ニュース/ブログ
古い屏風 の修理・仕立替依頼 | 南あわじ市
南あわじ市
以前、淡路出身の近現代の日本画家としてチェックしておきたい作家として増田千代松の事をご紹介させて頂いた記事がありましたが、今回はそのお客様からあらたに 古い屏風 の仕立替のご依頼を受けました。
早速南あわじまでお伺いしお預かりしてまいりました。その 古い屏風 がこちら。
六曲一隻の屏風です。屏風の数え方については下記をご参照。
・屏風を折りたたんだ時の面を数える単位が「曲」
・屏風を数える単位が「隻」
・二隻一組の対(つい)になっている屏風を数える単位が「双」
(対になった屏風の片方を数える時は「半双」=「一隻」)
「六曲一双」は、六枚に折りたたむことのできる屏風2組を、
「六曲一隻」は、六枚に折りたたむことのできる屏風1組をさす。
お客様の親戚が昔、それぞれに書いた作品を一枚の屏風にしたものらしいです。一族を繋ぐひとつの道具と考えたら素晴らしいものですね。
この屏風の仕立替以外に作品に書いている内容を教えて欲しいという事でしたのでがんばってお調べさせて頂きました。
①仙雲擁壽山(せんうん じゅざんを ようす)
蘇軾(1036~1101)の『皇太后閣六首』
「瑞日明天仗、仙雲擁壽山。倚欄春晝永、金母在人間。」
瑞日、天仗に明かに、仙雲、寿山を擁す。欄に倚れば春昼永く、金母、人間に在り。
瑞日: めでたい日 / 天仗: 宮中の儀仗 / 倚欄: 欄干によりかかる / 春昼永: 春の日差しが麗らかで長閑であること / 金母: 中国で西の果てにいるとされた仙女で天帝の娘ともされる西王母のこと
②書
飛止利多徒三・・・ひとりたつみ
耳奈利奴止毛・・・になりぬとも
於本之堂天志・・・おぼしたてし
於也乃免久美越・・・おやのめぐみを
王須礼左良奈舞・・・わすれざらなむ(ん)
独り立つ身になりぬとも
思し立てし 親の恵みを 忘れざらなむ
③平安長春 萬物静観皆自得 四時佳興興人同
題:秋日偶成(しゅうじつぐうせい) 程明道(ていめいどう)
平安長春 萬物静観皆自得 四時佳興興人同
万物静観すれば皆自得 四時の佳興人と同じ
すべての物は、静かにみれば自ら悟っていて、人間と同様に四季の妙味を楽しんでいる。
④満堂佳気陽春
満堂佳気陽春
「暖かな春の季節になり、部屋中に快い気が満ち満ちています」という意味。
満堂=部屋いっぱい / 佳気=心地よい和やかな気 / 陽春=暖かな春の時節
⑤書
あさみとり すミわ多利たる
大空の ひろきを於の可
こころとも可那
あさ緑り澄みわたりたる大空の広きを己が心ともがな
(意味:浅緑に一面に澄み渡った大空のひろさを自分の心としたいものだ)
⑥陽気発処 金石亦透 精神一到 何事不成
陽気発処 金石亦透 精神一到 何事不成
『陽気の発する処、金石も亦た透る。精神一到、何事か成らざらん』
【意味】精神を集中して努力すれば、どんな難事でも出来ない事はない。
『朱子語類』の中の『陽気発処、金石亦透、精神一到、何事不成』から来ています。
こうやって作品6点を調べてみるとそれぞれの内容に深みがあって面白いですね。しかし随分と屏風も作品も汚れてしまっていますのでこれではせっかくのお宝が残念です。
作品を6枚それぞれ剥がし新しい屏風に仕立替をさせていただきました。新しくなった屏風がこちらです。
随分と作品の汚れも落とす事が出来ました。以前の屏風は裏側もボロボロでしたので新しく仕立替をして見違えるほどになりました。
南あわじ のお客様の元に納品にお伺いすると大変喜んで下さり、ちょうど近いうちに親族一同が集まる予定なのでその時にこれを見せて色々と親族の歴史について話してみようとお考えのようです。こういったお宝が残っているとそういう風に家族同士の交流も生まれ素晴らしいですね。
この度は弊社にご依頼いただきましてありがとうございました。
弊社は古い屏風の修理、仕立替も承っておりますので是非ご相談下さい。
古い屏風の仕立替の様子についてはこちらをご参照ください。