山崎啓次は「自然との融和」をテーマにし、様々な秀作を多く描いてきた。師である佐藤太清によって完成された花鳥画と風景画を融合させた画風を用いる。
本作品は新潟県にある苗名の滝（苗名滝）という日本の滝百選に選ばれた高さ55mもある滝を描いた作品である。大瀑布が流れ落ちる轟音が至る所で聞こえるので別名「地震の滝」とも呼ばれている。その滝の大迫力を墨の強いコントラストを用い表現しており、まるで滝の轟音が聞こえてくるようである。この大迫力の滝の轟音に意識を集中させ、無心で画面に描き出している時、一羽の小さな鳥がその滝を横切った。その時、山崎啓次は大自然の中で懸命に生きる小さな命の力強さを感じ、この作品に描き入れ完成させたという。大滝の迫力と小さな鳥の生命力が互いに共鳴しあう素晴らしい作品であり、この作品は2008年の日展出品作との兄弟作である。

佐藤太清　(1913-2004)
日本画家。芸術院会員。日本画巨匠の一人。花鳥画と風景画を融合させた「花鳥風景画」を完成させた事で有名である。