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ドイツ人四国八十八ヶ所巡礼者から掛軸表装依頼
はじめに
神戸の表装店である弊社には、日本国内だけでなく、海外からも多くのお客様がご来店くださいます。今回は、ドイツから来日し、四国八十八ヶ所巡礼を完遂したカイさんとの出会いを通じて、日本文化の魅力を再発見した貴重な体験をご紹介いたします。
カイさんとの出会い
カイさんは、納経軸の台紙に四国八十八ヶ所のご朱印を集め、それを掛軸に仕立てるために弊社を訪れました。日本文化に深い造詣を持つカイさんは、驚くべきことに忍術を学び、流暢な日本語を操る親日家でした。年に一度は日本を訪れるほどの熱心さで、その日本語能力は、ほぼ支障なく会話が成立するレベルでした。
掛軸表装裂地の選択
カイさんの決断力と美的センスは印象的でした。弊社の仏表装パターンの中から、「蓮華本仏」のパターン(No. 05)を即座に選択されました。この迅速な判断に、私たちは感銘を受けました。
四国遍路の魅力を再発見
会話が進むうちに、話題は自然とスペインの*カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼路に及びました。カイさんの経験談を聞くうちに、欧米人が四国遍路に魅了される理由が少し見えてきました。
四国遍路の魅力は、以下の要素が複合的に絡み合っていると考えられます:
- ・手つかずの自然が残る四国の風景
- ・静寂に包まれた環境
- ・トレッキングの要素
- ・島全体が醸し出す聖域のような雰囲気
- ・地元住民の「お遍路さん」に対する意識の高さと温かいもてなしの心
これらの要素が重なり合って、四国遍路の比類ない体験を作り出しているのでしょう。
*スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラにある聖ヤコブの墓へ向かう巡礼の道
掛軸の完成
カイさんのご依頼による四国八十八ヶ所の掛軸が完成いたしました。
選ばれた金襴の裂地は、ご朱印や弘法大師の絵像と見事に調和し、荘厳でありながらも落ち着いた美しさを放っていました。
この掛軸が、カイさんの四国での思い出を永く留めるものとなることを心から願っています。
おわりに
弊社では今後も四国八十八ヶ所の納経軸表装のご依頼を承っております。日本の伝統文化である掛軸表装を通じて、国内外を問わず多くの方々の大切な思い出を形にするお手伝いができることを光栄に思います。
カイさんのような熱心な方々が日本文化に触れ、その価値を再発見してくださることは、私たち表具師にとっても大きな励みとなります。これからも「日本の文化を再発見する」という視点を大切に、海外からのお客様にも丁寧に対応してまいります。