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伊藤若冲・晩年の傑作「仙人掌群鶏図」の特別公開レポ
伊藤若冲は今、世界で最も人気のある日本の絵師の一人と言っても過言ではない江戸時代中期に活躍した絵師。
2021年には代表作である動植綵絵シリーズ30点が全て国宝になるなどその人気はとどまる事を知りません。
そんな伊藤若冲の晩年の代表作である「仙人掌群鶏図」という襖絵が大阪府豊中市の西福寺にあります。
こちらの作品は文化の日(11月3日)に晴れていたら、年に一度だけ虫干しを兼ねて一般公開されます。(雨天中止)
2022年11月3日は快晴でしたので、見に行ってきましたので今回はそのレポをさせていただきます。
仙人掌群鶏図について
描かれた経緯
仙人掌群鶏図が描かれる事になった経緯は1788年に京都で発生した「天明の大火」にさかのぼります。
この火災は京都史上最大規模の火災でなんと京都市街の8割以上が灰燼に帰してしまったそうです。
当然、伊藤若冲の自宅もアトリエも焼けてしまい大ピンチだったのですが、そこで若冲に救いの手を差し伸べたのが木村蒹葭堂をはじめとする若冲と交流のあった大阪の文化人達でした。
若冲は大阪にしばらく滞在する形になりました。
そこで若冲の支援者の一人であり、薬問屋を営む吉野五運が西福寺の有力な檀家であった為、若冲を支援する目的で吉野五運が若冲に西福寺の襖絵製作の依頼をしたのではないかと考えられています。
何故仙人掌が描かれているのか?
伊藤若冲が西福寺に襖絵を描くきっかけとなったであろう吉野五運は変わった物を集めるのが趣味のコレクターだったようで恐らく仙人掌もその収集物の一つ。
それを作品の中に若冲がモチーフとして描いたと考えられています。
一度は忘れ去られていた仙人掌群鶏図
仙人掌群鶏図襖は若冲が没した1800年から時代が進むごとに徐々にその存在は世間から忘れ去られていってしまいました。
それが新たに脚光を浴びたのは1926年。日本画家でありながら伊藤若冲の熱烈なファンでもあった石崎光瑤が研究の中で再発見したのがきっかけです。
それまでまだあまり研究の対象として考えられていなかった伊藤若冲がこれを契機に徐々に研究されるようになりました。
西福寺の基本情報
住所
〒561-0813 大阪府豊中市小曽根1丁目6-38
TEL
06-6332-9669
アクセス
阪急宝塚本線「服部天神駅」から徒歩約15分
実はこの仙人掌群鶏図の年一回の特別公開の情報はあまり一般には知られていないんです。
何故かと言うとこの西福寺にはHPがなく、SNSもないので行かれた方のブログや本などでしかその情報を知る事が出来ないからです。
それでも2016年は伊藤若冲の生誕300年にあたる年で、大型な展覧会が東京で行われたりTVで特集番組があったりという影響もあり、この年の西福寺の特別公開は通常では考えられない1時間半待ちくらいの行列が出来たらしいです。
徐々に情報が広がっているのがよくわかるエピソードですね。
入口
例年は山門が入口だったのですが今年は裏口の駐車場が入口でした。
看板が道中にありますのでその通りに進めばたどり着けます。
当日は駐車場は使えないのでお車でお越しの方は近くのコインパーキングなどを利用する必要があります。
西福寺近辺は都会なのでわりと近くに駐車場は複数あるので便利です。
混み具合
朝の10時からのオープンだったのですが既に列を成している状況でした。
伊藤若冲人気がうかがいしれますね。
作品がある本堂には数人ずつ順番に入る形でしたので10時に並んで本堂に入れたのは10時40分くらいでした。
拝観料
こういったお寺の特別拝観は1000円~2000円くらいの拝観料が通常でそれは正当な料金だと思うのですがなんと無料でした。感謝。
感想
作品を1m程の距離で見る事が出来るので若冲の細かい筆遣いなどもしっかりと確認する事が出来ます。
伊藤若冲が使う絵具は大変高価な物を使用していた為、200年の時が経ってもその色は鮮明。
若冲には珍しい金箔の上に描かれた作品ですが、その金箔の眩い光と絵具の強い発色が互いに引き立てあう魅力的な作品です。
注意点
2020年、2021年はコロナの影響で中止だったようなので2022年は3年ぶりの公開だったそうです。
私は去年、一昨年の中止の事は知らなかったのでたまたま見に行こうと思った今年が開催で運が良かったです。
HPやSNSがないので来年以降、開催されるかどうかは直接お電話などで確認されるのが良いのかもしれませんね。
くれぐれ作品の虫干しの為の一般公開なので雨天中止になるのをお気を付けくださいませ。