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掛軸修理 作品の 剥離
弊社には様々な掛軸の修理依頼が全国から届きます。
今回は完全に作品が掛軸から剥がれ落ちている状態で届きました。(このパターンは結構珍しい。)
掛軸は糊を使い、和紙を作品の裏側から接着し補強します。この作業を裏打と呼び掛軸が出来上がるまでに3回の裏打が行われます。
糊は経年劣化で接着力が弱まっていき、徐々に裏打紙と作品が剥がれていきます。(もちろんすぐにではなく数十年の単位で)
掛軸を裏から見るとポコポコと裏打紙が浮いた状態が見られる場合は、糊の接着力が弱まってきている証拠なので掛軸の仕立替の時期の判断です。
その浮きをさらに放置しておくと写真のように完全に剥がれ落ちた状態になります。
ここまで糊の粘着力が弱っているので、思い切って作品全体を剥がしてみました。
上の写真だけ見ると掛軸って作品を貼り付ける台紙みたいなものが元々あってそこにただ貼り付けているだけのように思われるかもしれませんね・・・(汗)
実際そういった勘違いをされているお客様は結構多く、よく「掛軸のぐるりの台紙だけ売ってくれ」なんて事も言われます。
掛軸は一点一点作品にあわせて製作いたします!!
表装部分がそのまま残った状態で作品が剥がれるのは非常に珍しいケースです。
よっぽど糊の粘着力が弱まっていないとこうはいきません。
通常は表装部分から作品部分を切り離し、裏打紙をめくっていきます。
さて、剥離が偶発的に自然と行われていたので、それを新たに飾れるように表装しなおしました。
以前の表装裂地と似たような裂地でやり直して欲しいというご要望だったので緑色の似たような風合いの裂地で仕立替をいたしました。
お正月までの納期だったのですが年末の依頼だったので何とか納期に間に合わせました。
お客様の新年のお床を華やかに飾ってくれていることを願っております。
掛軸の修理修復工程をより詳しくご覧になられたい方は以下の動画で徹底解説しています。全4回に渡る長編の解説付の動画ですのでご興味ある方は是非ご覧ください。