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仏画・楊柳観音 掛軸表装依頼 | 赤穂市
赤穂市 のお客様より
日本画は画材の扱いが難しく、特に軸装にする為の作品は額装にする作品よりも制約が多いので書道などと比べると一般の方から軸装の依頼をされる事は少ないです。
そんな中、弊社のお客様で果敢に日本画の軸装作品にチャレンジし続けているお客様がいらっしゃいます。
定期的に作品を仕上げられ軸装の依頼をお世話させていただいているのですが、長いお付き合いをさせていただいているので徐々にそのお客様の日本画の技術が上達しているのがわかります。
お仕事をさせていただきながらもお客様の画力の上達を楽しみにさせていただいております。
さて、今回そんなお客様から依頼を受けましたのは仏画の「 楊柳観音 」です。
楊柳観音
観音(観世音菩薩)は仏教ではあまねく衆生を救うために相手に応じて33の姿に変身すると説かれており、楊柳観音はそのひとつの姿。
別名「薬王観音」とも言われており人々の病気を治す観音様と言われています。
上の写真が今回の軸装依頼されたお客様の作品です。やさしい色合いで描かれており、力のこもった素晴らしい作品ですね。
光背(こうはい)と言われる後光も金粉を使いとても綺麗に表現されています。輪郭を描かずにぼかして描くことで後光の輝いている様子を表現しているのが良いですね。
仏画の難しいところは何と言ってもその表情。リアルに描き過ぎてもいけませんし、抽象的に描き過ぎても間が抜けた感じになるのでそのバランスが非常に難しいです。
なかなか本作品はやさしい朗らかな表情であり、観音の慈悲深さが表現されていますね。
楊柳観音にはなくてはならない柳枝と水瓶。本作品のように右手に柳枝を持つ姿のほか,柳枝をかたわらの水瓶に差している図などもあるそうです。
衣装もまるで天女の羽衣を思わせるかのような柔らかな色彩で描かれています。
仏様の足元には付物の蓮華の花。
今回特に私がこの作品で気に入っているのが背景の虹色の表現です。幾重にもやさしく彩色されたこの虹色が作品全体に観音の神秘性を表現しているようです。
裂地選び
今回の軸装に使用する裂地選びです。
お客様からは全面的に任されているのでセンスを問われます。
画題、作品の風合いとの相性、全体的なまとまり、お客様の好み、飾る場所との相性、予算・・・様々な事を考えながら裂地を選んでいきます。
今回選んだ裂地はこちら。
外回しには木下金襴という名物裂を用いました。全体のやさしい雰囲気に合う金襴です。
中廻しには蓮の華をイメージした柄の金襴。木下金襴の内側を淡い紺色の裂地にすると両方引き立つ事が経験上多いです。
一文字は作品の虹色の背景とマッチングするような色合いの銀欄を用い、画面全体に広がりを感じさせるよう配慮いたしました。
表装完成
仕上がった作品がこちらです。全体にやわらかい色合いでまとめ、楊柳観音の慈悲深いやさしい雰囲気を大切にいたしました。
中廻しに薄い紺色の裂地を入れる事で引き締め効果もありメリハリがついています。
作品の虹色と一文字の色合いも上手くマッチしています。
納品
いつもこの納品の瞬間が一番緊張しますがお客様から「うわ~、よ~なったね~。いつも良い感じに仕上げてくれるから作品を持ってきてくれるのが楽しみなんですわ~。また次回え~作品を描こうって励みになります。」なんてお言葉を頂戴いたしましたら一気に吹っ飛びます。いつも 赤穂市 からご依頼下さり本当にありがとうございます。
お客様の次回の作品が仕上がるのが楽しみです。お客様の上達と同じく我々も表装の技術であったり感性、知識を磨いていかなければなりません。
長いお付き合いをさせていただいていますが、1点1点緊張感を持って表装の仕事にあたりたいと思います。
軸装相談は是非弊社までご相談下さい。
掛軸の歴史について知りたい方はこちらの動画をどうぞ