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美術品の 修復 — 屏風 | 兵庫県加西市
加西市 のお客様より
弊社には古い美術品の仕立替や修復依頼が全国から届きます。(メーカー卸なので・・・)
古い美術品を仕立替する際にあまりにも作品が傷んでしまっている場合、そのまま仕立替をしても飾れない・・・もしくはそのまま飾ると傷んでいる箇所が気になるというケースがよくあります。そういった場合、美術品の所有者の了解の下、美術品の修復をする場合があります。(もちろん出来る範囲での)
今回はそんな美術品の修復事例をご紹介。
六曲屏風の仕立替 修復
六曲の屏風の仕立替をお受けしたのですが、なかなかこれが状態が悪い・・・虫食いやシミ・汚れが作品全体にあります。
ところどころ白くなっているのは以前仕立替をした際に欠落してしまった箇所と思われます。この作品を剥がして、旧裏打紙を取り除いてもう一度新しい紙で裏打をしてもそこだけ穴があいているので新しい裏打の紙の色が出てきてしまい全体的に色がまばらになってしまいます。
仙人の衣が完全に欠落してしまっています。(泣)
こ、これは・・・!!! 仙人の目玉が無くなってしまっています(泣)
これもなかなかに酷いですね・・・仙人も鶴も松も・・・もうボロボロです。
まだほかと比べれば・・・マシかな・・・ とは言えない。十分傷んでいます。
風景画ですがこれも十分に全体的に剥げています。
六枚全ての作品がどれも傷んでいるのでおり汚れなども目立つ為、シミ抜をしてからの修復作業となります。ただ作品の状態があまりに酷い場合はシミ抜をすると作品の方がもたない場合があるのでここも判断が難しいところです。シミ抜の薬剤は強いので傷みが酷いとボロボロになってしまうのです。もうこればっかりはケースバイケースです。作品ひとつひとつ状態が違うのでその都度表具師が確かめて確認しながら作業をどの程度行うか判断します。医療手術と一緒です。患者一人ひとり症状が違うのと同じで全てはオペを行う執刀医に委ねられるのと同じです。
「これ以上は無理!!作品がもたない!!」
という場合はシミ抜を止める判断もします。セーフティーファーストが肝心です。
修復 作業( 加筆 、 補筆 、 補彩)完了
さてさて、シミ抜も今回は無事に行う事が出来、修復作業も無事に終えることが出来ました。その後、作品の 修復作業( 加筆 、 補筆 、 補彩)を行いました。加筆作業は本当に少しずつ筆をいれていき、欠損箇所と周囲とのバランスをとりながら行うので非常に労力のかかる作業です。
加筆の様子の参考動画は下記になります。
修復した作品はこちらです。(まだ新しい屏風に貼り込む前の状態です。)全体の剥げの部分も色を均一にする事により自然な仕上がりになりました。これ本当に大変な作業でした・・・(泣)
仙人の衣も綺麗に修復出来ました。
仙人の目玉も修復し、作品全体に躍動感がよみがえりました。視線って作品の出来を左右する非常に重要な要素だと改めて感じますね。それを修復するのは本当に手が震える想いです。
仙人も鶴も松も綺麗に修復されました・・・。作品が活き活きしていますね。
全体の剥げも自然な形に修復し、鶴にきちんと焦点が行く様になりました。
唯一の風景画も実は細かい所が随分と剥げていましたが、修復後は人物の描写までしっかりと見る事が出来るようになりました。
作品六点とも相当に労力を割いての修復作業となりましたが作品全体は見違えるように変わったと感じております。修復方法は・・・もうケースバイケースです(笑)
「あ~でもない、こ~でもない」などと試行錯誤しながら完成させていくので時間が相当かかります。みんな一律のやり方で出来たら楽なんですけどそんな綺麗に傷んでくれるわけもないので・・・(泣)
さてっ! いよいよ作品を新しい屏風に貼り込みました。完成形はこちらです。
おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
自画自賛で申し訳ないですがこれはなかなかの出来栄え・・・
当然、依頼主のお客様も大変喜んでくださいました。
「サラと一緒です~~~!!! すごい!! ありがとうございました。匠の技ですねっ♪」
そう言われるとやっぱり悪い気はしません・・・(笑)こんなに喜んでいただけると苦労して修復した甲斐があるというものです。弊社は美術品の修復をこのような形で承っております。ご相談ございましたらご連絡下さい。
掛軸のシミ抜き作業についてより詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。