書が並んだ作品であると同時に、56日間の歩き遍路の記憶そのものでもあります。
だからこそ弊社としても、そのお気持ちに応えられるよう、丁寧に表装作業を進める必要があると感じました。
納経軸の表装工程|絹地の本紙を掛軸として整える
納経軸の表装ではまず本紙である絹地の状態を確認したうえで、墨書や朱印が水分によって滲まないように注意しながら作業を進めます。
表装は水を使う工程が多いため納経軸のように朱印と墨書が多く入っているものは、特に慎重な取り扱いが必要です。

その後、本紙の状態、墨や朱印の具合、仕立て上がりの寸法、裂地との相性を見ながら、様々な工程を一つずつ確認をしながら作業していきます。
今回も、お客様の歩き遍路の思い出が込められた納経軸を長く大切に飾っていただけるよう、慎重に作業を進めました。
完成した掛軸|落ち着いた緑の表装で一幅の掛軸へ
完成した掛軸は落ち着いた緑系の裂地により納経軸の墨書と朱印がすっきりと見える仕上がりになりました。
絹地の納経軸本体には八十八ヶ所を巡った証である朱印と墨書が力強く並んでいます。その存在感を邪魔しないように周囲の裂地は落ち着いた色味でまとめました。
緑系の表装にすることで四国の山々や自然を思わせる穏やかな雰囲気も加わり、お客様の歩き遍路の思い出に寄り添うような掛軸になったと思います。
納経軸は表装することで実際に掛けて鑑賞できる一幅になります。
四国八十八ヶ所を巡った証を暮らしの中で見返すことができる形に整える。
それが納経軸表装の大きな意味の一つです。
お客様からのご感想|想像以上に美しい仕上がり
完成後、掛軸の写真をお送りしたところ、お客様から大変嬉しいお返事をいただきました。
完成した掛軸の写真を拝見し、深く感動しました。本当に素晴らしい仕上がりで私が想像していたよりもはるかに美しいです。この作品に込めてくださったART NOMURAの皆様の丁寧な心配り、技術、そしてご尽力に心から感謝しております。改めてこの大切な依頼を皆様にお任せできた事をとても幸運に感じています。皆様の職人技と細部まで行き届いたご配慮は本当に素晴らしくこの仕上がりに心から満足しています。
I was deeply moved to see the photos of the completed scroll. It looks truly magnificent, far more beautiful than I had ever imagined. I am very grateful for the care, skill, and dedication that you and everyone at Art Nomura have put into this work.
Once again, I feel very fortunate to have entrusted this precious project to you. Your craftsmanship and attention to detail are truly admirable, and I could not be happier with the result.
想像していた以上に美しい仕上がりだと喜んでくださいました。
また、弊社の仕事に対して丁寧な作業と細やかな配慮に感謝しているというお言葉も頂戴しました。
表装前に “I’ll miss it.” とつぶやかれたほど大切にされていた納経軸ですので、完成後にそのようなお言葉をいただけたことは弊社にとっても大変ありがたいことです。
お客様にとって大切な巡礼の証をお預かりし、それを掛軸として整える仕事には大きな責任があります。
だからこそ、完成後に喜んでいただけることが職人として何よりの励みになります。
海外からの納経軸表装にも対応しています
弊社では四国八十八ヶ所の納経軸をはじめ、西国三十三所、坂東三十三観音、秩父三十四観音など、各種巡礼の納経軸表装を承っております。
また、日本国内のお客様だけでなく、海外からのお客様のご依頼にも対応しております。
来日中に納経軸をお預かりし、完成後に海外のご住所へ発送させていただきます。
納経軸の表装ではどのような裂地を選ぶかによって完成後の印象が大きく変わります。
弊社では、定番の表装コースだけでなく、今回のようにお客様のご希望に合わせて、弊社で在庫している裂地の中から新たな組み合わせをご提案することも可能です。
大切な巡礼の記録をこれからも安心して飾っていただける一幅へ。
四国八十八ヶ所の納経軸の表装をご検討の方はどうぞお気軽にご相談ください。

