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ドイツのお客様よりご依頼いただいた達磨作品の掛軸表装

弊社では海外のお客様から「自分で描いた作品を日本の掛軸として仕立てたい」というご相談をよくいただくことがあります。
今回はドイツ在住のお客様よりご依頼いただいた達磨作品の掛軸表装についてご紹介します。
目次
ドイツのお客様から達磨作品の掛軸表装のご相談
今回のお客様は日本旅行中に弊社へ来店をご希望され、実際に店頭で作品を拝見しながら打ち合わせを行いました。

写真だけでは分からない紙の質感や作品全体の雰囲気を確認できたことは表装方針を考える上で大きな意味がありました。

特に、お客様ご自身で描かれた作品の場合、使用されている紙や墨、朱肉の性質が分からないことがあります。
掛軸に仕立てるためには、作品の寸法や見た目だけでなく、表装工程に耐えられる状態かどうかを確認することが大切です。
自作作品を掛軸にする時に注意したい墨や朱のにじみ
ご自身で描かれた書画を掛軸に仕立てる場合、最初に気をつけたいのが墨や朱のにじみです。

掛軸はただ作品の周囲に裂地を付けるだけではありません。
裏打や仕立ての工程では、水分を伴う作業が必要になります。
そのため、作品に使われている墨や朱が水分に弱い場合、作業中に滲む可能性があります。
今回の達磨作品も使用材料の詳細が分からないため、まずは色の状態を見ながら慎重に進める必要がありました。
作業を進める中では、当初想定していたほど大きなにじみは見られなかったため、状態を確認しながら色止めを行い、掛軸として仕立てられるように進めていきました。
作品を掛軸にするということは、作品をより美しく見せるだけでなく、表装の工程に耐えられる状態かどうかを見極めることも重要です。
達磨という画題に合わせた裂地選び
今回の作品は達磨を主題とした作品でした。達磨は禅の祖として知られる菩提達磨に由来する画題であり、掛軸として仕立てる場合も、あまり華美に飾りすぎるより、作品の持つ静かな存在感をどう引き出すかが大切になります。

裂地選びでは、作品そのものの色合いだけでなく、来店時の会話の中で伺ったご希望や、作品に求められている雰囲気も踏まえて考えました。

作品の上下に入る一文字には、落ち着いた緑色の裂地を選びました。

また、作品の周囲には紺色の筋廻しを行うことにいたしました。この紺色の筋廻しが境界線のような役割を果たし、作品全体の輪郭を引き締め、裂地から作品が浮かび上がるような雰囲気を感じさせてくれます。

緑の一文字が作品に柔らかさと落ち着きを与え、紺色の筋廻しが達磨作品の存在感をしっかり支える構成です。
掛軸の裂地選びは単なる好みだけで決めるものではありません。
作品の画題、墨の強さ、余白の雰囲気、飾った時の印象を総合的に判断しながら、どの裂地が一番自然に作品を引き立てるかを考えていきます。
表装工程
今回の大まかな表装工程は、以下のような流れです。
色止め
墨や朱肉がにじまないよう、作品の状態を確認しながら処理します。
肌裏打
作品の裏側に和紙を糊で接着し、掛軸に仕立てるための土台を整えます。
裂地の準備
作品に合わせて選んだ裂地を必要な寸法に裁断します。
付け回し
本紙に裂地を順番に糊で組み合わせ、掛軸の形に整えていきます。
中裏打・総裏打
掛軸として安定するよう、段階的に裏打を重ねます。
最終仕上げ
軸棒、八双、掛緒、巻緒などを取り付け、掛軸として完成させます。
工程としては一般的な掛軸表装の流れですが、今回のように墨や朱肉の性質がはっきり分からない作品では最初の色止めと状態確認が非常に重要になります。
そのため、急いで進めるのではなく、状態を見ながら慎重に作業を進めました。
完成した達磨の掛軸
完成後の掛軸は達磨の表情や筆致が自然に引き立つ一幅となりました。

落ち着いた緑の一文字が作品を穏やかに受け止め、紺色の筋廻しが全体をきりっと引き締めています。

達磨という画題には、強さと静けさの両方があります。
今回は派手に飾るのではなく、作品の持つ静かな力をそのまま掛軸として整えることを意識しました。

完成写真をご覧いただいたお客様からも掛軸が美しく仕上がっていること、色落ちや滲みが見られなかったこと、一文字と筋廻しの選定について喜びのお言葉を以下のように頂戴いたしました。
The scroll looks beautiful and I‘m happy that the colors didn‘t fade. We appreciate your choices for the Ichimonji and the Sujii-mawashi.
掛軸はとても美しく見えますし、色落ちしていなかったことを嬉しく思っています。一文字と筋廻しのご選択にも感謝しています。
ドイツのご自宅へ届いた後のお客様の声
完成した掛軸は最終確認の後にドイツのご自宅へ向けて発送いたしました。
後日、お客様より無事に到着したとのご連絡をいただきました。
美しく表装された掛軸が届いたこと、丁寧な梱包や取り扱い説明についても感謝のお言葉をいただきました。
さらに、実際にご自宅で掛軸を飾られた様子のお写真もお送りくださいました。


最初に考えていた場所とは違う場所に飾られたそうですが、実際に空間に合わせて掛ける場所を選ばれたことが伝わる嬉しいご報告でした。
掛軸はお客様の暮らしの中で実際に掛けられ、日々眺めていただける状態になって初めて一幅の掛軸としての役割を果たします。
遠くドイツのご自宅で今回の達磨作品が掛軸として飾られていることは、弊社にとっても大変嬉しいことです。
まとめ:自作の書画も掛軸として美しく仕立てることができます
ご自身で描かれた書や水墨画を掛軸に仕立てる場合、作品の大きさだけでなく、紙質や墨、朱肉の状態を確認することが大切です。
特に、使用材料がよく分からない作品では表装中に滲みが発生する可能性もあるため、慎重な判断が必要になります。
また、掛軸の仕上がりは裂地選びによって大きく変わります。
作品の画題や雰囲気、お客様のご希望を踏まえながら、どのような表装にすれば作品が自然に引き立つかを考えることが掛軸表装ではとても重要です。
弊社では現物の状態を見極めながら作品に合った表装をご提案しております。
国内はもちろん、海外からのご相談にも対応しておりますので、ご自身の作品を掛軸として残したい方は、ぜひ一度ご相談ください。