「大阪の日本画」展 前期のレビュー

 

2023年1月21日からスタートした注目の美術展覧会「大坂の日本画」を見てまいりました。

以下に気になった作品のレビューをまとめましたのでご参照ください。

 

目次

 

2  北野恒富 観音 1幅 明治後期~昭和初期

美人画の印象が強い北野恒富のまさかの仏画に驚き…しかもめっちゃ上手いし(;´Д`)

衣装や右手前に描かれた壺の細やかな描写の凄さも去ることながら表情…特に目が秀逸でした。

仏画は目が一番大切でここが悪いとどっちらける。

人っぽ過ぎてもありがたみないしギャンギャンに神っぽさ出されても下品。

この微妙な丁度良い塩梅をしっかりと心得ているのはさすが美人画の大家と感じさせる逸品でした。

 

5  北野恒富 風 2曲1隻 大正6年(1917) 広島県立美術館

北野恒富 風

北野恒富 風

 

展示会場一発目を飾るこちらの作品に衝撃を受けました。

正直、パンフレットの小さい画像を見た時はあまりピンと来ていませんでしたが会場でキャプション見て内容を理解したら一気に引き込まれました。

これは「日本版マリリンモンローの図」です。

タイトルの「風」にあるように、風が吹いて女性の着物がはだけてふくらはぎがチラっと見えてしまっている。

それを必死に手で押さえながらも「もうっ!」とちょっと困った顔をしている女性。

ついつい見てしまう男心を見透かすように流し目でこちらを見るように描かれた女性の瞳。

女性の目を見た瞬間「ギクッ!」となった男性も多いのではないでしょうか?

そんな微妙な仕掛けを男性である北野恒富が計算して描いたと考えると、なるほど、さすが「画壇の悪魔派」と呼ばれただけの事はあるなと感じました。

単に見た目に美しい女性を描くのではなく、内面からにじみ出るような微妙な心理などをも描写で表現した恒富らしい作品でした。

 

9  北野恒富 紅葉狩 6曲1双 大正7年(1918) 大阪中之島美術館

北野恒富が初めて描いた六曲屏風の作品。

金で描かれた紅葉がなかなかに装飾的で美しい。琳派を感じさせます。

琳派=「豊かな装飾性」⇒デザインチックと置き換えると理解しやすいです。

「The 絵」的な表現ではなく、イラストや模様、意匠などのデザインチックな表現が琳派でまさにこの作品の紅葉は琳派的。

左隻に描かれた女性の指がほんの少しだけ赤みを帯びているのが印象的でした。

 

13  北野恒富 涼み 1幅 大正15年(1926) 大阪中之島美術館

背景に薄暗いグレーのグラデーションを人物に向かって用いてそのピークポイントを白い胡粉で描かれた女性の衣服に持ってくることによりほわっとした柔らかさと透明感と空気感を感じさせる。

葉っぱのさりげなさがポエミックで良い。

 

15  北野恒富 宝恵籠 1面 昭和6年(1931)頃 大阪府立中之島図書館

北野恒富 宝恵籠

北野恒富 宝恵籠

本展覧会のパンフの表紙を飾った作品で鮮烈な赤が印象的。

宝恵駕籠は1月10日の十日えびすに行われる駕籠行列のイベント。

芸妓を乗せた駕籠が町を練り歩きます。

描かれている女性は芸妓になる前の舞妓、うっすらピンク色に描かれた梅柄の着物が舞妓のかわいらしさを引き立てています。

表情からは緊張感が伝わってきますね。もしかしたら宝恵駕籠デビューなのかもしれません。

髪の毛に若干赤毛が混じっています…何故? オシャレ? ぐれてる?

この作品の注目ポイントは首元の胡粉で描かれた菱形紋様のものすごい細いタッチ。

北野恒富の着物の柄の描写へのこだわりを感じる事が出来ます。

 

17  北野恒富 五月雨 1面 昭和13年(1938) 大阪中之島美術館

雨の中、鯉を見る女性。

細かく描かれた色とりどりの着物の紋様が印象的。

 

18  北野恒富 真葛庵之蓮月 1面 昭和17年(1942) 京都市美術館

蓮月の目が悲しすぎる…( ノД`)シクシク…

壮絶な人生を歩んだ蓮月感が出てます。

 

20  小林柯白 道頓堀の夜 1幅 大正10年(1921) 大阪中之島美術館

小林柯白 道頓堀の夜

小林柯白 道頓堀の夜

 

夜の道頓堀を描いた作品。

当時の大阪名物であった牡蠣料理を食べさせる牡蠣舟が手前に、奥には芝居茶屋、さらにその奥に櫓と芝居小屋が描かれており、大阪情緒を感じさせます。

この作品のなにより印象的なのは賑やかな大阪の夜の様子を敢えて建物の外の暗い様子で描き、そこから漏れ出る灯を対照的に描く事でその賑やかさを暗示している表現。

この表現には正直度肝を抜かれました。

明治時代になり光を表現した作品は葛飾北斎の娘・葛飾応為の作品や「光線画」の浮世絵師・小林清親の作品で確認されますが、その表現を倍加させたような印象。

特に川面の光に照らされた波の表現の描写は特筆に値する。

葛飾応為「吉原格子先之図」

葛飾応為「吉原格子先之図」

 

小林清親「両国花火之図」

小林清親「両国花火之図」

 

21  木谷千種 芳澤あやめ 1面 大正7年(1918) 個人蔵(大阪中之島美術館寄託)

なかなかパワーがこもった女方の歌舞伎役者。

めっちゃ台本読み込んでますやん(;´Д`)

 

23  難波春秋 嫁ぐ日 1面 大正13年(1924) 大阪中之島美術館

眉剃りの際の女性の目の表現がスゴイ。

この微妙な表現を良く切り取って描いたな~と感心しました。

右のお婆ちゃんは心配そうなのか暇なのかはわからないアンニュイな表情がまた面白い。

 

24  島成園 舞妓之図 1幅 大正5年(1916)頃  個人蔵(大阪中之島美術館寄託)

まだあどけない女性の笑顔は流石の観察眼。

髪の毛の独特なウェット感は島成園特有の表現でここに島成園の色気を感じる。

他の点についてはわざわざ取り上げる必要がない程の流石のクオリティ。

 

28  中村貞以 失題 1面 大正10年(1921) 大阪中之島美術館

これもパンフレットで見た時は全くその良さが伝わってこなかった作品で

「何故こんな作品をわざわざパンフレットの推し作品に選んだんだろう…中村貞以ならもっと良い作品があっただろうに…」

と思っていたのを180度覆してくれた衝撃の作品でした。

見終えた後は

「これ載せなあかん奴やな」

と納得させられました。

まずこの作品はかなり大きく、パンフレットでは伝わらない独特の丸みを帯びた立体感があり、妙に艶めかしい。

それはパンフレットのように正面から見ただけよりも現物を斜めや横から見てより感じ取ることが出来るもので実にいろいろな表情を見せてくれました。

最初、パンフだけで見た印象は「お化けみたい」でしたが、実際は瞳の表情にも艶やかさがあって心惹かれます。

中村貞以は幼い時に両手を大火傷した為に指の自由が利かなかったので、「合掌描き」で作品を描いたと言いますがこんな細かい描写を良くそんなスタイルで描いたな~と作品を見る度にいつも思います。

ずっと緊張しっぱなしの状態で描いている感じを想像するとこちらのが肩凝りしそうですね。

着物の蝙蝠の柄が独特のセンス。

長い線を引く際は短い線をつないで引いたらしいですがひねり技が一切ないガチ戦法で集中力がエグいです( ゚Д゚)

横山大観に手の事を励まされ感銘を受け、そこからずっと大観の事をリスペクトしていたとか…さすが大観、懐の深い人間だぜ!

 

35  菅楯彦 舞楽青海波  6曲1双 大正6年(1917) 倉吉博物館

菅楯彦 舞楽青海波

菅楯彦 舞楽青海波

 

舞楽の演目である「青海波」を描いた作品。

菅楯彦は努力の研究家として有名ですが、なんと有職故実勉強の為に舞楽も自身で習っていたそうです。

本作品はそういった研究の結晶として描かれた作品。

力強い色彩が印象的ですが、それよりもなによりもこの作品で注目したいのは線。

極太ペンでゆっくりねっとり一定の力とスピードで引いたような太く力強い線で全体を描いている事で作品に圧倒的存在感を生み出しています。

よく太い筆に墨を大量につけて一気呵成にビシャ~~~~~って描いた太い線は見かけますが、こんな一定の力とスピードでゆっくりじっくりと引いた線はなかなか印象的で思わず二度見してしまった作品。

 

39  菅楯彦 職業婦人絵巻 1巻 大正10年(1921) 関西大学博物館

当時の働く女性を描いた作品。

ウェイトレス、電話交換手、美容師、看護婦、事務員など比較的新しかった職業につく人々の姿が多く見られます。

大正時代は女性進出の時代だったのをよく象徴しています。

青海波の作品とは違い、肩の力を抜いてリラックスして描いた描写が見ていて楽しい。

挿絵的な印象を受ける作品。

 

40  菅楯彦 浪華三大橋緞帳1幕 昭和32年(1957)頃  株式会社大阪美術倶楽部

菅楯彦 浪華三大橋緞帳

菅楯彦 浪華三大橋緞帳

大阪市中央区にある大阪美術倶楽部の舞台緞帳に今も使われている菅楯彦が自ら手描きした緞帳。

倶楽部以外では初公開らしい。(‘ω’)ノヤター

左から京橋、天満橋、天神橋、難波橋、栴檀木橋が描かれているが中心は天満・天神・難波の三大橋。

 

41  菅楯彦 浪華三大橋緞帳下絵 1面 昭和32年(1957)頃  株式会社大阪美術倶楽部

40の下絵。

 

44  菅楯彦 毘盧遮那の御手 1幅 昭和9年(1934) 鳥取県立博物館

奈良の大仏の手だけが描かれている作品。構図が独特。

 

45  菅楯彦 赤日浪速人 1面 昭和30年(1955) 大阪中之島美術館

明るくめでたさ極まりない一作。

夕日がど真ん中にズドーンっと描かれ金で描かれた橋などとの画面の中での主張合戦が楽しい。

下部に描かれた祭りの様子の勢いもさらに本作品に楽しさを加えている。

 

46  菅楯彦 阪都四つ橋 1幅 昭和21年(1946) 鳥取県立博物館

菅楯彦 阪都四つ橋

菅楯彦 阪都四つ橋

大阪の四ツ橋の風景を描いた菅楯彦の作品。

今は埋め立てられていますが昔は川が交錯する地点に四つの橋がかけられていて風光明媚な場所だったそうです。

ただ、大正松から昭和初期にかけて近代的な橋に掛け替えられてしまいました。

心を傷めた菅楯彦が江戸時代の風俗の姿を借りて絵に残したのが本作品。

賑やかな大阪の街の様子が伝わってきます。

谷崎潤一郎をして「You are No.1 Osaka Lover!」と言わしめた菅楯彦の大阪愛が伝わってくるような作品。

左に描かれた人のシルエット描写は菅楯彦がよく用いた表現で作品に叙情性を加えている。

 

49  菅楯彦 高津宮秋景 1幅 昭和30年(1955) 大阪歴史博物館

夜の風景。

人々をシルエットで描く事で夜感を感じさせている菅楯彦らしい表現。

 

51  生田花朝 だいがく 1面 昭和時代大阪府立中之島図書館

台楽(台額)は高さ約20mの柱に提灯を70個程つけた大きく平たい櫓の事で生根神社の夏祭りに登場する。

台楽自体が珍しい事もあり独特の構図で描かれています。

真ん中ズドーン!の台額の迫力とその下に人の賑やかな様子が描かれている面白い作品。

やっぱり生田花朝は青色の表現が綺麗。

 

54  生田花朝 浪速天神祭 1幅 昭和時代大阪城天守閣

生田花朝が1926年に帝展に出品した『浪花天神祭』が女性初の特選だった。(現在、作品は行方不明)

こちらは同じ画題の兄弟作。

人物のイキイキとした描写が祭りの雰囲気を伝えている。

神輿の描写はさすがに細かい。

 

55  生田花朝 天神祭 1面 昭和10年(1935)頃  大阪府立中之島図書館

 

56  内田稲葉 浪速天神祭船渡御之図 1面 昭和48年(1973)

内田稲葉は菅楯彦門下だったが、京都の土田麦僊に鞍替えしようとし、内定をもらったにも関わらず菅楯彦にびびって退職願を提出できず、結局居残ってしまった弟子。

本作品は天神祭りを描いた作品。

本展覧会では非常に数多くの展示祭りの作品展示がある事から当時、相当に天神祭りが一般に人気で、その様子を描くよう画家が依頼を受けた事がよくわかります。

ご当地風景や風俗を好む地域というのは日本全国に多少ありますが、大阪も当てはまり、その代表画題が天神祭りだったのでしょう。

天神祭りの作品の中で一番目を引いたのはこの内田稲葉の作品。

細かい人物描写と全体の細かな金砂子が花火の光を表し、祭りの明るさや賑やかさも伝えている。

画面中央のかがり火や画面上部の花火の白い煙の描写が秀逸で新しい。

 

57  生田花朝 泉州脇の浜 1面 昭和11年(1936) 個人蔵(大阪中之島美術館寄託)

貝塚市の泉州脇浜あたりを描いた横幅約3mを超える壮大なパノラマ作品。

生田花朝はこの近くの盆踊りを描こうと取材に行きましたが、祭りも衣装も一新されると知り、なるべく大阪の昔ながらの情緒を描く事を大切にしていた生田花朝はがっかりして断念して代わりにこの浜辺を描く事にしたそうです。(しゃ~なしで描かれた作品なんや( ゚Д゚))

細かい人物描写で丁寧に描き分けをしていて洛中洛外図屏風のような楽しみがあります。

やはり生田花朝は青が綺麗。遠近法をしっかりと取り入れたこの構図が新鮮。

生田花朝の力量の高さをうかがい知ることが出来ます。

 

58  矢野橋村 湖山清暁 6曲1双 大正2年(1913) 個人蔵(愛媛県美術館寄託)

第7回文展出品作。褒状ゲットの初期作。中国絵画風。こういった画風を時代を重ねて日本風の風景に変化させていった。

岩場の力強さや近景の叢の表現も丁寧に描かれていて、いわゆる「つくね芋山水」と揶揄されていた頃の南画とは一線を画しているのも興味深い。

六曲一双を横のパノラマ風景に使用した構図も斬新。

 

59  矢野橋村 湖山幽嵒 1幅 大正4年(1915) 大阪中之島美術館

実際に中国に取材にいった風景。オーソドックスな南画。

 

60  矢野橋村 前赤壁図・後赤壁図2幅大正4年(1915) 大阪歴史博物館

オーソドックスな南画スタイル。こういう基礎があっての新南画と考えると感慨深い。

 

62  矢野橋村 柳蔭書堂図 1幅 大正8年(1919) 愛媛県美術館

柳の葉の表現が孔雀が羽を広げたみたいで面白い。
近景のみを描いた構図も面白い。

 

65  矢野橋村 那智奉拝 1面 昭和18年(1943) 大阪市立美術館

矢野橋村 那智奉拝

矢野橋村 那智奉拝

圧倒的な迫力に飲み込まれるスゴイ作品。

これもパンフレットの小さい画像では絶対に魅力が伝わらない作品。実物を見ないと意味がない作品。

およそ3m程もある大画面。滝口が鑑賞者よりも上にあるので本当に滝が頭上に降り注いでいる錯覚に陥る。

那智の滝自身が御神体であると考えられているのでまさに拝みたくなるような作品。

単純に大きいだけが魅力の作品ではなく、岩肌のテクスチャ表現や木々のダイナミックで躍動感あふれる描写も凄い。

まさに名作と言っても過言ではない作品。

 

66  矢野橋村 不動窟 1面 昭和26年(1951) 矢野一郎氏蔵(愛媛県美術館寄託)

洞窟の暗さをきちんと表現してるのが面白い。

画面上部に施された黒い横線の表現も独特で、作品がたわんでいるのかなと錯覚を起こさせた不思議な作品。

 

67  矢野橋村 峠道 2曲1隻 昭和34年(1959)

細かな点描表現で埋め尽くされた作品。

微妙なカーブまで表現されていて斬新すぎて驚きました。

本当に実験に実験を重ねて新南画というジャンルを開拓していたのだな~と感じる事が出来ました。

ここまで来るともはや何が南画なのかすらわからなくなってきます(‘Д’)

矢野橋村の場合は「南画の描法を少しでも使ってそうな新しい絵画」=新南画といったイメージでしょうか。

 

69  矢野鉄山 孤琴涓潔 1面 昭和4年(1929) 愛媛県美術館

この作品もパンフではなく実物を絶対に見ないと伝わらない作品。

まず作品でかっ!

約2m四方の大画面。

そしてこれ作品をよ~~~く見るとものすごく細かい独特のテクスチャをしています。

無数に白い線が縦横無尽に入っています。

これはわざとつけたシワだと思います。肉眼でよ~~~~く作品観察しましたが多分そう。

表具する時によく見るから恐らく間違いないかと。

和紙をもみくちゃに揉んでシワをつけた揉み紙という種類があり、こうする事で独特のテクスチャを作品に生み出すというのがありますが恐らくこれを応用したのではないかと思います。

凸凹がある事で絵具や墨が乗る部分と乗らない部分に分かれてなんとも言えない独特の雰囲気が画面に立ち込めてます。

そして画面右にある不気味なフォルムの木。シューベルトの魔王の世界に出来そうな不気味感がスゴイ!

そんな不気味な木の先に視線をやると…なんと優雅に水辺で男の人が琴弾いている!!

優雅すぎるやろっ!! なんやねんそのャップ萌えは!

なんちゅー伏線の回収の仕方や!メッチャ物語感じるやん!!この人何してんの!!どういうこと??

もうね、完全に矢野鉄山にやられてしまいました。この世界観を表現したのはこの作品は本当にすごい。

帝展特選作品というのもうなづける作品です。

 

 

73  森琴石 獨樂園図 1幅 明治17年(1884) 西宮K氏コレクション~2/19

旧時代の南画のままの画風かな~と侮っていましたが、森琴石の南画もしっかりと進化していました。

偏見すいませんでした。

竹の葉や木の葉の細かな描写や近景の人物表現の写実性などこれまでの南画とは一線を画する表現に驚きました。

爽やかな緑の色彩も明るさを感じさせ、新しい絵の具を使用したのかもと考えると進化を感じる。

 

79  河邊青蘭武陵桃源図 1幅 明治41年(1908) 大阪中之島美術館

こちらも南画の進化を感じさせてくれます。

山の描き方は確かに南画の描き方ですが彩色が非常に丁寧。

雲のゆらりとした描写も新しい表現。

そして中景の桃の花や木々の描写の柔らかさと細かさ、人物のしっかりとした描写も古くからある南画には見られなかった新しい表現。

女性ならではの感性も含まれているのでしょうが、ブラッシュアップされた南画を感じる事が出来ました。

 

80  田結荘千里 松樹双禽図 1幅 明治12年(1879) 大阪中之島美術館

なかなか印象深い松の描き方をした作品。

松の葉の細かな描写が印象的。

 

84  姫島竹外 竹溪暁霽図 1幅 明治30年(1897) 泉屋博古館東京

こちらも確かに南画なのですが、明らかにスタイリッシュになっているのを感じる事が出来ます。

竹の葉の緻密な描写やグラデーションによる霧の表現など画面全体に散りばめられた芸の細かさを感じれる作品。

 

 

87  村田香谷 西園雅集図 1幅 明治37年(1904) 泉屋博古館東京

村田香谷 西園雅集図

 

もはや何が南画なのかすらわからなくなる程にずば抜けたクオリティを見せる作品。

画面全体における描写の細かさや的確さ、色彩の配置など目を見張るものがあります。

作者の村田香谷が自ら「一生の大作」と言ったのも納得の作品。

 

90  波多野華涯 玉蘭海棠図 1幅 大正10年(1921) 小田切マリ氏蔵

リズミカルに配された白木蓮と海棠が印象的。

近代の花鳥南画といった新しい印象。

 

92  水田竹圃 桐江暁晴 1幅 昭和5年(1930) 京都市美術館

古来よりある東洋画の三遠法とは異なる構図で描いた新しい山水画。

 

94  水田竹圃 幽谷早春 1幅 昭和18年(1943) 大阪市立美術館

伝統的な南画の技法をベースにしていますが構図の取り方や川の流れの表現などに新しい試みが感じ取れる作品。

特に近景にしっかりと描かれた木がアクセントとして存在感を高めているのが印象的。

 

96  森一鳳 藻刈舟 1幅 幕末~明治初期大阪中之島美術館

出た!藻を刈る一方(笑)

ダジャレが受けたというのも大阪っぽくて良いですね。

 

98  上田耕甫 虎図 1幅 明治35年(1902) 大阪商業大学商業史博物館

円山応挙の虎ですやん!!

お父さんも画家で上田耕冲。円山派の絵師なのでこの虎も納得。

在阪の財界人パトロンに可愛がられて活動していた為、全国公募展への出品記録はほぼないそうです。

なるほど、大阪画壇が美術史の中でそこまでクローズアップされる事が少なくどうしてもローカル色が強いのは中央画壇で活躍して名声を高めようとしなくてもパトロンが存在して彼らの望む絵を描いていれば生活が出来たからという部分が垣間見れた。

「文展?知りませんわ、そんなん。そんなんに出品するより〇〇さんに頼まれている絵を描く方が先や。忙しいからそんな出品作なんか描いている暇ありませんねん。」みたいな感じだったのかもしれませんね。

 

101  西山芳園 黄稲群禽図 1幅 幕末

対角線の斜めベクトルの構図は四条派そのものですね。

 

103  西山完瑛 涼船図 1幅 文久元年(1861)

西山完瑛 涼船図

抜け感遠近法はエモエモでさすが。

船や人物の細かな描写は近くで楽しめる二重仕掛け。さすがっす。

 

110  深田直城 水辺芦雁・雪中船泊2幅明治~昭和時代関西大学図書館

さすが直城といった仕上がりの作品。

画面全体の粗密のバランスが秀逸。

高い力量が伺い知れます。

 

112  深田直城 水中游鯉図 1幅 大正2年(1913) 大阪中之島美術館

魚絵を得意とした深田直城の本領発揮。

スッキリ感の抜け感はさすが。

水中の鯉と水面の鯉をきちっと描き分けてる所は魚絵を得意としただけの事はある。

 

113  深田直城 荒磯鯛図 1幅 昭和9年(1934) 大阪中之島美術館

深田直城 荒磯鯛図

深田直城 荒磯鯛図

画面全体の粗密バランス、波と岩場の勢い感、得意の鯛の精密な描写。

全てがハイレベルにまとまったさすがの逸品。

鯛のボディと海の水色の絡みあいグラデーションが絶妙すぎて脱帽。

 

114  平井直水 梅花孔雀図 1幅 明治37年(1904) 大阪中之島美術館

平井直水 梅花孔雀図

平井直水 梅花孔雀図

セントルイス万博銀メダル受賞の平井直水渾身の作。

極彩色の羽には細かな金彩が施されていて見た瞬間、息をのんでしまいました。(;゚д゚)ゴクリ…

孔雀の目力も相当にヤバかったですね。

羽のブワッサ~感も凄い。

引き立て役の梅がいい味出してますね。

 

117  庭山耕園 八重桜五雀図 1幅 明治後期~昭和初期大阪市立美術館

エモエモ桜。これは日本人なら嫌いな人いないんじゃないかな~と思えるほど美しい作品。

薄ピンクと胡粉が綺麗。ぼかしがまたより一層叙情性を強めてます。

下部の抜け感はさすがです。

 

119  須磨対水 新菜鮮蔬之巻2巻大正3~15年(1914~26)

最低限の筆致で見事に野菜を瑞々しく表現しているのは流石の技量。

 

127  上島鳳山 緑陰美人遊興之図 1幅 明治42年(1909) 笠岡市立竹喬美術館

ブランコに乗る唐美人図。

表情や体の躍動感、着物やアクセサリーの細かさなどどれをとっても一級品と言えるほどクオリティが高い。

何故か第三回文展に出品して落選してしまった作品らしいがレベルの高さが伺い知れる逸品。

 

132  野田九浦 天草四郎 1幅 大正2年(1913) 大阪中之島美術館

日本史上最大規模とも言われる一揆・島原の乱を起こした16歳の天草四郎。

多くの伝説と謎に包まれた彼を描いた作品。

凛々しくもどこかはかなげな様子が見事に表現されている。

 

134  岡田雪窓 渓間の湯治場 1面 大正9年(1920) 大阪中之島美術館

画題、アングル、色彩、どれをとっても新しい表現で面白い。

 

135  山田秋坪 柘榴花白鸚鵡図 1幅 大正9年(1920) 泉屋博古館東京

柘榴の赤、鳥の白、岩の青、葉の緑がどれもギンギンに主張している強烈な色彩の花鳥画。

 

136  山田秋坪 四季花鳥画帖1冊大正9年(1920) 泉屋博古館東京

135とは打って変わっての画風。どれを見ても高い実力があった事が伺い知れる画帳。個人的には椿が好み。

 

148  赤松雲嶺 金剛山暁色図 1幅 昭和11年(1936) 大阪中之島美術館

赤松雲嶺は知名度的にはそれほど高くはないですが、実は丁寧で良い作品を残した実力派作家。

本作品はまさに赤松雲嶺の実力の高さが発揮された逸品。

会場で通りかかる人も足を止め息を呑んでいました。

見事なぼかしで表現された幽玄の風景画。

 

150  中村貞以 朝 2曲1双  昭和7年(1932) 京都国立近代美術館

構図の取り方、間の取り方が絶妙すぎてスゴイ!

真ん中に色鮮やかに描かれた朝顔が画面両端で逆方向を向いている女性を繋いでいるかのようで面白い。

画面全体もうっすらと彩色を施すことで涼やかさや透明感が増している。

本当にどうやって合掌描きで描いたのかと思わせる程の秀作。

 

153  幸松春浦 魚游 1幅 昭和20~37年(1945~62)頃  個人蔵(大阪中之島美術館寄託)

おぉぉぉぉ! 近代から現代に作風が近づいてきたな~~~と感じさせてくれる作品。

真上からの構図、魚の影、バックの岩の質感や色合いがこれまでの日本画とは違い、新しさを感じさせてくれています。

 

155  島成園 祭りのよそおい 1面 大正2年(1913) 大阪中之島美術館

島成園 祭りのよそおい

島成園 祭りのよそおい

来ました! 島成園!!

カリスマ女性美人画家! 三都三園の大阪の成園!

楽しみにしていた作品が見れて感無量でした。

島成園独特のウェット感のある髪の描写が上品。

 

そして女の子の瞳の柔らかなタッチがもう絶品過ぎます。さすが。

そしてこの作品はメッセージ性の強い作品。

綺麗に着飾り履物も上等な明らかに裕福な女の子を眺めるちょっと貧相な格好の女の子。

 

残酷なまでの貧富の差を少女たちの服装や表情で見事に切り取った作品。

 

168  吉岡美枝 店頭の初夏 1面 昭和14年(1939) 大阪中之島美術館

服装や髪型が完全に明治とは違う!!

パーマにカチューシャで白服、赤鞄で緑の服をウィンドウショッピング!!!

情報量が多すぎて混乱しますが新しい表現がこの時代には生まれていたのがよく伝わってくる逸品です。

 

 

 

CEO Message

あなたと掛軸との懸け橋になりたい


掛軸は主人が来客に対して季節や行事などに応じて最も相応しいものを飾り、おもてなしをする為の道具です。ゲストは飾られている掛軸を見て主人のおもてなしの気持ちを察して心を動かす。決して直接的な言葉や趣向ではなく、日本人らしく静かにさりげなく相手に対しておもてなしのメッセージをおくり、心をかよわせる日本の伝統文化です。

その場に最もふさわしい芸術品を飾り、凛とした空間をつくりあげる事に美を見出す・・・この独特な文化は世界でも日本だけです。

日本人が誇るべき美意識が詰まった掛軸の文化をこれからも後世に伝えていきたいと我々は考えています。



代表取締役社長
野村 辰二

(ESC もしくは閉じるボタンで閉じます)
会社概要

会社概要

商号
株式会社野村美術
代表取締役
野村辰二
本社
〒655-0021
兵庫県神戸市垂水区馬場通7-23
TEL
078-709-6688
FAX
078-705-0172
創業
1973年
設立
1992年
資本金
1,000万円

事業内容

  • 掛軸製造全国卸販売
  • 日本画・洋画・各種額縁の全国販売
  • 掛軸表装・額装の全国対応
  • 芸術家の育成と、それに伴うマネージメント
  • 宣伝広告業務
syaoku.jpg(120220 byte)
(ESC もしくは閉じるボタンで閉じます)