比叡山は京都の北東に位置し、京都府と滋賀県の県境にまたがっている歴史ある山である。天台宗総本山である延暦寺が788年に最澄によって建てられ、法然、日蓮、親鸞は自分の宗派を開くまで修行を行ったとされる。1571年に僧兵の力を抑える為、織田信長によって焼き討ちされたが、その後立て替えられて今日も天台宗の総本山としてその威厳を保っており、高野山と並んで古くより信仰対象の山とされてきた。

本作品は山崎啓次の比叡山図である。山崎啓次の水墨によって描かれる風景画は写実性の高い作風のものと抽象的な作風のものとがあり、非常にバラエティに富んだ墨の使い方を見てとる事が出来、おもしろい。本作品は抽象画を感じさせる作風であるが、こういったタッチは日本画の作品では珍しく、遠景の山、中景の里、近景の草を見事に墨を使い分け表現している。山崎啓次の作品に対する新しい表現への挑戦心を感じ取ることが出来るようである。