岡本珠洸は動物画の巨匠である橋本関雪に手ほどきを受け、鯉描きとして名を馳せた日本画家である。作品ごとに特徴が違う様々な鯉の表現は、彼の鋭い観察力と表現力の豊かさを感じる事が出来る。
本作品は美しく池に咲く睡蓮の葉の間を、涼しげに泳ぐ三匹の鯉を描いた作品である。色鮮やかな錦鯉は美しく、昔ながらの黒い鯉も渋みがあって落ち着きを感じる。特に本作品では背景の落ち着いた色合いと調和しているのが特徴的である。うっすらと白色で描かれた水の波紋により鯉がいきいきと泳いでいる事が伝わってくる。この描写は珠洸らしい繊細な表現であり、非常に鋭い観察眼を感じる事が出来る。