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横浜より 西国三十三ヶ所の掛軸修理 のご相談
弊社にはHPをご覧になられて遠方からお越しになる方も多いのですが今回は横浜からわざわざ掛軸のご相談でお客様がお越しくださいました。
お話をお伺いすると昔、神戸辺りに住まれていた事があるのと現在は事業家として複数の会社を経営されており、仕事で全国を移動するので神戸にもよく来る為、弊社をお選び下さいました。(ありがとうございます。)
ご相談はご自身が小学生の時に巡った 西国三十三ヶ所の掛軸修理 をして欲しいという内容でした。
小学生で西国三十三ヶ所を満願…!?
すごい信心深い小学生ですね。初めてそんな方とお会いしました…(°_°)
こちらがご相談をいただいた掛軸です。
さて、以前にも記事で書いた事があるのですが西国三十三ヶ所や四国八十八ヶ所の霊場集印軸の仕立替は通常の掛軸の仕立替よりもかなり注意が必要なんです。
まず墨や朱肉の膠の効き具合が札所毎に異なるので滲んだりしないようにしっかりと色止めを行わなければならない。特に仕立替の場合は水を大量に使うので通常の仕立ての時よりもしっかりと色止めをしておく必要があります。(シミ抜をする場合色止めしすぎるとシミが落ちにくいというジレンマとの戦いになる為、さらに見極めが大変(T_T))
次に左右の余白がない場合が多く、仕立替をして新たに裏打をして直角を出して本紙をカットする場合、字が切れてしまう可能性があるという事。
絹や紙は水をかけると伸び縮みするので最初から直角を出して裏打をする事は不可能です。その為、裏打後に直角を出して本紙をカットするのが普通なのですが左右に余白がないと字をカットせざるを得なくなってしまうのです。(この悩みは集印軸の裏打をした事ある人なら結構あるはず…)
下の写真の赤丸部分をご覧ください。今回の掛軸の左端も余白が全くない為、仕立替をして新たに直角を出して本紙をカットしようとすると字をカットするしかありません。
しかしその旨を伝えるとお客様より拒否反応…( ; ; )どうにか出来ないか考えた末、苦肉の策ですが裏打紙を少し残す形で直角を出す案で了解していただけました。(たまーにどうしようもない場合この裏技を使います。)
表装裂地ですが色々と悩まれていましたが、最終的には弊社の仏表装パターンNO.17の玄武にて仕立替をする事になりました。落ち着いた荘厳な印象の裂地を気に入って下さいました。
仕上がった掛軸がこちらです。
本金糸で織り上げた紋が神々しく、さらに下地を落ち着いた薄い紺色で織り上げた裂地の為、重厚味溢れる仕上がりとなりました。角度によって見え方が色々と異なるのも趣があって良いですね。
お写真では100%は伝わりませんが現物はもっと良いです( ̄ー ̄)
心配しておりました左側のギリギリだった部分ですが奇跡的に今回は殆どカットする必要がなく直角を出してカットする事に成功いたしましたので裏技は使わずに表装を行いました。
今回は太巻仕様にしてほしいという事で桐箱もバージョンアップ。昔の桐箱の蓋の部分だけ切り抜いて太巻に移植する事で昔の桐箱の箱書を残しながら太巻の機能も得られる特別仕様です。
太巻の扱い方についてはこちらの動画をご覧ください。
桐箱の蓋の移植についてはこちらの動画をご覧ください。
お客様からも大変ご評価いただき嬉しい限りです。遠方より弊社にご依頼くださり誠にありがとうございました。
西国三十三ヶ所の掛軸修理 などのご相談は是非弊社にご相談下さい。
より詳しく掛軸の仕立替について知りたい方は下記の動画をご覧ください。
掛軸のシミ抜き作業についてより詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
西国三十三ヶ所の納経軸を掛軸に表装する工程はこちらの動画で詳しくご紹介しておりますのでよろしかったらご覧ください。