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「北斎漫画 浦上満コレクション」展 in 明石市立文化博物館 に行ってきました!
今回は2021年4月17日から兵庫県の明石市にある明石市立文化博物館で開催されている『北斎漫画 浦上コレクション』展を見に行ったレポートをさせていただきます。
北斎漫画というと江戸時代の天才浮世絵師・葛飾北斎の代表作で富嶽三十六景に並ぶ名作です。
以前、4回に分けて弊社のYouTubeチャンネル『掛軸塾』でご紹介させていただいたのもありとても関心が高まっていた折に、そんな北斎漫画を生で見れる、しかも弊社のある神戸市垂水区の隣町、明石市で見れるという魅惑的な条件によりよだれダラダラでお伺いしてまいりました。
内容のコアな部分はまだ見てない方にとってネタバレになるのでそこはある程度伏せながらご紹介させていただきます。
動画でもご紹介させていただいているのでこちらも宜しかったらご覧ください。
一部動画と被る部分もありますがそれ以外もこちらの記事ではご紹介させていただきます。
見所001: 圧倒的なコレクション量
今回の展示会は『世界一の北斎漫画コレクター』の呼び声高い浦上満さんの珠玉のコレクションが勢揃い!
浦上満さんはなんでも高校時代から集めた北斎漫画のコレクションの数は1500冊だとか…
スゲ〜(゚∀゚)
北斎漫画は1編から15編まで江戸末期から明治時代にかけての60年間くらいに渡って出版されたロングセラー作品なので全てを展示する事はスペース的に不可能なのですが、それでもかなりの量を展示してくれており見応え抜群の展示内容となっています。
会場では1階と2階の展示部屋に分かれており、1編から順番に見所の作品を抜粋する形で15編まで展示しています。
見所002: 間近で見られる感動
展示形態は1点1点額装になっている物が殆どでした。
わざわざ本をバラシて展示用に額装にしてくださった関係者の方の配慮に感謝です。
この額装になっている事によりとても近距離で作品を拝見する事が出来ます。
そう、もうね、文字通り嘗め回すように見る事が出来ます。。。というかしてましたww
北斎漫画は想像していたよりも小さい作品でした。(まぁ手に取って読むものなので漫画のコミックくらいの大きさですね。)
なのでその漫画サイズに描かれている作品はとても小さい物なので線の肥瘦や、太細のグラデーションなどをリアルに感じる事が出来ました。
これはとてつもない彫師の技術が必要なのだなというのを物凄く感じる事が出来ます。
その他にも、身近で見られるからこそ感じる作品が持つクオリティの高さも沢山ありました。
例えば雪の白の表現なども繊細でしたし、漫画のトーンのような色の使い分けも面白かったです。
上毛榛名山の雨の線の勢いは生で見ると全然違いました!!
エミール・ガレもそのデザインを流用した魚籃観世音はその鯉の鱗の表現の細かさはまさに神! 皆さんも是非リアルにご覧いただきたく思います。
見所003: コンディションの良さ
今回は浦上コレクションの中でも選りすぐりの状態の良い物を恐らくチョイスしてくださっているのだと思います。
浮世絵は最初に世の中にデビューさせる際に摺った物を「初版」「初摺り」などと呼び、数量限定です。
その後、売れ行きなどによりリピート摺りしたものを「重版」と呼びます。今の出版業界と同じですね。
この重版なのですが、浮世絵は版木と呼ばれる木を用いて摺るので使用し続けると木が摩耗してきて綺麗に摺れなくなってきます。
なので初版と比べると年代を追うごとにその再現率は低下していく形になります。
さらに言うと版元(総合プロデューサー)の意向などにより意図的に初摺りの表現を変えられる事もよくあります。
コストカットの為や売れ行き拡大の為に、意図的に色が変えられたり構図が変えられたりというのもよくあります。
今回の展示ではそういった初摺りから重版を重ねるごとに変化する浮世絵の展示もあり、とても面白かったのですが、今回の浦上コレクションはおそらくかなりコンディションの良い物を展示してくださっているのだと思います。
小さな細かい表現なども消えずに残っているのを見ると版が摩耗していない初期の摺りに近い物なのではないかなと思います。
なので今回の展示品を生で見る事にとても価値があるのです。
ネットなどで落ちている画像よりもとてもリアルに作品の細かさを感じ取ることが出来ます。
見所004: 詳しい解説
作品だけを見ていても理解できない内容は山ほどあります。
私も北斎漫画は全て1度は全部読んでいるのですが内容がよくわからず絵だけを見ている物も沢山ありました。
(それはそれでも十分に楽しまるのですが…)
今回は解説にも力を入れて下さっており、随分と今まで不明だった作品の内容を切り込んで紹介してくださっております。
例えば3編の船幽霊は解説が無かったら幽霊の存在にすら気が付いていませんでした。そしてその背景のエピソードなどとても面白かったです。
個人的に大好きな12編はパロディ特集なのですが、北斎のちょっとした悪ふざけも色々垣間見れて思わず会場で笑ってしまう程でした。
「お供はつらいよ」は「あ~~~~!何となくわかる~~~!!」みたいな気持ちになってしまいます。
見所005: 彫り師
見所002でも触れましたが、この北斎漫画で際立つのは彫師の力量。
浮世絵版画という物は総合プロデューサーの版元が頂点に立ち、絵師、彫師、摺師の3役が密接に関わって生まれます。
どうしても絵師の作品として名前が出てしまいますが、その裏方には様々な職人の尽力があって生まれるのですね~。
今回はそんな彫師について解説している作品もございました。
北斎が推していた彫師の解説が全会場約200点の作品中1点のみあります。
皆さんも是非探してみてください。
見所006: 年表
さんざん見所をお伝えしてまいりましたが、実は個人的に一番楽しかった、収穫があったという展示内容は北斎に関する年表だったのです。(関係者の方、すみません。)
北斎が生まれてから亡くなるまでの出来事一覧なんですが、結構盲点になりがちな部分を綺麗に取り上げて下さっており、
「ほ~ほ~、この時期はこれとこれがつながるのか~。という事は後のこれはこうだったに違いない。」
みたいな点と点が線とつながる興奮が何度も何度も脳を襲い、恐らく30分くらいはその年表前で立ち尽くしていたと思います。(#邪魔だよ)
撮影は禁止なので必死でスマホでメモしてました。(#変質者か!?)
私のように少しマニアックな方にはあの年表はかぶりつきになる存在だと思いますので是非ご覧ください。
総括
以上、見所を思いついたまま書き出してみました。
もちろんこれ以外にも盛り上がりたいポイントは山ほどあります。(#誰と盛り上がんだよ!)
ですが、それはお伝えするのではなく是非皆様にも会場に足をお運びいただき実際に感じ取っていただきたく思います。
とても魅力あふれる楽しい展示内容に大満足でした。
企画に携わってくださった関係者の皆様、本当にありがとうございました。
次回も楽しい企画を期待しております。
北斎漫画展の予習に
美術の展示会は予習をしているとその楽しみが何倍にも膨れ上がります。
以前、北斎漫画に関する解説をダイジェスト動画でご紹介させていただきましたので宜しかったら予習にお役立てください。
今回の展示会にもこの動画でご紹介させていただいている作品がかなりの数で出品されておりますのできっと楽しめると思います。