月夜に見る桜は妖艶で美しく一際趣深い。その時間の価値は何物にも代えがたい程の価値があると古来より考えられてきた。移ろいゆくものに美を感じる日本人は月夜に照らされた桜のほんの一瞬の生命の輝きに心惹かれるのであろう。

本作品は三宅和光による絹本に描かれた夜桜の図である。月夜に映し出された桜の花びらの表情を様々な色彩で描き分けているのが印象深い。背景には墨をうっすらとひく事で夜の風景を表現している。所々に描かれている散りゆく桜の花びらは作品に躍動感を与え、今まさに生を謳歌している桜の様子を感じ取る事が出来る。花鳥画に優れる三宅和光の妙技が随所で見てとれる逸品である。