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掛軸の仕立替 : 床の間に 対で飾りたい ので高さを調整して欲しい | 淡路市
淡路市 のお客様より
今回は対で飾られていた掛軸の修復依頼のお仕事です。両方とも随分と傷んでおり、特に左の鱧(・・・かな?)の掛軸には左に大きな雨シミが出来てしまっています。
掛軸は地方・地域により飾り方も少しずつ異なっており、また個人の解釈や考え方などによっても少しずつ異なります。今回のお客様は再び 対で飾りたい らしく、並べて飾った時に掛軸の下の位置が同じに並ぶようにしてほしいとのご希望でした。上の写真は仕事を受ける前の床の間の様子。確かに掛軸の下端の位置は揃っていますね。
しかし・・・実はこの右の鯉の掛軸・・・元々は並べて飾る事などを想定していないので普通の裂地の取り分寸法で表具をしているものでした。いわゆる通常品です。それをお客様が並べて飾るのに下端を揃える為に無理やり掛軸の上部の部分(天と言います。)を折り畳んでセロテープで固定して寸法を調整してあったのです・・・(汗)なので風帯(ふうたい)と呼ばれる掛軸の上部からぶら下がっている帯の下端が作品にかぶさっているような状態になっているのです。後から無理やり長さを調整したのでこのような不細工な状態になってしまっています・・・(T。T)
今回はしっかりと仕立替をして長さも調整する形で表具の採寸も行います。
作品左側には大きな雨シミが段々に・・・。作品の折れやシワも多いですね。
下の写真が上述の鯉の掛軸・・・なんというか・・・掛軸の上部の所が残念ですね・・・(泣)
表装オペレーション
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
旧裏打紙を除去 (業界用語で「めくり」という作業) ↓
作品洗浄 (汚れ落としです。シミ抜までは必要ないという判断です)
↓
裂地採寸 (並べて飾った時に下端の位置が合うように採寸)
↓
裂地選定 (並べて飾るので同じ裂地にして欲しいとの要望。)
↓
再表具 (鱧の軸と同じような色合いの裂地で両方表具。)
さてさて、仕上がった作品はこちら。左側にあった段々のシミ汚れも洗浄で綺麗になりました。作品の折れやシワもなくなりました。左側にあった段々のシミ汚れも洗浄で綺麗になりました。作品の折れやシワもなくなりました。
鯉の掛軸もしっかりと寸法取りをしたら見違えましたね。裂地の色も鱧の掛軸と統一したのですが鯉の作品にも合っていますね。
本来なら作品寸法的には風帯のある大和表装にするのですがお客様の依頼により鱧の軸と同じ丸表装にしました。表装形式については下記リンク参照。
Before → Afterでわかりやすいようにもう一度画像を順番に見てみましょう。
納品
さてさて、お客様のお宅に納品に伺い、お床に並べて飾ってみました。ドキドキの瞬間です。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
思わずお客様からも歓声があがりました。並べて飾るとしっくりと以前よりも床の間に映えたので大変喜んでいただきました。表具の色も床の間の壁の色に合っていて良いですねぇ。お客様も楽しみに待っていらっしゃったみたいで本当に喜んでおられました。嬉しい限りです。お客様のご要望にひとつひとつ丁寧に応えていく仕事を大切にしていきたいです。
掛軸の修理修復工程をより詳しくご覧になられたい方は以下の動画で徹底解説しています。全4回に渡る長編の解説付の動画ですのでご興味ある方は是非ご覧ください。