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もののあはれ
もののあはれ
「もののあはれ」は平安時代の王朝文学を知る上で重要な文学的・美的理念の一つであり、後に形成される多くの日本人の美意識の根源でもあった。よく「もののあはれ」(直訳すると「ものの哀愁」、または「ものへの感情移入」あるいは「移ろいやすいものへの感受性」とも翻訳される)は対象に対して我々が持つ単なる感情の一種のように考えられがちであるが、「もののあはれ」とは対象に本来備わっている特徴の中に含まれる神秘的な何かに気づく事によって、我々の心に自動的に生まれ来る様々な感情の事である。(能動的に感じるものではなく受動的に感じるものである。) 「あはれ」とは平安時代の感嘆(「あぁ」や「おぉ」に類似するもの)・・・大雑把に訳すと「哀愁」「つらさ」「感慨」「感受性」あるいは「認識」を図る表現であった。それゆえもののあはれはよく物や生命や愛に対する感嘆として翻訳される。この対象物の神秘的な何かに気づき、自動的に生じる感情を知る事が出来る心こそが美しいと日本人は考えたのである。物に神秘的な何かがあらかじめ遍在しているという考え方は、万物に神が宿ると考えた日本人ならではの発想である。