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床についてしまう 長い掛軸 の表装仕立替 | 三木市
弊社では一般的な画題の作品を表装するのに大きく分けて大和表具(三段表具)と丸表装の2つの仕立てで行います。どちらの表装の仕方にするかは作品の長さによって使い分けるようにしています。一部お客様の好みなどの例外もありますが、作品の縦の長さが長い場合丸表装を用います。
大和表装の場合、全体の長さは 本紙の長さ + 一文字の長さ + 中廻し(上下)の長さ + 天地の長さ に大体なります。(実際は付け回しの糊代の被り部分や八双と軸棒の袋の部分の巻き込み部分があるので少し短くはなりますが凡その全体の長さがわかります。)
丸表装の場合は 本紙の長さ + 一文字の長さ + 天地の長さ となります。大和表装よりも丸表装の方が裂地の部分の縦の長さは短くなるので本紙の長さが長い場合は丸表装にして全体の長さを調節するようにします。個人的には本紙の縦の長さが4.0尺くらいになると丸表装にします。
掛軸の部分の名称については下の図をご参照ください。
たまに長い本紙にも関わらず大和表装にしてしまい、総丈が異様に長い掛軸のご相談を受けることがあります。掛軸全体が長すぎると床の間に飾った時に地が地面についてしまう場合もあります。経験則で申しますと掛軸の総丈が2mを超えるようになってくるとこういうケースが増えてきます。もちろん旧家で天井が高い構造のご自宅もあると思いますので一概には言えませんが現代の家屋の造りで考えると2mぐらいまでが限界かと思います。
もしこの 長すぎる掛軸 を通常の掛軸の長さに大和表具で仕立てようとした場合、天地や中廻しを短くして調整しないといけないので不細工な形になってしまいます。
やはり本紙の長さに併せて表具の形式を使い分け、長い場合は丸表装に切り替えた方が良いですね。
長い掛軸 の表装仕立替
今回は掛軸の総丈のご相談ではなく傷んでいる掛軸の修理のご相談だったのですが、本紙が長いにもかかわらず大和表装にしている為、全体の総丈がとても長い掛軸になっているものでした。仕立替のついでに丸表装にして全体の掛軸の長さを収まりがいいようにしました。
こちらがご相談いただいた掛軸です。左横の掛軸と比べてみても随分と長いのがわかりますね。
親が大切にしていた可愛らしいワンちゃんの掛軸ですが随分と傷んでしまってボロボロになっているので何とか飾れるようにしてほしいというご相談でした。
全体的にシワがたくさん発生しているので掛軸の見た目も損ねてしまっています。
表装オペレーション
今回の表装仕立替のオペレーションは大まかに以下の通りです。
作品解体 (古い裂地などを取り外していきます。)
↓
旧裏打紙を除去 (業界用語で「めくる」という作業)
↓
裂地選定
↓
再表具
修理完了
こちらが新しく仕立替をした掛軸です。大和表装から丸表装に仕立替もしたので全体バランスも良く、床の間に収まる長さになりました。
全体のシワも取れて中の作品がよみがえり、戯れてる犬の躍動感も感じる事が出来ます。
掛軸が長すぎて床の間に収まりきらず困っていらっしゃる方は仕立替を検討されてはいかがでしょうか?掛軸の地の部分がある床についてしまっている状態はやはりみっともないです。表装の仕立てが間違っている場合もございますので一度弊社にご相談ください。
掛軸の修理修復工程をより詳しくご覧になられたい方は以下の動画で徹底解説しています。全4回に渡る長編の解説付の動画ですのでご興味ある方は是非ご覧ください。