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月刊日本美術展覧会情報 2023年4月号
目次
江戸にゃんこ 浮世絵ネコづくし
4/1-5/28 東京 太田記念美術館
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/nyanko
猫好き必見の浮世絵展覧会。自身も大の猫好きで数多くのユニークな猫の浮世絵作品を描いた歌川国芳の作品を中心にその他の浮世絵師の猫作品も大集結。にゃんにゃんワールドを是非ご堪能下さい。
明治美術狂想曲
4/8-6/4 東京 静嘉堂@丸の内
https://www.seikado.or.jp/exhibition/next_exhibition/
明治時代になり日本の絵画業界は3つの大きな要因により大荒れに荒れました。
一つ目は江戸時代までの幕藩体制が崩壊した事によりそれまで藩などにお抱え絵師などで雇われていたのが全員リストラ、解雇状態となり路頭に迷う状態になった事。
二つ目は文明開化による日本美術の価値低落。
三つ目は神道分離令から廃仏毀釈が発生し、仏教美術の荒廃。
これらにより日本の絵画業界は大打撃を受けましたが、次第に有識者達による見直し保護時期に入っていきます。
その中で大きな役割を果たしたのが三菱財閥を率いる岩崎弥之助・小弥太の親子であり、多くの日本の美術品を収集して海外に流出するのを防いだり新しい日本画家達の作品を買上したりという事をしました。
今回はそんな激動の明治時代に活躍した作家たちの作品が見れる展覧会。
注目作品は河鍋暁斎の「地獄極楽巡り図」。
河鍋暁斎は幕末から明治にかけて活躍した奇想天外なスーパー馬鹿テク絵師。「その手に描けぬものなし」とも言われる程の芸達者でついたあだ名が「画鬼」。
誰も考えつかない絵を描くのが大好きな河鍋暁斎ワールドがぎっしり詰まった作品が今回登場する「地獄極楽めぐり図」。
この作品は河鍋暁斎のパトロンの娘さんが14歳で夭折してしまい、その追善供養の為に翌年の一周忌に描かれた40図セットの画帖。
悲しみに暮れるパトロンを励まそうと「死後の世界は決してジメジメした暗~い悲しい世界ではなく明るく楽しい世界だ! 娘さんは地獄の名所を巡りながら最後に極楽に行く旅をしているんだ。」というユーモアあふれる発想でその旅の様子をシリーズ物で描き切った河鍋暁斎の人情味あふれる作品。
40図の中で最も有名な作品が本図。
馬が謎に動かす人力車に乗っているのが夭折した娘さん。
そして画面右からはこれから極楽めぐりをする汽車が到来。この作品が描かれたのは明治5年で日本で初めて蒸気機関車が開通したのが明治5年なのでそういった最新の物を取り入れ文明開化の明るい雰囲気を盛り込んだ楽しい作品としている所に河鍋暁斎の心意気が感じ取れます。
全40図それぞれに楽しみや見どころがありますので是非、河鍋暁斎の粋な部分を感じていただければと思います。
河鍋暁斎については以前動画でまとめておりますのでよろしければこちらもご参照ください。
大阪の日本画
4/15-6/11 東京 東京ステーションギャラリー
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202304_oosaka.html
2023年1月から4月まで大阪で行われてい話題の「大坂の日本画」展がついに東京上陸!!
いままで謎のベールに包まれていた最強のローカル画壇の噂に違わぬ圧倒的な質と量の作品を是非ご堪能下さい。
こちらの展覧会については予習動画とレポ動画を作成しておりますので是非ご参照の上、お楽しみください。
国宝・燕子花図屏風
4/15-5/14 東京 根津美術館
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/next.html
江戸時代に一世を風靡した絵の一派である「琳派」。
その琳派躍進の原動力となった巨匠・尾形光琳の初期の代表作が国宝「燕子花図屏風」。
「琳派=デザインチック」という特徴を如実に表したまさに「これぞ琳派」と呼べる代表作を旬の時期に展示しますよ~の展覧会がこちら。
今回は「燕子花図屏風」を中心に、光琳がこの世に生きた期間に制作されたその他の作品で構成されており、その時代全体がまるっと感じ取れるようになっております。
尾形光琳に関しましては以前動画でまとめておりますのでよろしければこちらもご参照ください。
京都 細見美術館の名品 ─琳派、若冲、ときめきの日本美術─
4/26-5/15 東京 日本橋高島屋
https://www.mbs.jp/hosomi25-tokimeki/
京都が誇る細見美術館の開館25周年企画、全国巡回お宝見せまっせ展覧会。
4月10日まで大阪で行われた後、東京→名古屋→静岡→長野と2024年の秋にかけての大規模企画。
こちらは先日大阪展を見てまいりました。
圧倒的な江戸絵画を中心とする名宝に大満足でした。
中でも琳派勢のコレクションは充実していました。琳派四大巨匠(俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一)以外のちょっとメジャーではないけど実は実力はめちゃくちゃあるんやで~の琳派作家作品の充実度に胸熱でした。渡辺始興や中村芳中、神坂雪佳や鈴木守一など見所盛り沢山。
その琳派勢と双璧を成す伊藤若冲コレクションにも恐れ入りました。特に細見美術館のコレクションでしか見られない若冲の最初期の作品は眼福でした。
その他、墨絵の押絵貼屏風も複数展示される贅沢な展示内容。
是非是非東京の方も楽しんでいただければと思います。
琳派につきましては以前まとめておりますのでこちらの再生リストをご参照ください。
明日につなぐ物語
4/15-6/18 栃木 栃木市立美術館
https://www.city.tochigi.lg.jp/site/museum-tcam/58435.html
2022年11月にオープンしたばかりの栃木市立美術館の栃木県にゆかりのある作家にフューチャーした展覧会。
大注目はなんとあの孤高の天才絵師と言われた田中一村も栃木県出身で、田中一村を代表する大人気の奄美シリーズ作品「アダンの海辺」「榕樹(がじゅまる)に虎みゝづく」が展示されます。
田中一村の奄美シリーズの作品のほとんどは奄美大島にある田中一村記念美術館に収蔵されているのでその作品が見れるのは極めて貴重な機会。
現在、箱根にある岡田美術館でも田中一村にフューチャーした展覧会が行われていますのでそちらとあわせて要チェックです。
田中一村につきましては以前こちらの動画でまとめておりますのでよろしければご覧ください。
国宝が福島にやってくる!?
4/26-5/28 福島 花の写真館
https://fukushima.canon/ja/news/tsuzuri/tsuzuri.html
最近は保存の観点から国宝や重要文化財を高精細な印刷により複製品を製作し、普段使いとして活用するケースが増えています。
その代表的なプロジェクトがCanonの綴プロジェクトでこれまでも数多くの文化財の複製を行ってきました。
今回はそんな綴プロジェクトの国宝勢を集めた展覧会が福島で行われます。
主なラインナップはこちら。
- 風神雷神図屏風(俵屋宗達)
- 松林図屏風(長谷川等伯)
- 花下遊楽図屏風(狩野長信)
- 洛中洛外図屏風上杉本(狩野永徳)
- 洛中洛外図屏風舟木本(岩佐又兵衛)
どれも日本美術を代表するような名品ばかり。複製品ではありますがこれらが一堂に集まり見れる展覧会はある種希少です。
複製品ならではの斬新な企画もご用意されているようなので是非この機会に是非お楽しみください。
橋本関雪生誕140周年 KANSETSU -入神の技・非凡の画-
4/19-7/3 京都 福田美術館・嵯峨嵐山文華館・橋本関雪記念館
https://fukuda-art-museum.jp/exhibition/202302222817
橋本関雪は大正から昭和にかけて活躍した日本画家。
10年前に兵庫県立美術館で行われた橋本関雪展では「豪腕画家」と称される程、卓越した描写力を持つ凄腕絵師。
元々は父親が明石藩の儒学を教える人だった事から中国に関するテーマの作品が多かったが晩年はちょっと物憂げな雰囲気を漂わせる動物画が大人気となり関雪芸術のクライマックスと言われています。
そんな橋本関雪の生誕140年にあたる2023年に京都で3会場同時開催されるメガトン級の展覧会がこちら。
3会場それぞれに見どころのある作品群を是非コンプリートして楽しんでください。
幕末土佐の天才絵師 絵金
4/22-6/18 大阪 あべのハルカス
去年の秋くらいから噂になりひそかに注目されていた展覧会がこの「絵金」…誰やねんっ!!というツッコミを入れるのも無理はない。出身の土佐以外で行われる展覧会はなんと半世紀振りだそうです。
この絵金(弘瀬金蔵)は幕末から明治にかけて活躍した土佐の実力派絵師。
江戸で狩野派の修行をした後、土佐藩家老の御用絵師を勤める出世街道を歩んでいましたが、贋作事件に巻き込まれ、解雇、城下追放、狩野派破門と散々な転落人生を歩みました。
しかし実力派あったので作品は製作し続けており、それらがかなり個性的な作品群なので今回大阪でお披露目しようという運びとなった展覧会。
作風がなかなかにおどろおどろしく、妖怪画?無残絵?デロリ?と言いたくなるような雰囲気ですが、中毒性も高く4月一気に注目を集める可能性がある絵師です。
かなり好みが分かれる作品だとは思いますがご興味ございましたら是非ご覧ください。
生誕100年 山下清展
4/8-6/11 滋賀 佐川美術館
https://www.sagawa-artmuseum.or.jp/plan/2023/02/content-2.html
2022年は山下清の生誕100周年という事で企画された展覧会。
2022年は鹿児島からスタートして神戸→福井と続き、2023年は3月に長野、4月に滋賀、そして6月からは東京と続きます。
貼絵、フェルトペン、水彩画、油絵、陶磁器の絵付けなど様々な山下清作品を堪能できます。
Web事前予約が必須なのでご注意ください。
お待たせ!こんぴらさんの若冲展
4/8-6/11 香川 金刀比羅宮
https://www.konpira.or.jp/articles/20230112_the-Jakuchu-exhibition/article.html
江戸時代中期に京都で活躍した天才絵師・伊藤若冲。
その人気は日本のみならず世界でも高い評価を受け、今最も人気のある日本の絵師の一人とも言われています。
そんな伊藤若冲が40代中盤に描いたのが金刀比羅宮の障壁画「百花図」。
傷みが酷くボロボロだった為、長らく非公開となってきましたが2021年冬から修理がスタートして2023年3月についに完了し、お披露目の運びとなりました。
新しく生まれ変わった伊藤若冲の傑作を是非この機会にご覧ください。
伊藤若冲の最高傑作である動植綵絵についてはこちらの動画をどうぞ。
伊藤若冲の他の金襖作品に関しましてはこちらのレポ動画をどうぞ。
大広重展 ― 東海道五拾三次と雪月花 叙情の世界
4/7-5/22 鳥取 米子市美術館
https://www.nnn.co.jp/event/daihiroshigeten/
現在でも世界的に人気の浮世絵師である歌川広重の大掛かりな展覧会。
過去同様の企画が滋賀2020年7月4日(土曜日)~8月30日(日曜日)、愛媛2021年1月16日(土)~3月21日(日)、広島2021年12月17日(金) ~ 2022年2月6日(日)でも行われて人気を博した折り紙付きの展覧会。
代表作である東海道五十三次や名所江戸百景などポエミックな浮世絵が多数展示されます。
ゴッホなどの印象派作家にも多大な影響を与えた独特の構図法など見所なので是非お楽しみください。
面構 片岡球子展 たちむかう絵画(福岡展)
4/8-5/21 福岡 北九州市立美術館分館
2023年1月に横浜で行われた展覧会の巡回展。
片岡球子は昭和から平成にかけて活躍した女性日本画家。
画業の初めはその個性的な画風が受け入れられず「落選の神様」と呼ばれる程、目が出なかったですが日本美術院の三羽ガラスと呼ばれた小林古径、前田青邨、安田靫彦に認められ実力を開花させていき、最後は日本を代表する巨匠にまでなった日本画家。
その代表作シリーズが自身のヒーロー達を自分流に描く「面構」シリーズ。足利尊氏、葛飾北斎、徳川家康、歌川国芳など。
片岡球子のゴリゴリのパワーを感じ取る事が出来る展覧会を是非お楽しみください。
秋田蘭画ことはじめ
4/29-6/11 福岡 九州国立博物館
https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_pre184.html
江戸時代初期は鎖国をしていたのであまり海外からの書物などは入ってこなかったのですが、中期になり徳川吉宗が規制を緩和した事により洋書が流入するようになり、それらの洋書からヨーロッパの学問や芸術を学ぶ蘭学が盛んになりました。
そうした中で当時の最先端学者であり発明家であった平賀源内が秋田藩主・佐竹曙山と絵師・小野田直武と出会い洋画を教えた事で始まったのが秋田蘭画。
小野田直武は翌年に平賀源内の紹介で解体新書を製作していた杉田玄白らのチームに加わり挿絵を担当する事となり秋田蘭画はバッキバキに仕上がりました。
その後、小野田直武は秋田に帰り絵画指導をし、秋田では独特の絵画が生まれていきました。
今回はそんな秋田蘭画の作品が堪能できる展覧会となっておりますので是非お楽しみください。