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無準師範 の書の掛軸修理修復依頼 | 市指定重要文化財
無準師範 の掛軸修理依頼
今回はとある市の重要文化財に指定された希少な掛軸の修理のご紹介。弊社は寺院様とのお付き合いも多く、その寺院に縁のある希少な作品を今までも多く修復してきました。今回修理のご依頼を受けましたのは中国南宋時代の臨済宗の僧侶である 無準師範 の書の掛軸。
無準師範は(ぶじゅん しはん、淳熙4年(1177年) – 淳祐9年(1249年))中国南宋の臨済宗の僧侶。日本の時代で言うと鎌倉時代くらいのお坊さんです。日本から 無準師範 に参じた僧も多かったという程有名だったようです。書にも大変優れていたらしく非常に多くの作品を残したともいわれており、今回の作品もそのうちのひとつか?
しかし全体に虫食いや折れが激しくかなり損傷が進んでいるのがわかります。
今回は旧裏打紙を除去し、しっかりと折れ伏せを肌裏打の裏から行い補強をし、補彩により自然な形に仕上げていく計画で仕上がりイメージ図を作成いたしました。
中廻しの裂地には本金別織の裂地を使用し、天地は落ち着いた無地の裂地にて表装させていただく事にいたしました。(元の掛軸の天地は柄の大きな金襴を使用していましたが、通常はあまり用いられない組み合わせなので)
旧裏打紙除去
掛軸の修復には古い裏打紙を除去していかなければなりません。総裏打⇒中裏打⇒肌裏打と通常3枚の裏打紙を除去していきます。(中にはそれ以上の裏打紙をめくる場合もあり。)
総裏打、中裏打を剥した状態。作品の折れが激しい部分には肌裏打の裏から「折れ伏せ」と呼ばれる細い和紙を裏から当てて補強しています。仕立替の場合はこの折れ伏せも剥していきます。
しかし…この昔の折れ伏せですが結構雑ですね…(-_-;)太いしデカい…( ゚Д゚)
折れ伏せも肌裏打紙も全て除去し終えた状態。ここまで来るのに相当な神経と時間を費やしました。仕立替の作業でこの旧裏打紙除去が一番難易度が高いです。
裏打
折れ伏せ
折れがひどい部分や虫食いの部分に肌裏打紙の裏から折れ伏せを当てています。傷みの範囲が広いので折れ伏せの作業も時間のかかる大変な作業でした。
補彩
多くの虫食いがあった作品ですがそのままの状態で仕上げると不自然な形になってしまうので、全体の色調整を行う「補彩」という作業を行いました。
付け回し
作品を直角にカットし、その寸法に合わせて裂地を段取りし作品に貼り合わせていき完成させました。
無準師範 掛軸完成
長い工程を経て、ついに作品の修復作業が完了いたしました。欠損ヶ所も補彩により自然な形でよみがえりました。
桐箱もボロボロだったので、表書を新しい桐箱に移植して再利用し、太巻仕様にいたしました。太巻にする事で掛軸を巻く際に作品にかかる負荷を軽減する事が出来ます。
太巻の扱い方についてはこちらの動画をご覧ください。
桐箱の蓋の移植についてはこちらの動画をご覧ください。
無準師範 掛軸納品
ご依頼いただいておりました寺院に納品に伺い、床の間に飾らせていただきました。お客様も修復を終えた掛軸に大変喜んでくださいました。今回はご依頼ありがとうございました。
寺院様で表装修理修復に困られている掛軸、巻物、屏風、衝立、額などがございましたら是非弊社までご相談ください。