ニュース/ブログ
汚れてシミが発生した 古い掛軸 の表装修理 | 姫路市林田町
長い間掛軸を使用されると様々な原因で汚れやシミが本紙に発生する場合があります。
年月と共に自然と変化した風合いは無理に元に戻す必要はないと思うのですが、作品を鑑賞するのに支障が出るくらいの不自然な汚れやシミは掛軸の仕立替の際に洗浄、シミ抜きをされた方が良いです。
作品にはお客様が思っている以上に汚れが付着している事が多いので表具師にしっかりと見てもらう事をお勧めいたします。
作品の汚れがどれくらい付着しているかはこちらの動画をご参照ください。元々無色透明だった洗浄液に作品の長年の汚れが吸収され濃い茶色に変色しているのを確認出来ます。
今回はそんな作品の洗浄、シミ抜きのご相談。お客様は兵庫県の 姫路市林田町 のお客様。早速お伺いしてまいりました。
兵庫県 姫路市林田町
今回ご訪問させていただいたのは姫路市の中でも自然が残るエリアの林田町。姫路市は範囲が広いので地域地域によって様々な表情が見れるのが楽しいですね。
今回ご相談いただいた鯉の掛軸。仏壇の横で飾られていた事も影響してか、線香の煤汚れのようなものも見受けられました。よく見ると小さなシミも発生してしまっているので仕立替に合わせて洗浄、シミ抜きも行うことにいたしました。
絹本に描かれた作品ですが、作品上部に無数の水疱瘡のようなシミと汚れが発生しています。
しっかりと描きこまれた二匹の遊鯉。作品は大変素晴らしいのにシミと汚れのせいで濁った川で泳いでいるように感じます。鯉自体の活き活きとした生命力が感じられません。
作品下部。うっすらと墨で描かれた草も汚れで画面に沈んでしまい、その存在を感じ取る事が出来ません。
表装オペレーション
今回の大まかな再表具のオペレーションの流れは以下です。
作品解体 (古い裂地や軸棒などを取り外していきます。)
↓
旧裏打紙を除去 (業界用語で「めくる」という作業)
↓
作品洗浄 (汚れ落とし)
↓
シミ抜き (洗浄では落ちないシミの除去)
↓
裂地選定
(今回は雅金襴という高価な裂地をお客様が希望)
↓
再表具
洗浄をすると先ほどご紹介した動画のようにやはり長年の汚れが付着していました。汚れが落ちたら作品の地色が綺麗になった為、作品に発生していたシミがより顕著に確認出来るようになりました。シミ抜きを行いそれらも目立たないようにさせていただき、再表具させていただきました。
仕立替前と仕立替後で作品の主題である鯉の浮き上がり方が全然違うのがお分かりいただけると思います。
お客様のご自宅に納品に伺うと
『本当に綺麗になりましたね。以前のはどこかドブ川のように濁った川の中を泳いでいるような印象でしたが、今は綺麗な川を悠々と泳いでいるように感じます。これほど変わるのなんですね〜(驚)』
と大変喜んでいただけました。
この度は掛軸のシミ抜きのご依頼ありがとうございました。
弊社は古い掛軸の洗浄やシミ抜も行なっておりますのでお困りの事がございましたら遠慮なしにご相談ください。
掛軸のシミ抜き作業についてより詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
掛軸の修理修復工程をより詳しくご覧になられたい方は以下の動画で徹底解説しています。全4回に渡る長編の解説付の動画ですのでご興味ある方は是非ご覧ください。