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掛軸インバウンド : スイス の方から四国八十八ヶ所の掛軸表装依頼
スイス からのお客様が来店!!
今回は四国八十八ヶ所の掛軸表装のご依頼についてご紹介させていただきます。
四国八十八ヶ所は弘法大師空海にゆかりのある四国の寺院88ヶ所。これらをひとつひとつ巡ってそれぞれの寺院で朱印を掛軸の台紙に集めて最後に掛軸に仕立てるというのが掛軸の出来上がるまでの流れになります。
今回はこの四国八十八ヶ所の表装依頼をなんと スイス のお客様から頂戴いたしました。
弊社では海外の方からのお仕事は非常に多いのですが四国八十八ヶ所の依頼は初めてだったのでお客様が来られた時はちょっと興奮しましたね(汗)
スイスの方とお仕事させていただく機会というのは何回か今までもありましたが、皆さん非常にジェントルで日本の文化にも造詣が深いので一緒に仕事をしていてとても楽しい印象を持っていました。今回のお客様もやっぱりジェントルで日本文化に詳しかったです。
お客様は3ヶ月間くらいのビザで来られたらしく四国を巡る以外にも観光されたようです。日本のアートが凄く好きな様子で浮世絵や河鍋暁斎の作品を美術館などで見て回ったとの事。河鍋暁斎は明治時代に活躍された日本画家。奇才を放つ作風は伊藤若冲に近い感覚を受けます。私も非常に好きな作家の一人でお客様と大変その話で盛り上がりました(笑)
こだわりの四国八十八ヶ所巡り
色々と日本観光を楽しまれた後に、ついに日本旅行の目的である四国八十八ヶ所巡りをスタートさせたのですが、お客様の今回の四国巡り…なんと全部歩きだったらしいですΣ(・□・;)
正直「まじかよ!?歩き遍路かよっ!!」と思いましたね (笑)
四国八十八ヶ所は大体1200キロ程度の道のりがあり、健康な大人の男性でも45日くらいかかると言われている中で、よくそれだけの道のりを外国の方が我慢強く歩きで回られたな~っと驚きました。日本人なら信仰心の強い人がされるというのも多いようですがなかなか外国人でっていうのは聞かないですね。
お話をお聞きすると、やはりとても大変で苦労されたようです。(まぁそらそうでしょうねww)
足の豆と筋肉痛にOops!!って感じになったようですww でも豆がつぶれて治ってを繰り返すうちに最後には足の裏が頑丈になったよって喜んでいらっしゃいました。
足があまりにもむくみすぎて靴が小さく感じて途中で靴を買い替えたらしいです。
今回はしかも「順打ち」で回られたそうです。順打ちというのは八十八ヶ所を全部順番に一番から回る方法でショートカットが出来ないので歩き遍路の中でも特にきつい部類に入りますが、今回のお客様はかなりこだわりが強かったようです。しかもお遍路さんを始める前と後にきちんと高野山に参られて「今から行ってきます」とお参りしてからスタートし、満願になると「無事に回ることが出来ました」とご報告にいかれたそうです。なかなか日本人でもそこまでする人いないのでお話を聞いているのがとても面白かったです。
まぁ総じてすごく四国の旅は楽しかったみたいです。自然もきれいで現地の人も親切ですし、アクティビティも楽しめたので大満足という事らしくて後はこの掛軸が無事に仕上がれば問題なしというちょっとプレッシャーも与えられながらご依頼されていきました。
お客様はこの後タヒチに飛んで、次にバリに行かれてバケーションを楽しまれてから最後にスイスに戻られるみたいで「それまでに仕上がったら良いよ~」とおっしゃっておられました。羨ましいですね。海外旅行…僕も海外好きなのでスイスもいつか行ってみたいですね。マッターホルンとか行ってみたいなと思います。
お客様は約60日間かけて歩き遍路をされたそうですが
「よくそんなに休み取れましたね~。日本人でもなかなか歩き遍路出来る人って限られているんですよ~。」と言うとお客様は
「まぁ日本人はよく働いて忙しいからね~」と仰っておられましたww
「日本人は忙しい。」という変な部分が世界共通認識のように知られているんだな~と少し笑ってしまいました。
四国八十八ヶ所 掛軸表装完了
今回は弊社の佛表装パターンNO19の麗雅の組み合わせにて表装させていただきました。お客様の中では弊社にご依頼する前にどんなパターンで表装依頼するかを色々情報収集してイメージしていたようなのですが今回の麗雅の裂地のような想定はしていなかったようでこちらに一目惚れされすぐに決定してくださいました。今回お仕立てさせていただいた作品がこちらです。
光沢の抑えた渋みのある金襴裂地を使用しているので、豪華なのですが落ちついた印象を与えます。
四国八十八ヶ所は88ヶ所も朱印を押す部分があるので必然的に通常の掛軸よりも大きめのサイズで仕上がるのですが、その結果迫力もあり荘厳な雰囲気を与える仕上がりとなりました。
お客様が選んでくださった裂地が作品中央の弘法大師頭上に施された金箔とマッチしていて、より作品の魅力を引き立てています。
最後に
今回はスイスからの掛軸表装依頼というのをご紹介させていただきました。
掛軸を仕立てる我々のような表具師は、今現代の日本においては時代の流れと共に忘れ去られようとしている存在ですが、今回のように海外の方が日本の事を好きになるきっかけとして掛軸という物が役割を果たしていると考えると、また違った角度から我々表具師も存在する意味や役割が生まれてくるのではないかと思います。
「日本の文化を再発見する」という意味で海外の方からのお仕事も大切にしていきたいと思います。
動画: 掛軸インバウンド: スイス のお客様から四国八十八ヶ所掛軸表装依頼