ニュース／ブログ
修理・修復作業紹介
旧裏打紙除去（めくり）
掛軸は、長期の保存に耐えることが出来るように何枚も和紙を裏打（本紙の裏に和紙を張り合わせて補強する作業）しています。
古軸のやり替えの最初の作業は、この裏打されている紙を丁寧に剥ぎ取っていく所から始まります。
一般的に掛軸には作品本紙から近い順に肌裏打、増裏打、総裏打の3枚の裏打紙が存在しており、仕立替の際には外側の和紙から順番に除去していきます。
以前の表具に使用された糊や作品の状態により難易度が異なり、熟練した表具師が行わないと作品を傷つける恐れがあります。
旧裏打紙の除去の難易度は本紙に近い裏打紙ほど難しく、本紙に直接裏打されている肌裏紙の除去は修理の中でも最も難しいとされています。
作品を傷めないよう指先に全神経を集中させて慎重に紙を剥ぎ取っていきます。
職人用語で「めくり」と呼ばれるこれら一連の作業は、非常に繊細で細かい作業です。
旧裏打紙除去 VTR
洗浄
汚れやシミを経験の積み重ねによって編み出した効果的な薬品や手法を用い取り除いていきます。これが「秘伝の技」で、言わば企業秘密の部分。注意しなければならないのは、その作品が歩んできた歴史の風格の色まで損なってはいけない事。真っ白にすればそれで良いというものではないのが熟練の表具師の判断の必要なところ。
洗浄剤で長年の汚れを落としていきます。
作品から多くの汚れが落ちていくのが分かります。
刷毛でも優しく汚れを落としていきます。
洗浄液除去
作品の洗浄に使った薬剤を中和剤にて落としていきます。
汚水
洗浄により落ちた長年の汚れ。この色は薬品の色ではなく作品自体の汚れ。どれほどの汚れが作品に付着していたかを物語っています。
洗い , 洗浄 , クリーニング VTR
洗い、洗浄、クリーニングの参考記事
シミ抜
作品に茶色のシミが出ることがありますが、湿気や化学反応が原因のにあるようです。
作品の材質や状態によって薬剤を使い分けシミ抜きを行わなくてはなりません。
作品の状態によっては薬剤に耐えられない場合もあるので行う前の表具師の判断が大切です。
本紙の性格・年数またシミの種類や程度を見極めて薬剤を選ぶ。
古い本紙の場合は破れや穴あきの原因になるので過度のシミ抜きは避ける。
その他のシミ抜の例。
シミ抜きVTR
シミ抜 の参考記事
補強
掛軸は収納時に巻く為、掛軸特有の傷み方があります。曲げ伸ばしを繰り返すうちに、本紙が折れたり、その部分から破れてくることもあります。
それを防ぐ為、折れた部分に裏側から「折れ伏せ」いう細い補修紙を当てて補強します。（「折れ止め」「折り当て」などとも呼びます。）
薄美濃紙などの丈夫で薄い和紙を細く裁断したものを用います。
手作業の細かく繊細な仕事です。
スジカイを当て、破れやヒビなどを細かく補強していきます。
作品の傷み方によっては作品全体に無数に補強をする為、非常に労力のかかる作業です。
折れ伏せ VTR
折れの参考記事
補修・修復
残念なことに作品の保存状態が悪く、作品の一部が欠損してしまっている場合があります。
裏打をしても欠落部分のみ何もない不自然な状態になる場合があります。
依頼主の許可の下、作品の欠損箇所が不自然にならないように周囲の色調とバランスをとるように色彩を加えます。
場合によっては作品に筆を入れる事もあります。
画材の扱いや色彩感覚、作品の理解など多くの知識を必要とする非常にデリケートな作業。
