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掛軸の取り扱い方法 徹底解説! 飾り方、しまい方、紐の巻き方などのコツと注意点。
動画: 掛軸の取り扱い方法 徹底解説! 飾り方、しまい方、紐の巻き方などのコツと注意点。
今回は掛軸の質問やご相談の中で一番多い内容じゃないかなと思う「 掛軸の取り扱い方法 徹底解説! 飾り方、しまい方、紐の巻き方などのコツと注意点」についてご紹介させていただきます。
掛軸の飾り方に関してはそんなに難しくはないかなと思いますが、しまい方…特に掛軸の紐を巻く時のやり方がよく分からないというお悩みをよくお聞きしますのでそちらを重点的にご説明させていただきます。
何を隠そう、たぶん私は世界で一番掛軸を巻くのが早い人間だと自負しております。
以前の動画で私が掛軸を本気で巻いたら何秒で巻けるのかというのを測定してみたことがあるんですが、結果はなんと30秒を切ることができました。エビデンスはこちらの動画です。
なかなか世界探しても30秒で掛軸を巻いて仕舞える人っていうのはいないと思いますので掛軸を巻く事に関しては世界最速の男と自負しておりますので、そんな私が今回掛軸の巻き方をご説明させていただきます。
目次
掛軸の取り扱い方法 : 掛軸の飾り方
掛軸を箱から取り出して紐を解く
まずは飾り方ですが、掛軸というと新品の物を購入するとだいたいこういう箱に入ってる事がほとんどです。この外箱の事を「タトウ」または「タトウ紙」と言います。
桐箱のメーカーによってオレンジ色のタトウだったり茶色のタトウだったりと異なります。この箱をまずは取り外します。
このタトウ紙と桐箱にはきちんと入る方向があるので間違えないようにして下さい。桐箱の蓋の部分が上向きになるようにして桐箱に入れてください。桐箱を横向きにして無理に入れようとするとタトウ紙が破けてしまうので気を付けてください。無理やり入れなかったらちゃんとスムーズに入ります。
タトウ紙から出して次に桐箱を開けますが、この桐箱の蓋と下の箱の部分にも正しい向きがあるので逆にならないようにして下さい。最初のきっちりと閉まる方向で開け閉めするようにしてください。
蓋と箱の向きを逆にしてしまうときっちりと閉まらなかったり、無理に閉めようとすると桐箱が割れてしまったり、蓋と箱の接合部分に段差ができてしまったりする場合があり、非常に不細工になるのでちゃんと向きを揃えて開け閉めするようにしてください。向きが正しければ蓋と箱の接合部分は面一になります。
不安な方は正しい向きの状態で蓋と箱の接合部分に記でも入れておいたら良いと思います。我々の扱ってる掛軸の場合はハンコを押してそこを揃えるようにしている場合が多いです。
蓋を外して掛軸を桐箱から取り出します。
次に紐を解いていきます。紐は横に引っ張ると解けます。
紐の名称の説明ですが掛軸を掛ける際に使用する紐の部分を「掛緒(かけお)」と言います。
掛軸を巻いて縛る際に使用する紐の事を「巻緒(まきお)」と言います。
この巻緒を掛軸の後ろ側に垂らして、横にスライドさせます。
別にスライドしなくても良い場合がほとんどですが、飾る場所によっては飾った時に紐が作品から透けて見えてしまう場合があるので、私はなるべく横にするようにしています。
紐の下に紙が挟んでる場合がありますが、これを「巻紙(まきがみ)」と言います。
掛軸を飾る際には使わないので取り外します。巻紙は仕舞う際に使うので捨てないで桐箱にでも入れて保管しておいてください。
この巻紙は何の為に使用するのかというと、掛軸を仕舞う際に巻緒で掛軸を縛りますが、掛軸にダイレクトで紐を巻くと紐の跡が掛軸についてしまったりするので、それを防ぐ為のクッション的な役割を果たしてくれています。
飾る
では実際に掛軸を床の間に掛けてみましょう。
掛軸を取り扱う時に「矢筈(やはず)」という道具を使うと非常に便利です。矢筈というのは木でできた棹の先端に金具がついている道具です。
もしまだ持たれてない方は下に購入できるリンク貼っときますのでぜひ揃えておいてください。
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この金具の所に掛緒を引っ掛けて床の間のフックに掛緒を掛けます。
何故矢筈があると良いかと言うと、床の間は基本的に足を踏み入れない方が良いという暗黙のルールがあるからです。
床の間は大切な物を飾るスペースなのでそこに足を踏み入れるというのは無作法だという風に考えられているんですね。
なので矢筈を使うと掛緒を遠隔操作出来るので床の間に足を踏み入れなくても済むのでお勧めです。(まぁ、床の間でない場所に飾る場合でも単純に高い場所に飾る際にいちいち踏み台などを持ってきて飾ったり取り外したりするのって面倒くさいじゃないですか。矢筈を使えばそういうお悩みも一発解決なので是非お勧めです。)
矢筈を使って掛緒をしっかりと床の間のフックに掛けてゆっくりと掛軸を下していきます。
ゆっくりと最後まで手を添えて掛軸を開いてくださいね。途中で手をパっと放してしまうと掛軸が一気に広がってしまい、広がりきった時の反動が掛軸にも紐にも負荷となるので絶対にやめてください。
そもそも掛軸は周りに鑑賞者がいる事を想定してゆっくりゆっくりと広げていく物です。周りの鑑賞者は少しずつ掛軸の内容が明らかになっていくワクワク感を楽しむのが嗜みのようなものですからゆっくりと丁寧に広げていくようにしましょう。
掛軸の上部にある二本の帯を「風帯(ふうたい)」と呼びますが、掛軸を広げただけの状態ですと、風帯が下に広がっていない状態です。
正式にはこの風帯は下に広げて飾るものなので矢筈を使うなりして解いてあげます。
あとは掛軸がちゃんと水平に飾られているかを確認して飾り方は終了です。そんなに難しくはないですよね。
飾り方で言うと丈の短い掛軸という物がありまして、床の間に飾る場合、直接その掛軸を飾ると掛軸の下の空間が凄く不自然にスカスカに空いてしまって不細工だという風に考えられる場合が多いので、そういう場合は掛軸を飾る位置を自由に変えられる「自在掛け(じざいがけ)」というツールがあるのでそちらをご使用ください。
こちらも以前動画でご紹介させていただいておりますので宜しかったらそちらもご覧ください。
購入できるリンクはこちらです。
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ただ、日本の場合は床の間という決まった場所に掛軸を飾るので丈の短い掛軸を飾る際にこういった位置の問題が発生いたしますが、海外の方はほとんど床の間ではなくご自身の部屋の壁面に飾るのであまり自在掛けのニーズを聞いた事はないですね。最初から飾る掛軸が最適な場所になるようにフックなりピンなりを設置するのであまり必要ないのかもしれません。一度海外の方にご説明した事がありますが自在掛けの用途の意味がよくわからず「要らない」と言われた経験があります。これも海外の方と取引をするようになって気が付いた事です。
これで掛軸の飾り方は終了です。
掛軸の取り扱い方法 : 掛軸のしまい方
畳の上では巻かない方が良い?
では今から掛軸のしまい方に移っていきます。
掛軸のしまい方ですが、よく掛軸を畳の上などに移動して巻こうとする方が多いですが、これはあまりお勧めしないやり方だと私は思っています。
色々な理由があるんですが、例えば畳が汚れていたら掛軸に汚れが付着してしまいますし、畳の上で掛軸を広げて巻こうとすると手のひらで押すような形で巻いていこうとする方が非常に多いんです。
そうすると大体綺麗に巻けなくて掛軸の端が横に広がっていっちゃうような形になってしまうんです。
で、巻き終わる最後らへんになってどうしようもなくなってしまって、仕方がなくそのまま形が綺麗に整わないままで無理やり巻いてしまう…みたいになってしまい掛軸を傷める原因になる場合が多いのでお勧めしません。そして何より不格好で不細工で格好悪いのでなるべく壁に飾った状態で掛軸を巻くようにしましょう。
壁に飾った状態から掛軸を巻いていく
それでは今から壁に飾った状態で掛軸を仕舞う方法をご紹介させていただきます。
仕舞う時も矢筈を使うのですが、我々のようなプロは慣れているので矢筈を持ちながら掛軸を巻く事が出来ますが、一般の方は横に立てかけた状態からスタートされた方がいいと思います。
まずは「軸先」という取っ手の部分を両手で持って掛軸を巻き上げていきます。
巻き上げる際に最初にキュッときつく掛軸を巻いてしまうと掛軸が傷んでしまいますし綺麗に巻けない原因にもなってしまうので最初はゆるく遊びを持たして巻いてあげることがコツです。
よくある失敗が、掛軸を巻き上げているとこういう風に先が横に出てしまって綺麗に巻けない状態になってしまう事があります。
これを防ぐコツは巻いていく際に左右の親指で両サイドを軽く抑えながら巻く事がコツです。両端がはみ出ないように少しずつ矯正しながら巻いていきます。
半分ぐらいまで巻き上げたら掛軸を左手で(右利きの場合)掛軸を持ちます。この持つ時の手の向きも順手で持つ場合と逆手で持つ場合とがあります。
順手で持った方があとあと仕舞う工程が早くなるのですが、掛軸を鷲づかみするような感じで少し不作法に映ります。
何か大切なものを頂く時は逆手でもらうイメージじゃないですか。王様が家臣に褒美を授ける時に家臣が褒美を鷲づかみにするシーンって想像できないですよね。
掛軸も大切なものなのでなるべく鷲掴みじゃなく下から逆手で持ってあげる方が礼儀としては良いように思います。
左手で掛軸を持ったら右手で矢筈を持って床の間のフックから掛軸を下してあげます。
この時に左手の肘と手首の角度を気を付けていないと掛軸がパキッと折れてしまうので、なるべく掛軸に折れがいかないように手首と肘の角度を調整して掛軸が真っすぐになるように持ってあげる事が大切です。
この後なんですが、逆手だと次の作業に移る際に左手を順手に戻さないといけないのでこの手間の分だけ少し時間がかかります。
我々はお客様の前でとかは逆手で巻くようにしておりますが、展示会などで多くの掛軸を制限時間内に巻かなければいけないなどの状況の場合は順手で巻く場合があります。礼儀を取るか効率性を取るかをTPOによって使い分けております。
この後は軸先を持って最後まで巻き上げていきます。この時に注意していただきたいのはよくある間違いを起こす人が多いのですが、風帯をそのまま巻き込んでしまう方が非常に多いです。これは絶対止めてください。
この巻き込んだ状態で1日保管すると次に広げた時にはこの風帯がスルメの足みたいになってしまってめちゃくちゃ直すのが大変なんです。下手をしたら直らない場合もあるので絶対にやめてください。
巻く時は風帯を下に垂らした状態で最後まで巻いてください。
ここまで巻いたら風帯に折り目があるのでそれに沿って風帯を真横に折りたたんで巻いて下さい。
この風帯の裏側の裂地は基本的には掛軸の上部「天(てん)」と同じ裂地を使ってるので風帯を折りたたんだ時に綺麗に色が揃うような形で収納してください。
次に最初にご説明した「巻紙」の片端を掛軸の中に挟み込むような形で挿入して掛軸を包みます。この巻紙の上で紐(巻緒)を巻くと掛軸に紐の跡形がつきません。
ここまで行ったら紐(巻緒)を掛軸の前方向に移動します。
紐を前方向に移動させたら次にいよいよ巻いていきます。
素人の方が良くやるやり方としては紐自体を動かして巻く人が多いんですけど、これは非常にやりづらいのと間違いの原因になるので我々プロはそういう風な巻き方はしません。
まず紐を手前に引いていただいて掛軸自体を後ろに回します。イメージとしては掛軸を回転させて紐を巻き上げていく感じです。
そして掛軸を左手で後ろに回しながら、巻緒を持っている右手の親指で巻緒と掛軸の接点を抑えて巻緒の巻く位置を調整しながら巻緒が横並びになるように巻いていきます。
こういう風に右手の親指で抑えながら紐を巻いていくと紐が重なって巻かれたり、紐同士に隙間が出来ずに綺麗に巻く事が出来ます。
巻く時はもちろんぎゅ~~っと力一杯きつく巻いてしまっては駄目ですよ。掛軸が傷んでしまうので適度な強さである程度の遊びがあるくらいのテンションで巻いてあげるようにして下さい。
このようにして3周ほど巻緒で掛軸を巻くと、巻緒が少しだけ残っていると思います。
この余った巻緒を右手の指でつまんで輪っかを作ってあげます。
この輪っかを掛軸の「掛緒(かけお)」と呼ばれる横一文字の紐の下へくぐらせます。
まずは巻緒で巻かれた掛緒の右側の下へ巻緒の輪っかをくぐらせます。
次にこの掛緒から出た巻緒を左側の掛緒の下にくぐらせます。
ひらがなの「ヘ」の字のような形になれば完成です。
このようにして巻いていると、次に掛軸を開ける時に巻緒の尻尾を引っ張ってあげると綺麗に解けます。
今回私は右利きなので巻緒を右方向に巻いていきましたが、別に左方向に巻いても構いません。弊社の専務は左利きなので私とは逆の方向に巻きますが別に間違いではありません。どちらでも良いです。
以上が掛軸を仕舞う際の紐の巻き方です。
この一連の動きが早く、手際良く出来たら格好良いですね。素人とプロを見分ける一つの基準がこの手際の良さだったりします。掛軸のプロがまごまごしていたら格好悪いじゃないですか…。
巻緒の巻き方クローズアップ紹介
紐の巻き方をもう一回クローズアップでご紹介します。
まずは巻緒を掛軸の手前に引きます。
右手の親指で巻緒と掛軸を抑えながら巻緒を右方向に巻いていきます。この抑えるのが綺麗に巻くコツで、こうする事で紐が重なったりねじれたり、紐同士に隙間が出来るのを防ぐ事が出来ます。
この親指で押さえていない状態で巻いていこうとすると紐同士に隙間ができてしまう事が多いです。
一番最後にこの隙間を整える事も出来るのですが、格好悪いですし不作法ですし不具合が発生する原因にもなるので右手の親指で抑えながら巻いていく事をお勧めいたします。
3回程巻緒で掛軸を巻いた後、残った巻緒で輪っかを作ります。
そして横一文字になっている掛緒の下へこの輪っかをくぐらせます。
まずは右の掛緒の下から巻緒の輪っかをくぐらせます。慣れてくると、今はわかりやすくするために巻緒で輪っかを作っていますが我々は特に輪っかなどを作らずに右手の親指で少し強引に掛緒の下に巻緒をねじ込むように通します。
次に反対側の掛緒の下にくぐらせます。
ひらがなの「へ」の字のようになります。
掛緒の右側も左側も巻緒を下にくぐらせるというのを覚えておけば間違えにくいでしょう。
このようにして巻いていると、次に掛軸を開ける時に巻緒の尻尾を引っ張ってあげると綺麗に解けます。
桐箱にしまう
次に巻いた掛軸を桐箱の中に収めます。この掛軸を桐箱に入れる方向というのもあるので注意してください。(結構知らない人が多いです。)
桐箱には「枕」という軸先を置く場所がありますが、この枕には広い方と狭い方があります。
この枕の広い方に掛軸を仰向きに寝かせるような形で収納します。枕なので仰向けですね。たまに枕にうつ伏せで寝る人もいますがそれは今回無視してください。仰向けです、仰向け!!
方向を変えて収納してしまうと桐箱がきちんと閉まらなかったり蓋に掛軸が当たって汚れたり傷んだりする原因となるので必ず枕を確認して正しい方向で収納してください。
次に桐箱の蓋を閉めます。これも冒頭でご説明いたしましたが、掛軸の箱の部分と蓋の部分にも向きがあるので正しく閉まる方向で閉めてください。
正しく閉まると蓋と箱の接合部分がほぼ面一になります。
閉める際に蓋と箱の接合部分で紐を挟み込まないように注意してください。紐が切れる原因となります。
最後に桐箱をタトウ紙に入れます。これもタトウ紙と桐箱の向きがあるので間違わないようにして下さい。
普通桐箱は蓋を上に開けますよね?横には開けないですよね?そう、蓋が上向きが正しい向きです。その向きのままタトウ紙に収納してください。
横向きに入れてしまうとタトウ紙が破れてしまう原因になりますので絶対にやめてください。
普通は入りにくいので気が付きそうなものなのですが過去に何回か間違われている方と出会ったことがありますのでくれぐれも気を付けてください。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は結構細かく詳しく掛軸の飾り方、しまい方についてご説明させていただきました。
これを参考に掛軸の扱い方をマスターしていっていただければ嬉しく思います。
また、動画の方もUPしておりますのでそちらもあわせてご覧になっていただければより理解が深まるのではないかなと思います。
もしもう少し分からない所があるので教えて欲しいなどの要望がございましたら動画のコメント欄でも結構ですし、お問い合わせフォームからリクエストしてくださっても結構です。
出来る限りご質問にご回答できるよう努めてまいりますのでどうぞ宜しくお願いいたします。
最後までお読みくださりありがとうございました。