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無常
無常
「無常」はこの現象世界のすべてのものは消滅して、とどまることなく常に変移しているということを指す。日本人が桜を愛してやまないのは、そこに常なき様、すなわち無常を感じるからとされる。「永遠なるもの」を追求し、そこに美を感じ取る西洋人の姿勢に対し、日本人の多くは移ろいゆくものにこそ美を感じる傾向を根強く持っているとされる。「無常」「無常観」は、中世以来長い間培ってきた日本人の美意識の特徴の一つと言ってよかろう。
この無常は仏教の根本的な考え方であるとされている。なぜ日本人にこの仏教の無常観がこれほど受け入れられたのか。その理由は四季の気候を持つ日本の風土から来ているに違いない。季節の移り変わりが仏教の無常観と深く結びついたのだ。そして自然と対立せず、自然に溶け込むという考え方、朽ちては再生するプロセスへの馴染み、死を敵対するものとしては捉えない考え、朽ち果てゆくものへの共感などが日本の美意識の基調をなした。つまりありのままを受け入れて自然の流れに身を任すことが美しいと考えられるようになったのだ。多彩な日本人の美意識はこのような無常観に由来するものが多く、無常観を抜きにして日本人の美意識を理解する事は不可能と言える。