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掛軸の 加筆 ・ 補筆 ・ 補彩
掛軸の保管状況によっては作品が剥落(欠損)してしまっている場合があります。折れが原因で作品が割れてしまっている場合や、脆くなった作品が糊浮きを起こし剥落しているもの、虫食いにより穴が出来てしまったものなど原因は様々です。
今回お受けした掛軸も欠損状態の多い状態のものでした。
画面に白い横線や右側に白い欠落が見てとれます。画面全体が茶色なのは元々の地の色なので手を加える事はしません。
掛軸の折れから発生する破れが全体に広がっています。
右側の小さい複数の穴の原因は何かわかりませんでした。(虫食いではないと思うのですが…)
全体的に欠落が多く、このまま仕立替をすると画面の白い部分は新しい裏打紙を打ったとしてもその色が出てきてしまい不自然な状態となってしまいます。
そういった場合、裏打紙に筆を入れ周りの作品と欠損箇所とのバランスを取るようになじませます。
様々な呼び名がありますが 加筆 ・ 補筆 ・ 補彩 などと呼ばれる事が多いです。
細い筆で少しずつ欠損箇所を埋めていく繊細な作業になり、元の作品の風合いを損なうような過度な加筆は厳禁となる非常にデリケートで根気の要る作業となります。
作業の様子は下記の動画を参照して下さい。
加筆 ・ 補筆 ・ 補彩 完了
修復作業が完了し、仕立替を行った掛軸が下記になります。総丈が異様に長かった掛軸なので仕立替の際に通常の寸法に直しました。
全体の汚れも落ちたので風格のある古代色が出てきました。
横の大きな折れの部分も修復され、目立たなくなりました。
白い欠落部分があった以前の作品は、作品自体に集中する事が出来ませんでしたが修復をする事によって作品が浮き上がって見えるようになりました。作品に集中出来ますね。
加筆 する事により作品にまた新たな命が吹き込まれました。
お客様の下でまた末永くお飾りいただける事を心より願っております。
「たいせつなもの 未来へ…」
掛軸の修理修復工程をより詳しくご覧になられたい方は以下の動画で徹底解説しています。全4回に渡る長編の解説付の動画ですのでご興味ある方は是非ご覧ください。