山百合は日本特産の百合で、風貌が豪華で華麗であることから、『ユリの王様』とも呼ばれている。本作品では山崎啓次により実に写実的に描かれており、花弁の反り返りの描写は実に見事である。背景のレモン色のマーブリングも『ユリの王様』という名にふさわしい風格を山百合に与えている。清楚なイメージが美人の例えに用いられるユリであるが、その美しい佇まいに蝶も吸い寄せられているようで印象深い。

墨流し (マーブリング)
墨を水面に流した上に松脂を滴して、墨を水面に散らしこれを紙に写し取る技法で、同様の効果が水彩絵具でも得られる。