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激しい折れがある 絹本の掛軸修理 | 高砂市
以前、高砂市にお住いのお客様よりご先祖様が大切にされている掛軸の修理、仕立替のご依頼を受けたお話をご紹介させていただきました。
今回はその続きで他の掛軸の修理のご依頼をお受けしたお話しをご紹介させていただきます。今回修理のご依頼を頂戴いたしましたのはこちらの2点の 絹本の掛軸修理 。
絹本の掛軸修理: 秋景山水
絹本の掛軸修理: 青緑山水
どちらも随分と酷い折れが発生してしまっている危険な状態です。どちらも絹本に描かれている作品なのですが絹本のきつい折れは絹の繊維が断裂してしまっている場合が多く、旧裏打紙を除去すると剥落、欠損を起こす可能性が非常に高いです。それを防ぐ特殊な方法もあるのですがそれでも100%保全するのは至難の業となります。
この点をお客様にご理解いただき、その欠損した部分に彩色を施す補彩という作業が必要になる事をご理解いただきました。(もちろん追加費用が発生するので予算と相談した上でご判断いただきました。)
旧裏打紙除去後の様子
旧裏打紙を除去した状態の様子が下の写真です。絹の繊維が断裂しているので絵が途切れてしまっているのがよくわかります。なるべく裂け目同士をつないで新しい裏打を行うのですが限界があり、裂け目は残ってしまいます。
新しい肌裏打
新しく肌裏打をした状態。裂け目や欠損部分が目立ち、不自然な状態になってしまっているのでここに彩色を行います。(補彩)
お客様のご要望で秋景山水の下部の穴はセロテープの痕が残ってしまうのでカットして欲しいという事でしたのでこちらには補彩は行いません。
折れ伏せ
繊維が断裂してしまっている部分は強度が弱っているのでそのまま表装してしまうと掛軸を巻きあげる際に再び折れが発生しやすい状態となっています。この折れの再発を防止する為に「折れ伏せ」と呼ばれる細い和紙を肌裏打の後に裏から当てていきます。
絹本の掛軸修理: 修復完了
絹本の掛軸修理 で繊維が断裂してしまっていた部分も補彩を行う事で自然な風合いに戻りました。鑑賞していて違和感のないレベルにまでもっていく事が出来ました。この作業は色調整や筆に含ませる水分量の調節など注意する部分が非常に多い作業で作業時間もかなり必要になる大変な作業になりますが仕上がりが全然違います。
納品
お客様のご自宅に納品にお伺いし、床の間に飾らせていただきました。補彩の仕上がりにお客様も大変ご満足いただけました。ご先祖様も喜んでくださっていると言っていただけて作業をした我々も大変うれしく思います。
お客様から続いての修理のご依頼の掛軸もお預かりいたしました。こうしてお客様とご縁が続いていくのが本当に嬉しく思います。次回の作品修理の記事もまたご紹介させていただきます。
高砂市で掛軸、巻物、額、屏風、衝立など表装表具の修理修復に関するご相談がございましたら是非弊社にご相談ください。