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初心者が美術館を気軽に楽しむ方法
今回は「初心者が美術館を気軽に楽しむ方法」という事で
「美術館行ってみたいけどちょっと敷居が高くて…。自分には芸術とかわからなくて気後れしてしまうんです。」という方が結構な数いらっしゃいます。
特に初心者の方に多いのですが、美術館巡りベテランの方はベテランの方で「もっと楽しむ方法がないのか?」と鼻息フンフンされている方もいらっしゃいます。
そんな皆様の声にちょうど良くお答えする本がございました。それがこちら。
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今回はこちらの本を参考文献とさせていただいて「初心者が美術館を気軽に楽しむ方法」をご紹介させていただこうと思います。
また、以前に似たような内容の動画をご紹介させていただきました。
こちらの本の内容は一部、この動画と被る部分もあるのでそれ以外の「初心者が美術館を気軽に楽しむ方法」をご紹介させていただこうと思います。(こちらの動画も併せてご参照ください。)
カフェを楽しむ
まず最初にご紹介させていただきたい方法が「カフェを楽しむ」です。
多くの美術館には併設のカフェが存在いたします。
一昔前までは、美術館の付属品的な扱いの簡素な物が多かったのですが最近のカフェはかなりレベルアップしており、なんならそのカフェが集客の装置となって機能している美術館もあるそうです。
確かに美術館の中って非日常的な空間で洗練されてますよね。静かでお洒落なハイセンスな空間、そら、まぁ、美術館はアートを楽しむ空間ですからダサかったら嫌ですよね。
そんなお洒落な空間を味わいながらカフェをするのも非日常的な体験で確かに楽しそうです。
これは盲点でした。
お恥ずかしながら私は、美術館巡りが出来る時間が確保できると貧乏性で一日にできるだけ多くの美術館を巡りたいと考えてしまい、休憩をほぼ取らずに美術館を梯子してしまいます。(お昼ご飯はコンビニで何か買って移動中に食べるようなイメージ)
なのでカフェをゆったりと楽しむというのはほとんどした記憶がなく、ちょっと損した気分になっています( ノД`)シクシク…
確かにカフェによってはその展覧会とリンクしたメニューなどを用意していたりするのでそれは確かに作品の事を詳しく知らなくても楽しめそうですね。
ちなみにこちらは現在、東京の山種美術館で行われている【特別展】日本画聖地巡礼に関する併設カフェのメニューです。かわいらしいスイーツですね。
私も唯一、一度だけカフェを利用したことがあります。
それは京都嵐山の福田美術館のカフェです。確かにこちらは渡月橋を見ながら食事や休憩を取る事が出来て観光地の喧騒の中の隠れ家的なビューを楽しむ事が出来た記憶があります。
美術作品を楽しむのと同時にカフェもチェックしてみるとまた変わった楽しみ方が見つかるかもしれませんので是非カフェチェックしてみてください。
眺望や庭園を楽しむ
続いては美術館自体やそこから見える景色などを楽しむという方法です。
美術館にはその作品ではなくそこからの景色や美術館の設備などが有名な物も多くあります。作品の事がわからなくてもその美術館に行きさえすれば楽しめるというのも一度で二度おいしいようで嬉しいですね。
MOA美術館
こちらは静岡の熱海にあるMOA美術館。
こちらは美術館から見えるオーシャンビューが非常にさわやかで人気です。
とても長いエスカレーターも名物で、一番下から上まで登るには数分かかります。
そのエスカレーターを登りきると天井にとても幻想的な巨大な万華鏡が登場。この天井を見る為に美術館を訪れる方もいらっしゃるほどです。
併設のカフェからもオーシャンビューが見れてお洒落ですね。
作品以外でこれだけ楽しむポイントがあるMOA美術館に是非行ってみたいですね。
(私自身は行った事はありません。写真は弊社スタッフが訪れた際の物。うらやましい。)
根津美術館
こちらは東京にある根津美術館。
建物自体も自然光を効果的に取り入れた素晴らしい建築になっています。
こちらの美術館にはなんといっても琳派大躍進の巨匠・尾形光琳の代表作、国宝・燕子花図屏風が収蔵されており、年に一回、燕子花が咲く頃に展覧会が行われます。
尾形光琳に関してはこちらの動画をどうぞ。
2023年の燕子花図屏風の展覧会に関してはこちらの動画をどうぞ。
こちらの根津美術館にも広大な庭園があり、特にこの燕子花図屏風の展覧会の頃には庭園に燕子花が咲き誇るので作品も庭園も相乗効果で魅力を高めあって楽しむ事が出来るのでお勧めです。
白沙村荘
こちらは京都にある白沙村荘。近代に活躍した日本画の大家・橋本関雪の邸宅です。
橋本関雪については生涯を紹介した動画と展覧会のレポ動画がございますのでこちらをご参照ください。
この白沙村荘にも立派な庭園が存在します。もはや庭園というよりも森と表現した方が良いようなかなりのスケール感の庭園です。
もはや個人で楽しむレベルを十二分に越えた庭園を橋本関雪が生活をしていた息吹を感じながら散策してみるのも面白いかもしれません。
足立美術館
こちらは島根県が誇る随一の美術館である足立美術館。
アメリカのとある庭園専門雑誌の日本庭園ランキングでなんと初回の2003年から「20年連続日本一」に選出されている庭園が見どころ。
横山大観の収蔵作品数が国内トップである事も有名ですが、庭園も同じくらい人気の名物ですので是非一度は足を運んでみていただきたいです。
この他にも眺望や庭園などが優れている美術館は枚挙に暇がないので是非参考にしていていただければと思います。
フライデーナイトフィーバー
さて、次は美術館を訪れる時間帯を工夫する事でいつもと違った楽しみ方が出来るという方法です。
それはズバリ、金曜の夜に営業時間を延長している企画展に訪れるという事です。
通常は18時頃に閉館になるのが多い美術館ですが、金曜日は夜遅くまで延長している場合があります。ここが狙い目なのです。
普段は混雑していて他人の視線などが気になる美術鑑賞も金曜日は世間では花金という事で見に来る方が意外に少ないのです。(だから夜まで開けているのかもしれませんが)
ゆったりとした空間でじっくり作品を思う存分堪能できるというのは普段とは違った極上の時間です。そのリラックスした状態が作品の普段見えない部分に気づかせてくれたりするので是非ご活用いただきたい方法です。
さらに言うなら、閉館までいると完全に美術館を自分一人の物に出来る場合もあります。ちなみにこちらは京都嵐山の福田美術館の閉館間際の様子の写真。こんな美しい作品群を自分一人占めしているような気持ちは何とも言えない幸福感というのを感じるものですので余裕がある場合は是非一度お試しください。
鑑賞テクニック
次に「初心者が美術館を気軽に楽しむ方法」としていくつかのテクニックをご紹介させていただきます。
3分鑑賞
まず展覧会の作品を全てフルパワーで最初から見る事はお勧めいたしません。
集中力が持たないのとペース配分を誤り最後の展示作品まで見れなくなる場合がよくあるからです。そしてトリに目玉作品が展示されている場合も少なくないのでそういった場合は悲劇です。
お勧めはまず全体を一回軽く全て見て自分が心惹かれて気になるな~と思う作品をチェックします。
その中で気になった作品に集中してまずは見て行きます。好きな物からやっつけるでOKです。
そして作品鑑賞の時間ですが、どれくらい見たらよいかを迷われる方、いらっしゃると思いますが作者はおっしゃります。
ズバリ、3分間がひとつの境界線です。
我々は3分という区切りを日常の中で結構体験しています。カップラーメン、電車の各駅移動時間、ウルトラマンなど…。決して長くはないですがそれなりに長さを感じる時間です。
この3分間、作品をじっくり見ようと思うと色々な部分に目をやり気が付く事が出来るはずです。
そこからさらに興味が湧けば延長すれば良いですし、3分間で十分満足できたのなら次の作品に行けば良いと思います。
要するに3分はパッと見では気がつけないその作品の魅力を感じる事が出来る目安時間なのです。
「じゃ、全ての作品3分間ずつ見れば良いやん!」と思われた方、時間と集中力が無限であればそれも結構ですが、展覧会では100点程の作品が展示されるので単純に300分=5時間、フルパワーで集中力を持続させるのは相当マッチョでなければ不可能です。なので気になった作品をチェックしてそこから見て行く方が現実的かつ効率的なのです。他の作品は時間が余れば検討されればどうかと思います。
細部チェック
次に鑑賞の方法ですが、ズバリ細部チェックが大切です。
3分間あれば作品の細かい部分まで目をやる時間があると思います。筆のタッチや絵具や墨の動き、線の太細などそういった作家の躍動などに目をやると作品の見え方が変わってきたり気が付かなかった事などが感じ取れたりします。
よく「魂は細部に宿る」と言いますが、まさに芸術作品もその通りなので細部チェックをしてみると面白いです。
イヤホンガイドは後から
展覧会に行くとイヤホンガイドを利用する事が出来る場合が多くあります。
基本的に私はお金と時間に余裕があるのであればこちらのイヤホンガイドは利用される事をお勧めしていますが、ガイドを聴くタイミングに注意が必要です。
自分が作品を見る前にイヤホンガイドを聴いてしまうとネタバレになってしまったり先入観を持って作品を見てしまい、自分の感性が育たなくなる場合があるからです。
まずはサラの状態で作品を見て自分の率直な感想や印象を確認した上で、イヤホンガイドを聴くとより深く作品を味わう事が出来ますので順番を大切にしてください。
(でも3分鑑賞して、イヤホンガイド聞きながら再び鑑賞して…としてたら1作品5分くらい費やすので20作品見るだけで100分…やっぱり全体見してピックアップするのがマストですね)
エア買い付け
よく展覧会では「見逃せない名作を大公開!」などの宣伝文句がありますが、この言葉を鵜呑みにして作品をありがたがってしまう人が多いですが、実はこれは自分の本心ではない事もあります。
自分が本当にその作品が好きなのかどうかを確かめる面白い方法が「エア買い付け」です。
「もし自分がお金を出して購入するならどの作品にするか?」といった目線で作品を見ると人間は現金な物で一気に作品を見る目がシビアに自分モードに切り替わります。
大切なお金を払って選ぶのであれば他人の意見よりも自分の意見を優先させたいと思うのが人情なので、そういった感覚が研ぎ澄まされた目で作品を見ると自分にとっての本当の作品の魅力というのが見えてくるものです。
是非、一度お試しください。
勝手に命名
作品のタイトルは得てして無難な物が多いです。「松竹梅鶴亀」や「山水図」などありきたりな名称です。これでは印象に残りませんし、他の同じタイトルの作品と区別しにくいです。
なので、自分で勝手に作品に命名するのが美術を気軽に楽しむ方法なのです。
作品に名前を付けようと考えるとしっかりと作品を見ないといけませんし、ユーモアあふれるトンチの利いたタイトルを考えようと思うなら尚更です。
そうすると作品をより鮮明に覚えられるし、愛着も沸くので作品を忘れにくくなります。
私は作品にも名前を付けますが、作者にもよく二つ名をつけます。そうする事でよりその作者が好きになります。
参考までに私がつけた作者の二つ名の例をご紹介させていただきます。
・酒井抱一「勝手におじさん」「匂わせポエマー」
・曾我蕭白「日本美術史上、最大の問題児」
・伊藤若冲「やりすぎクレイジーペインター」
・円山応挙「京都画壇のキング」
ちなみに本で紹介されていた例も面白かったのでご紹介させていただきます。
伊藤若冲の動植綵絵のひとつ「群魚図」ですが、皆さん様々なタイトルを考えられていました。
・ギョギョギョ、大行進!
・ぼくらはみんな泳いでいる
・ゆうゆう海中散歩
・タイの王様と家臣たち
・水中舞踏
自分で勝手につける名前なので好きにつけて良いので個性が出そうで面白そうですね。
是非、ご自身でも試してみてください。
総括
いかがでしたでしょうか?
今回は「初心者が美術館を気軽に楽しむ方法」として様々な方法をご紹介させていただきましたが、決して芸術の知識が必要な方法はありませんでした。
気軽に美術館を訪れて眺めや庭園や施設を楽しみ、作品で見ながら楽しみ、カフェでゆっくりするといった一日も特別な一日になるのではないでしょうか?
是非、素敵な美術ライフをお過ごしくださいませ。