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幽玄
幽玄
幽玄(ゆうげん)とは、文芸・絵画・芸能・建築等、諸々の芸術領域における日本文化の基層となる理念の一つ。本来は仏教や老荘思想など、中国思想の分野で用いられる漢語であったが、平安時代後期から鎌倉時代前期の代表的歌人であり、千載和歌集を撰集した藤原俊成により、和歌を批評する用語として多く用いられて以来、歌論の中心となる用語となった。その後、能・禅・連歌・茶道・俳諧など、中世・近世以来の日本の芸術文化に影響を与え続け、今日では一般的用語としても用いられるに至っている。
幽玄は「神秘的な深み」という風に通常翻訳される。幽玄とは言葉の意味には表れず、また、目には定かに見えなくても、その奥に人間が感じることが可能な美を意味する。「今、そこにある姿」の美しさだけを楽しむのではなく、そこに「隠された姿」の美しさを想像することで、感動に深みを与える美意識である。たとえば、花を見て「美しい」と思う。それは「今、そこにある美しい姿」である。美しい花にはいままで風や雨や雪などに耐えたという過去があり、そして、どんなに美しく咲こうともいつかは枯れていくという未来がある。美しい花はそれだけで感動を与えるが、そうした現在の姿の裏側にある過去と未来に見えるものに思いを馳せるとき、その美しさは「今、そこにある姿」を超えた感動を手にすることができる。
幽玄を『余情』や『余韻』、『暗示』などと考えれば、もう少しわかりやすくなるだろう。幽玄を感じるには想像力が必要不可欠であるので、芸術家はいかにして鑑賞者に想像力を働かさせるかを磨いてきた。日本画の世界では、余白、簡略化、不均整、落ち着いた色彩、構図、金彩などがその例としてあげられる。
参考図書
禅と日本文化: 鈴木大拙
「幽玄」や「侘び寂び」、「禅と悟り」についての参考図書として明治時代から昭和時代に活躍した禅僧である鈴木大拙の著書を推薦させていただきたく思います。鈴木大拙は日本人でも理解をするのに窮する上記の美意識や価値観について英語で海外に初めて紹介された禅僧です。
明治時代になり世界から日本というのは注目される反面、誤解も非常に多かった中で日本の事について海外にしっかりと英語で情報発信してベストセラーとなった著書の一つです。(他は岡倉天心の「茶の本」、新渡戸稲造の「武士道」、内村鑑三の「代表的日本人」)
文語表現もあり、美意識の話なので多少読み進めるのに時間は要しますが、上記の日本人の美意識をわかりやすく説明している非常に良書と言えます。著書では「幽玄」について直接的に述べられている箇所は無かったと思いますが、「侘び寂び」や「禅と悟り」について理解を深める事が「幽玄」の理解にもつながると思います。
西洋的な価値観との対比として説明される日本の美意識の理解に是非以下の著書をご参考ください。
茶の本: 岡倉天心
上述の岡倉天心の「茶の本」を含む、当時のベストセラーをなんと一つにまとめているお買い得な本が存在しています。もちろん「茶の本」だけを読んでいただいても結構ですし、残りの2つの名著もあわせて読んでいただければより味わい深い1冊になろうかと思います。
「茶の本」は茶道の教科書や手引書ではなく、日本人の美意識とは切っても切れない関係である茶道を通して日本人の本質的な美意識を世界に紹介する為に岡倉天心が書いた本です。岡倉天心は自身では絵筆を持たないにも関わらず、横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山など近代日本画の中心的巨匠達に絵を指導し、世界に通用する日本画の革新の為に尽力した日本絵画史上最も重要な人物の一人です。日本の美意識への圧倒的な理解とそれを世界的な価値観と比較できる教養を持ちえたからこそ世界に日本の美意識を紹介する事が出来たのでしょう。
そんな岡倉天心の代表的な著書である「茶の本」を是非ご一読ください。
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