【美術ニュース】2022年指定の重要文化財絵画、『重要文化財の秘密』展、円山応挙の魅力など

 

 

2022年指定の主な重要文化財絵画

2022年にも多くの美術工芸品が国宝や重要文化財の指定を受けました。

その中から絵画でチェックしておきたい作品をご紹介させていただきます。

 

雲谷派


2022年でまず注目したいのは雲谷派の絵師のまとめ重要文化財指定です。その数なんと4点!!

雲谷派は桃山画壇四大巨匠の1人、雲谷等顔から始まり江戸時代末期まで続いた中国、北九州地方を中心に活躍した画派。

初代の雲谷等顔は毛利輝元に仕え、雪舟画の再興を命じられ雲谷派を興し、自身を「雪舟三代」と称しました。

2023年以降は雲谷派にスポットが当たった展覧会に注目ですね。

 

雲谷等顔「惟松円融像」


 

雲谷等顔「惟松円融」

雲谷等顔「惟松円融」

桃山画壇四大巨匠の1人・雲谷等顔の作。(他は狩野永徳、長谷川等伯、海北友松)

 

雲谷等益「雪舟等楊像」


 

雲谷等益「雪舟等楊像」

雲谷等益「雪舟等楊像」

雲谷等益は雲谷等顔の子。萩藩の絵師。1626年、法橋を得る。「雪舟四代」を名乗る。

雲谷派を組織工房化した功績のおかげで幕末まで雲谷派は続いたとも言われている。

 

雲谷等益「淡彩四季山水」(雪舟作副本)


 

雲谷等与「雪舟等楊像」


 

雲谷等与「雪舟等楊像」

雲谷等与「雪舟等楊像」

 

雲谷等益の長男。萩藩絵師。「雪舟5代」を称した。

 

 

鏑木清方「築地明石町・新富町・浜町河岸」


 

 

2022年上半期の主役と言っても過言ではなかったのが「没後50年 鏑木清方展」。

それほど「没後50年 鏑木清方展」のインパクトは凄かった。

そんな鏑木清方の幻の三部作が堂々の重要文化財入り。

こちらの3部作は1975年に行方が分からなくなってしまっていたのが2019年に発見された幻の三部作。(44年間行方不明だった(;^_^A)

こちらの作品は今後も展示の機会が増えそうですね。

鏑木清方に関してはこちらに動画をまとめておりますので良かったらご参照ください。

 

 

伊藤若冲「山水図」


 

伊藤若冲「山水図」

伊藤若冲「山水図」

大阪府豊中市にある西福寺に伝わる伊藤若冲の「山水図」。

こちらは天明の大火の後、大阪の文化人を頼った伊藤若冲が一時大阪に滞在した際に描いた西福寺の一連の作品の一つとして、先に指定されていた仙人掌群鶏図、蓮池図に加えての重要文化財入り。若冲にしては珍しい水墨山水画。

毎年、11月3日の文化の日が晴れていたら虫干しの為に公開される仙人掌群鶏図襖を昨年見てまいりましたので宜しければそちらのレポ動画もどうぞ。

 

 

「鳥獣人物戯画 丁巻断簡」


 

「鳥獣人物戯画 甲巻断簡」


 

 

4巻ある鳥獣戯画絵巻の断簡が重要文化財の扱いになりました。

本体はいまだ謎が多いパニック国宝ですが、この謎もまたロマンで今後の研究が楽しみですね。

何がパニックかにつきましては以前鳥獣戯画についてまとめておりますのでそちらをご参照ください。

 

 

『重要文化財の秘密』展の名作続々

今年注目の展覧会の一つが東京国立近代美術館で行われる「重要文化財の秘密」展。

何が注目かというと明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品のみによる豪華な展覧会 = 展示品全てが重要文化財。

その数なんと51点(明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財は68点。75%)

3月からなのでまだその出品リストの全容は発表されていませんが、気になる名作の出品情報が出ているのでご紹介させていただきます。

 

 

狩野芳崖「悲母観音」


「近代日本画の金字塔」とも言われる狩野芳崖の「悲母観音」。

明治時代になり苦境に立たされていた日本の絵師達が西洋画の技法や材料を取り入れながら生み出した新しい日本画を象徴する作品。

狩野芳崖「悲母観音」

狩野芳崖「悲母観音」

 

狩野派ラストジェネレーションの狩野芳崖は陶磁器の下絵を描くなどで糊口をしのぐ極貧生活の中、お雇い外国人に発掘され新しい日本画へと挑戦していくのが亡くなる7年ほど前から。

その最後の集大成がこの作品で、この赤子は狩野芳崖の初孫とも。また奥さんもこの作品の製作中に亡くしており、自身もこの作品が絶筆となった。

本作品の最後の仕上げである金砂子の蒔き付けを託されたのが同門でありライバルであり盟友でありその後の日本美術の中で最も重要な役割を果たす一人である橋本雅邦という運命的な作品も出品されます。

 

 

鏑木清方「築地明石町」「新富町」「浜町河岸」


先ほど紹介した2022年に重要文化財になったなり立てホヤホヤの鏑木清方の三部作。

こちらも去年に引き続き今年も東京で見る事が出来る希少な機会なので去年見逃した方は是非。

「浜町河岸」「築地明石町」「新富町」

「浜町河岸」「築地明石町」「新富町」

 

 

上村松園「母子」


美人画の大家として有名な上村松園の代表作の一つ。

母親から子供に向ける無償の愛をテーマに描いた作品は当時の美人画の画題としては珍しく、最愛の母を亡くした上村松園が追慕の意味を込めて描いた作品でもある。

まさに上村松園にしか描けなかった作品と言えます。

上村松園 母子

母子

 

 

横山大観「生々流転」


日本美術史上、最長の巻物作品。その長さはなんと約40m。

近代日本画壇の巨匠と呼ばれる横山大観の畢生の大作であり代表作の一つでもある。

水墨の風景画ですが、何を思って大観が描いたのかというのに本人の言葉があるのでご紹介させていただきます。

「葉末に結ぶ一滴の水が、後から後からと集まって、瀬となり淵となり、大河となり湖水となり、最期に海に入って、竜巻となって天に上る。それが人生であろうと思って、『生々流転』を画いた」

人の生涯を水の一生に例えて描いた詩情溢れる本作品をお見逃しなく。

横山大観「生々流転」

横山大観「生々流転」

 

 

奇想の絵師の生みの親・辻惟雄氏が円山応挙の魅力を語る

いまでこそ世界的に大人気の絵師・伊藤若冲ですが一昔前はそれほど評価は高くありませんでした。

その人気の火付け役となったのが美術史学者である辻惟雄氏。

著書「奇想の系譜」で若冲をはじめとする曾我蕭白や長澤芦雪、歌川国芳などを取り上げ日本美術史に大きな影響を与えました。

しかしその陰でそれまで圧倒的な人気を誇っていた絵師・円山応挙の存在感がめっきり薄くなってしまったという…。

これは私も実体験で感じます。

円山応挙は江戸時代中期の京都で活躍した天才絵師で京都画壇のキングと言えるほどの人気を誇っていた絵師なので以前、Youtubeで取り上げた特集動画を作ったことがあるのですが、これが思ったほど反応が良くなかったんですね。

辻先生曰く、「ちょっと薬が効き過ぎましたかね・・・」との事ですww

そんな辻先生が応挙人気復活の為に特別取材に答えた記事がありましたのでご紹介させていただきます。

 

色々と応挙に関してご解説いただいている記事は読みごたえばっちりですので是非皆様にも読んでいただきたいのですが、その中でおっしゃられていたのは「応挙芸術の真髄は現地で見てこそ理解できる」という内容でした。

ちょうど2022年の秋から2023年の3月15日まで「応挙寺」とも呼ばれる兵庫県香住にある大乗寺で13年ぶりに現物の応挙の襖絵が特別公開されているので2022年の12月に現地に美術レポで行ってまいりました。

<写真>

 

辻先生がおっしゃられる通り、実際の和室に襖が設置された状態で空間としてみると応挙のバカテクがはっきりと理解出来ました。

襖の開け閉めの構造も計算された構図や時間によって変わる日の光によって見え方が変わる事も計算されたイリュージョン、絵を見る場所によっても変化する不思議な構図などまさに空間と共に体験する芸術作品と言うのが良く分かりました。

そして複製画ではないにも関わらず現物の保存状態が恐ろしい程きれいというのも驚きでした。

応挙芸術の魅力を堪能したい方は是非この機会に大乗寺へ。

 

足立美術館、20年連続1位 米誌の日本庭園ランキング

島根県が誇る名美術館である「足立美術館」。

質量ともに日本一を誇る横山大観コレクションが特に有名ですが、実は庭園の評価が圧倒的NO. 1でも有名。

 

そして2022年12月15日、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」が選ぶ2022年の日本庭園ランキングでも見事に1位になりました!!

なんとこれで20年連続1位の不動の存在。

「庭そのものの質の高さ」「建物との調和」「利用者への対応」などが総合的に判断されたもので、とくに細部まで行き届いた維持管理が評価されているそうです。

なんでも専属の庭師らが手入れし、職員総出で毎朝庭掃除する習慣があるそうです( ゚Д゚)スゲー

美術鑑賞と併せて一度は見てみたい日本庭園ですね。

 

大徳寺聚光院で狩野永徳の襖絵特別公開

安土桃山時代に活躍した狩野は随一の天才絵師・狩野永徳の代表作である襖絵が京都・大徳寺塔頭の聚光院で特別公開されています。

普段は複製画が展示されており、現物は京都国立博物館に寄託されているのが5年ぶりに里帰り公開されています。

期間は2022年9月3日(土)~2023年3月26日(日)

狩野永徳の作品は現存している物が少ないので是非この機会にご堪能下さい。

 

 

CEO Message

あなたと掛軸との懸け橋になりたい


掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



代表取締役社長
野村 辰二

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会社概要

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商号
株式会社野村美術
代表取締役
野村辰二
本社
〒655-0021
兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
TEL
078-709-6688
FAX
078-705-0172
創業
1973年
設立
1992年
資本金
1,000万円

事業内容

  • 掛軸製造全国卸販売
  • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
  • 掛軸表装・額装の全国対応
  • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
  • 宣伝広告業務
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